今週は、2014FIFAワールドカップブラジルに参加する審判=レフリーのメディカルサポートを担当するスペシャリスト。
妻木充法さんのHidden Story。
ワールドカップのために、世界から集まるレフリーは、実に90人。
グループステージの期間は、一日に3試合から4試合が行われます。
しかも、会場は、広大なブラジルの各地に点在するため、移動は長距離。
レフリーにとって、コンディションの維持はとても重要な問題なのです。
いろんな国から来た人がやるとどういうことが起きるかというと、時差ぼけとかね、宗教の関係で食事がとれないとか、カラダの問題が出てきちゃうんですよ。
で、平均年齢をみると40歳くらい。高いです。疲れちゃうわけです。
ケガ持ちいるでしょ、具合悪いわけです。
で、我々がサポートするんです、90人を。だからサッカーのチームで言えば日本でいうトレーナーの仕事をレフリーに対してするんです。
練習中のケガをしたときの対応とか、練習終わって疲労回復のケアマッサージとか、あとケガした人のはやく直す治療とか、風邪をひいたときの対応とか。もちろん僕ひとりじゃできないんで、90人に対して8人、います。
お話を伺ったのは、今回のワールドカップで、参加する世界的な大会は22回目、という妻木充法さん。
FIFA主催の大会で、最初に施術を行ったのは、2001年 日韓開催のコンフェデレーションズカップでした。
2002年が日韓でしょ、その前年にコンフェデレーションやってるんですよ、それについたのが最初ですね。
FIFAは、開催国の、だからJFAに頼むわけですよ。トレーナー、誰か出してくれと。それで僕がJFAに頼まれて出たと。
そのときJリーグが始まっていたものですから、Jのチームのトレーナーはみんな嫌がってたんです、チームが。で、僕はそのときジェフユナイテッド千葉、前の古河電工に所属していて……古河電工は割と人材出しているんですよ。川淵さんもそうだし、岡田さんもそうだし、あのチームはね、そういうの出すの嫌がらないんですよ。そういう人材を惜しげもなく出しちゃうんです。なので、自分とこが苦しくなっちゃうんですけど。
ありがたかったです。
僕も行きたかったしね、やっぱり。
コンフェデレーションズカップに続いて、2002 FIFA ワールドカップコリア・ジャパン、さらに、2005年のクラブワールドカップでの仕事が認められ翌年、ドイツで開催されたワールドカップにも参加しました。
世界が認めた妻木さんの治療法は、円皮鍼という鍼を使ったもの。
小さな円の形のテープに、ほんの短い針がついています。
皮膚刺激なんですよ、これ0.6ミリなんで。でも、効果はこれだけでもある。
ケガしたらケガした部位とこれをあわせてやります、ハイブリッドで。
これだけじゃなくてマッサージもあるしいろいろありますから他の理学療法士とかいるんで、それは彼らに任せて。
お互いチームですから、8人の。
ディレクター:審判の人に針をやったらびっくりされました?
インクレディブルって言いますね、必ず、イングレディブルって。
それでその次があるんですよ。 Why?って。
そもそも、妻木さんがサッカーに関わるようになったきっかけは、ひとつの世界大会の存在です。
1979年って、ワールドユーストーナメントが東京であったんですよ。で、僕それデビューなんですよ、トレーナーの。そのときにデビューした人がもうひとりいます。マラドーナ。マラドーナのデビューと僕のデビューが一緒なんですよ、笑っちゃうでしょ。今だとJリーグだとあれだからサッカーってすごいと思うでしょ、当時の人気はプロ野球ですから。僕の所属していたコモリスポーツマッサージってところはトレーナーを派遣してたんですけど、ワールドユースって夏だったものですから、夏って野球のシーズンでしょ。だからベテランのいいトレーナーはみんなプロ野球に行って、依頼がきたとき誰もいないんですよ。それで、お前行けって。縁なんですよ、としか言いようがない。
それから35年。
妻木さんは今、ブラジル、リオデジャネイロに滞在中。
毎日、審判たちに鍼を使った施術を行っています。
レフリーはリオをベースにしていて、そこから各試合会場へ向かいます。
どの試合を担当するのかは、ぎりぎりまで明かされません。
コンディションを常にキープする必要があるのです。
レフリーってなるべく近くまで行って判定したいんですよ、やっぱり。
どこか、おかしいところがあると、ちょっと甘くなっちゃうんですよ。なるべく良い状態をキープしたいっていうのは、ものすごく、みんな持っているんですね。
ファインチューニングっていうんですけど、それをやってくれるって言ってくれるから。メディカルコンディション、フィジカルコンディションは大事だと思うんですよ。そうすると公平なジャッジができるでしょ。
ワールドカップ前に行われる審判団のトレーニングキャンプから、ブラジル入りしている妻木充法さん。
楽しみにしているのは、リオデジャネイロで行われるマッチを見に行けること。
ただ、レフリーの動きを見ちゃうんですよ、ついつい。やっぱ仕事だから。
くやしいことに、試合よりもレフリーを(笑)
審判が一歩でも先へ走って、できるだけプレーの近くで、フェアなジャッジができるように。
ビューティフル・ゲームを舞台裏で支える仕事は、7月13日、決勝の日まで続きます。