2014/4/18 Look At The Sky の誕生秘話

今週は、坂本九さんの『上を向いて歩こう』をオリー・マーズが新たな英語の歌詞でカバーした1曲『Look At The Sky』の誕生秘話。

坂本九さんが歌う『上を向いて歩こう』。
アメリカ、キャピトルレコードから『SUKIYAKI』というタイトルで発売され、1963年の6月、全米シングルチャートのナンバーワンに輝きました。 アジアのシンガーでは、今も、これが唯一の快挙。
作曲は、中村八大さん。作詞は、永六輔さんが担当されています。

この曲は誕生日がはっきりしている曲で、生年月日は1961年7月21日。
場所は、当時有楽町にあった産経ホール、そこで第3回中村八大リサイタルというコンサートがありまして、そこで書き下ろしで初めてお披露目された曲なんですね。

その日に坂本九さんに譜面がいって、その日に初めて坂本九さんが歌っていると。
ですから、歌が生まれて50年というのが2011年だったんです。

お話を伺ったのは、中村八大さんのご子息、中村力丸さんです。

坂本九さんが50年前に歌ったとき、当然、日本語で世界にヒットしていった。
その時代にすでに、勝手な各国語訳というのはたくさんあったんですね。

フジヤマ、ゲイシャ、ベイビーみたいな、これはいろんな言語であったみたいなんですね。それはそれとして、で、1981年に、Taste Of HoneyというR&Bのグループがリバイバルでヒットさせました。

Taste Of Honeyのメンバーの方が英語で歌詞をつけられたんですが、これが必ずしもオリジナルの日本語の訳ではないんですね。割と悲しいタッチのラブソングというものになっていたので、これもやはり「上を向いて歩こう」ではない。

中村力丸さんは、こう考えていました。

「上を向いて歩こう」の 英語の歌詞で、決定版といえるべきものが欲しい。
戦争に敗れ、そして、安保闘争での挫折。
そうした時代背景のなかで生まれた曲を、誰に訳してもらえばいいのか?

基本的に悲しい曲である。
かつ、英語に訳しにくい曲である。

主人公が誰だか分からない。
なんで悲しいんだろうとかいっさい説明がない。

となると、そういう心象風景を英語で表現していただく、その時に、わたしがまず思い浮かんだのは、オノヨーコさん。

オノヨーコさんは、この依頼を快諾。
『Look At The Sky』というタイトルで、新たな英語の歌詞が届きました。

それを歌ったのが、イギリスのミュージシャン、オリー・マーズです。
2014年2月、来日公演のなかで、初めて披露されました。
オリー・マーズは、「Look At The Sky」について、こう語っています。

今までの英語ヴァージョンは、元の歌詞と違うと思うんですよね。

自分が歌ったのは、オノヨーコさんが元の歌詞に忠実に訳してくれたもので、これまでの英語の詞はラブソングになっていますが、この曲はもっと「希望」について歌ったものです。

一致団結すれば、明日は、きっと良い1日になる。 そんな歌なんです。

世界中で大変なことがあります。
日本も、ここ数年、辛い経験をされました。

でも、困難を乗り越えて、明日への希望へつなげる。
そんなメッセージは、とても美しいと思っています。

最後に、もう一度、中村力丸さんの言葉を。

『上を向いて歩こう』は、悲しい心象だけが、ポンと出ている曲なんだけれど、でもその曲を聴いた後に、どこかでポジティブな後味というか、イメージが残る曲だと思っています。

それは、「なんでなんだろう」と考えた時に、そういうような悲しみとか、そういう想いって、どんな人にだって必ず来る。 これは誰にでもある。 そこから次に行く。

そのためには、その悲しみをまず認識して、個人の個として立つ。 「そこから1歩、歩いて行くんだよ」っていう、この曲のメッセージは、個として確立する。 そういう事だと理解しています。

オノヨーコさんは、その想いを こう訳しました。

“Look at the sky as you walk through life. So the tears won’t overflow your heart.”

誰にでも、悲しみはある。でも、上を向いて歩こう。