2014/4/11 UNUS PRODUCT SERVICE の Hidden Story

今週は、市販の3色ボールペンなどをスタイラスに変身させる、SMART TIP という商品を開発した、UNUS PRODUCT SERVICE の Hidden Story。
UNUS PRODUCT SERVICE

スマートフォンやタブレット端末などのパネルにタッチして操作する「スタイラス」。
3色ボールペンなどの先端部分を取り替えることでこのスタイラスと同じ機能を持たせることができる。
それが、UNUS PRODUCT SERVICE の手がける『SMART TIP』です。

この UNUS PRODUCT SERVICEとは、埼玉県川口市にある「福島製作所」がつくったブランドです。

もともとは株式会社福島製作所という小さい町工場なので、医療関係だったりとか、建築金具といって……例えば、地下鉄で「黄色い線の内側に入ってください」っていう、あの下に鉄板が入ってるんですよ。その鉄板を年に1回変えるんですよ。それを作っていたりしてたんですけど……僕が入社したのが5年前なんですけど、ちょうどリーマンショックのときで売り上げがすごく落ちたんですよ。

福島製作所は、今回お話を伺った福島直樹さんのおじいさんが創業した会社です。

今から5年前。受注した仕事のみでは、売り上げが激減。
新しい商品が必要とされていました。

「スマートフォン向けのグッズを何か作ろう」ということで始めたんですけど、まず頭をよぎったのが、アルミの削りだしのケースを作ろうと思って、そこから始めたんですよ。作るのは、下の設備がありますから、すぐに作ることができるんですね。できた時に、「じゃあ、これをどこに売るんですか？」となった時に、値段が高いと売れないじゃないですか。 2万円のものを ――例えば、iPhoneケースを―― 作った時に結局それを売る場所がないし、その時点で企画がポシャってしまって。

福島さんが作ったスマートフォン・ケースは、出来映えは素晴らしいものでしたが、値段が高過ぎました。

ケースじゃなくて違うもので何か新しい商材だったりとか、日本でまだ流行ってない商材が何かないのかな、と思ったときにタッチペンを見つけたんですよね。

「ボールペンを手で握る部分が金属。その先端に穴のあいたゴム。」
という作りの SMART TIP。

製造することは決めたものの、川口市にある町工場、福島製作所の福島直樹さんの前に壁が立ちはだかりました。

もともとタッチペン自体の表面がゴムで出来ているものなので、ゴム買ってきて付けるじゃないですか、反応しないんですね。

そこから、いろんな試験を重ねた時に、金属だったら反応したんで、「ああ、これ、電気で反応しているんだ」と思って、そこから金属以外で電気が通るゴムがあるということを知った時に、そのゴム自体がですね、その時そんなに流通してなかったんですよね。

作れる会社も本当に稀で、それから40社か……もっと探したかな？
しかも断られちゃって。

ペンの先となるゴムの部分。
これを、きれいな円につくるのが難しかったのです。
さらに、電気を通す成分を含むゴムを作るのにも時間がかかりました。

そしていよいよ出来上がった SMART TIP。
もうひとつの壁は、ボールペンに付けて使うものなので、そのボールペンをどうするか、ということ。

「ボールペンから全てウチでアッセンブルしたものを出そう」と思ったら、また、その時に費用がかかってしまうので、最初はボールペンメーカーさんとかにもお話をして、「ボールペンを作りたいんですけど特注で、いくらですか？」と話をしても、まず聞いてくれないんですね。
しかも、すごいロット数なんで、それは資金的にも難しい状況ですから。

であれば、単品で売って、自分たちで付け替えてもらえばと。
だったらコストはかからないし。

で、ボールペン自体は持ってるじゃないですか。
「持ってるものに、対応するものを作れば良いんじゃない？」と話をして。

発想の転換が、突破口となりました。
通販サイトで売り出したところ、発売後、数時間で売り切れ。大人気となりました。
今や、最初は断られたボールペンメーカーとのコラボ商品も発売中です（オンエア時）。

機械の置かれた工場の1階。福島直樹さんの作業は早朝から始まります。

ディレクター：ここで作業するのはどうですか？

福島直樹：楽しいっちゃ楽しいですよ。
無骨なものですけど、こういう所から緻密なものが出来上がるというのが。
それが最終的に店頭に並ぶというのは面白いですね。

でも、やってて、今もそうですけど、手が真っ黒になるんで。
まあ、でも動かして、手を真っ黒にして作業したものが品物になって、みなさんの手元に届いて、使っていただけるというのはすごく嬉しいです。

SMART TIP。
それは、知られざる町工場の優れた技術と柔らかなアイディアが生んだヒットでした。