今週は、今年20周年を迎えたコンピレーション・シリーズ『Free Soul』のHidden Story。
取材にお答えいただいたのは、Free Soul シリーズの生みの親、橋本徹さんです。
橋本徹のカフェ・アプレミディ/フリー・ソウル/サバービア
90年代前半に『Free Soul』というタイトルのイギリスのコンピレーションがあったんですね。
その中に、テリー・キャリアの「Ordinary Joe」という曲が入っていて、それまでの日本のソウルミュージックのジャーナリズムで推薦されていたものとは全く違っていて、とてもメロディアスでビブラートのかかった歌声が胸に沁みてくるみたいな、静かな衝撃を受けまして。こういうソウルミュージックがあるのであれば、こういうのをたくさん聴いて、みんなと共感して楽しめるDJパーティやコンピレーションがあればいいなと思ったというのが最初でしたね。
1994年の3月、渋谷の公園通りにあったDJバー・インクスティックで『Free Soul アンダーグラウンド』というイベントを開催。
ほんとに熱いイベントになって、ピークタイムにキラーチューンが流れると、フロアが熱狂的な感じになって「あ、これはいける」と感じましたね。
そして、その1カ月後、『Free Soul』最初のコンピレーションがリリースされました。
僕は大学生のころからソウルミュージックを好きになって、いろんな文献とかでいい音楽と出会うきっかけを作れればいいなと思って読んでたんですけど、そこですすめられているものと、自分の趣味センスが違うかなと思うことが何度かあって、でも、世界を見渡せば、ロンドンではレアグルーブやアシッドジャズのムーブメントがあったり、グルーヴとかメロウネスをキーワードに「ソウルミュージック、聴いている人たちがたくさんいる」という実感があったので、絶対、東京でもそれを形にすれば多くの人に共感してもらえるだろうという意識はありました。
リリースされた4タイトルのCDは大きな反響を呼びました。
橋本さんは、その背景にあったものを こう分析します。
それにも温床みたいなものがあって、 ちょうど1994年、Free Soul をリリースした年は、オリジナルラヴの『風の歌を聴け』がリリースされたり、小沢健二の『LIFE』がリリースされたり、シュガーベイブの『SONGS』がリイシューされた年でもあるんですね。
オリジナルラヴみたいな、70年代のソウルミュージックの影響を受けたグループが日本でもヒットしたり、そういう背景があってこその Free Soul の盛り上がりだと思います。
そして、もうひとつ、橋本さんが強調したのがジャケットのデザイン。
それまでのソウルミュージックのCDというのは、汗を飛ばしながら、熱くシャウトしているみたいな絵のもののイメージが強かったと思うんですが、デザイナーの小野英作君というのが、それまでまったくソウルを聴いたことがないような人でして、だからこそでも、従来のソウルのデザインとは違ったアートワークが生まれたんだと思います。で、選曲も、デザイナーの小野君のような、それまでソウルミュージックに親しみのない人でも気に入ってくれるような曲を並べたつもりでした。
『Free Soul』シリーズは、橋本さんいわく、「加熱しすぎて、あまりにも立て続けに発売しないようにした」というほどの大人気となりました。
その後、メジャー、インディー含めて、ほぼ全ての会社からリリース。今年で 最初の発売から20周年です。
いろんな世代に、僕たちが好きな音楽が伝わっていったらいいなという気持ちからなんですが、2010年代以降の音楽のなかで、フリーソウルと共振するものを作っていきたいというのが僕のなかにあって、それはフリーソウルシリーズのなかでも、2010アーバンメローというタイトルをつけて選曲しているんですが、ちょうど今は、フリーソウルの指向と隣接するような音楽がメインストリームのヒットのなかにもたくさんあって。70年代の音楽にも90年代の音楽にも感じていたグルーヴィーな部分だったりメロウな部分だったりが今の音楽にも受け継がれているのを示すことができるシリーズ、ということで。
初めて聴く人にとっては、古い音楽も新しい音楽であり、そして、新しい音楽のなかにも古い音楽が溶け込んでいる。
橋本徹さんの Free Soul をめぐる冒険は続きます。
取材にお答えいただいた橋本徹さんは、最後にこんなことをおっしゃっていました。
ファレル・ウィリアムズや、ロビン・シック、ジャスティン・ティンバーレイク、さらには、マイケル・ジャクソンの新曲にいたるまで、いま、ふたたび、フリーソウルが世界に満ちている。
だから、モチベーションが上がっています!
今年はすでにリリースになっているものに加えて、さらにいろいろ発売が計画されているそうなので、『Free Soul』シリーズ、ぜひチェックしてください。
フリー・ソウル 20周年記念 - UNIVERSAL MUSIC JAPAN