2014/5/23 「カナエール」のHidden Story

今週は、児童養護施設の子どもたちの進学を支援するプログラム「カナエール」のHidden Story。

家族と離れて児童養護施設で暮らす子どもたちは
現在、全国におよそ3万人。背景には、さまざまな事情が存在します。

多くが親がいるにもかかわらず一緒に暮らせない。事情がある。

それは具体的には虐待であったり、虐待で保護されて家族と離れて暮らしていたり、あるいは親が入院していたり、刑務所に入っていたり、精神疾患を抱えていて子どもを育てられなかったり、経済的に非常に厳しかったり、ひとり親で親が働いているあいだに子どもの面倒が見られなかったり。

で、そんな中で、家庭では育てられないという複雑な状況のもとで「社会的に支援が必要だ」と判断された子どもが児童相談所を経由して児童養護施設にやってきている、という状況です。

お話をうかがったのは、NPO法人「ブリッジ・フォー・スマイル」の代表、林恵子(けいこ)さんです。

林さんは、児童養護施設の子どもたちに関わるうちに、お金の支援だけでは 本当に支援をしたことにならないと 感じるようになりました。

仕事につく手助けをするなかで、ある少女が、おそらく、長くは続けられない仕事を夢として挙げたのです。

「いいの。私30までしか生きないから。そこまで人生を楽しく過ごせればそれでいいの」
って言われたことがあって、何て答えていいのか分からなくてすごく衝撃的だったんですね。

進学というのがひとつ大きな障害になっていて、美容師でも保育士でも何か資格をとって仕事につこうとした時に、その専門学校だったり、大学だったりに通うお金がないために、その夢をあきらめなければならないという現実があって。

すると子どもたちは、頑張ったって、その仕事をできるわけないでしょと感じてしまうわけですよね。
やっぱり生きて行く上では、いろんなことが必要になってくる。

その中でも一番大きいのは「未来に希望を持てるか」という事だと思ったんですよね。

子どもたちが「夢」を発表する「スピーチ・コンテスト」を開催し、そこに参加した子どもたちに奨学金を給付する。
という仕組みはどうか?
「カナエール」は、そんな想いを込めて、最初の一歩を踏み出しました。

最終的には子どもの人生なので、その子が自分の意志を持って「人生を決めて行かなければいけない」というところに、私たちがどう関わっていくかも難しいところなんですが、でも実際、お金だったりって子どもたちには、すごくありがたいもので、結局、進学のための学費に加えて生活費を自分でまかなわなければならないと。

で、かつ、それを自分で稼がなければならないので、時間のやりくり、お金のやりくり、全部自分がやらなくちゃいけないんですよね。

そのプレッシャーというか、求められるものの大きさはすごく大きいと思っていて、それを自分で頑張りなさい、というのは子どもたちにはハードルがあまりにも高すぎるかなと思ってます。

子どもたちが 夢を発表する「スピーチ・コンテスト」を開き、その夢をかなえるための奨学金を給付する、というプログラムが「カナエール」です。 どのくらいの金額が支援されるのかというと……

一時金30万円と、卒業まで月3万円になります。
月3万円は決して大きな金額ではないんですけど、子どもたちは、だいたいアルバイトで月10万円稼いでいます。
それが3万円分働かなくて良いとなると生活に随分余裕ができますので、私たちはそれを「時間のプレゼント」と考えています。

NPO法人「ブリッジ・フォー・スマイル」の代表、林恵子さんは、このプログラムを続ける理由をこう話します。

こういう支援を必要としているのは、児童養護の子どもたちだけじゃないだろう、とよく言われることもあるんですが、児童養護というのは、いったん「社会で育てる」という風に位置づけられた子どもたちですよね。

そういう子どもたちを自立できるところまでを支えないで、中途半端なところで社会に出していく、というのはどうなんだろうなと思っていて。

最後に、「カナエール」を行う中で起きた変化について教えていただきました。

まず施設職員が進学に対してポジティブに考えるようになる。

職員自身が社会の支えがあるなら子どもにチャンスがあってもいいのかもと考えを変えてくださったり。子どもたちも、先輩が進学しているんだったら、自分たちもできるんじゃないかと考えたり。また、支える大人のほうも変化が起きるんですよね。困っている人を支援するということに、何か抵抗がある人もいるわけですよね。

それがこの経験を通して、どういう相手が感情を持っていて、どういう風に言葉をかけると相手が差し伸べた手を握りやすいのかということを学んでいくわけですよね。それが自分の職場とか、家庭とかに持ち帰れるんですよね。

そういうところから社会が変わっていくといいなと思っています。

助ける手を差し出しやすく、そして、伸ばされたその手を握りやすい社会に。

今年もまもなく開催される「カナエール」のスピーチ・コンテスト。
子どもと大人が一緒になって、その準備を進めています。


子どもたちによる「スピーチコンテスト」。
今年は、全国の3カ所で開催されます。

東京は、6月29日(日)。横浜と福岡が7月6日(日)。
チケットが5,000円なんですが、このチケットの料金が奨学金となります。

カナエール
カナエール 夢スピーチ・コンテスト 2014