今週は、下北沢の本屋さん「B&B」のHidden Story。
下北沢駅の南口を出て、商店街を進み、少し行ったところを左に入ります。
ビルの2階。
その本屋さんには、毎晩、多くの人が集います。
なぜなら、そこでは、連日、イベントが開催されているのです。
本屋さんの名前は「B&B」。
「Book & Beer」でB&Bです。
なぜ本屋さんでビールを出すのか?なぜイベントを開くのか?
B&Bの内沼晋太郎さんに伺いました。
すごく良い品揃えをしたからといって、どんどん売れるかいうと、そうでもないんですよね。
なので、本を売るっていう事と合わせて、ちゃんと成り立たせるために、相乗効果のある他のものを合わせて複合的に売っていく、ということを考えまして。それで、このお店は、まずビールをはじめとするドリンクが飲めるという事と、家具を販売しているという事と、あと毎日トークイベントを開催している、というのが、大きく分けて3つの特徴がありまして、それぞれ新刊書店として本を売るということと相乗効果のあるビジネスとして考えて、全体で成り立たせて、そのことによって本のセレクトにパワーを注力するというか、そういうような事で面白いお店を保ちつつ、ほかにもいろんな情報を発信していこうというお店ですね。
B&Bは、ブックコーディネーターの内沼晋太郎さんと、博報堂ケトルの嶋浩一郎さんが手がけるお店です。
僕も嶋も電子書籍の仕事を一緒にしたことがあって、電子書籍も好きだし、いわゆる大型書店も好きだし、ネット書店も便利でよく使うし、だけどやっぱり街の本屋さんも好きだよねっていうのがあって。
そのなかで、僕らの共通の認識というのは、どっちもあるというか、電子書籍も大型書店も、街の小さい本屋さんも全部あって、その中から選べるというのが豊かに決まっているじゃないか、と考えた時に、一番なくなりそうなものというか、そのなかで、ビジネス的に大変だったりとか、でも、まだ工夫の余地がありそうなものとして、僕らが考えたのが、駅前の20坪から30坪くらいの新刊書店。
そういうものが、今どんどんなくなりつつあって、だけど、僕らそういうのが好きなので、なくなるのは嫌だなあというのがあって。
小さな本屋さんを盛り上げるアイディア。
そのひとつが、毎晩、開催されるトークイベントです。
本って年間に何万点も出ていて、ということは1日に何百点も出ているんですよね。
1日に何百冊も出ていて、それぞれに著者がいるはずなんですけど、じゃあその300人の人たちが発売記念のイベントを何かやっているかというと、やっていないと思うんですよね。
全然、発売記念のイベントってまだやりようあるはずだとな、というのを思っていて。
で、ちゃんと1個1個企画を立てて、イベントとして編集して、お客さんを30人から50人くらい集める、というのを毎日やる、というのは、いわゆるトークライヴハウスというようなところでは当たり前にやっていることなので、本屋でできないことはないだろうと。
ゆったりと棚が配置された店内。
どんな本が並んでいるかというと……
普通の本屋さんというのは、売り上げの効率を上げるために、売れるジャンルを増やして売れないジャンルを減らす、ということをやるわけですね。 そうすると、本来お店として打ち出したい品揃えのバランスから、売り上げから算出するバランスにかわっていくんですよね。 それで今、全国の本屋さんからは、外国文学の棚が削られたりとか、人文社会科学、自然科学みたいな本が削られたり、ということが起こっていて。
でも僕らは、世界の面白いものと日常の生活のなかで出会える場所がある、というのが駅前の本屋さんをやる意味だと思うので。
ビールが飲めて、毎日トークイベントがある本屋さん。
そこに込めたのは、駅前の本屋さんがなくならないで欲しい、という想いでした。
全く同じ形でないにせよ、何かしらここのやり方からヒントを得ていただいて、日本のいろんなところに面白い新刊書店ができるといいなと思っているわけです。
あとは、ここで毎日イベントをやっていることが、いろんなところからお客さんを呼んできているなというのもあって、東京じゅうから、場合によってはもっと遠くからお越しいただいて見ていただけるお店になっているので。
街に対する持てる力というか、可能性も感じています。
街の人にも楽しんでいただきつつ、遠くから人を呼べる力もあるので、街にこういうお店があることで、街の知的好奇心の渦を作れる、というのが新刊書店をやる意味だなと思っているので。
駅前で、未知の世界との出会える場所を作りたい。
知的好奇心のうずを生み出したい。
できれば、そのグッド・ヴァイブレーションが、いろんな街で広がってほしい。
「B&B」の営業は続きます。
Book & Beerで、B&Bですが、もちろん、ビールは飲まず、普通の本屋さんのようにご利用いただけます。
また、毎晩イベントが開催されていますが、そのイベントの間も書店として営業されています。
お昼12時から夜12時までの営業。
駅からも近くですので、ぜひ一度お出かけください。