山形県鶴岡市の山あいにある、あつみ温泉。
朝早くからにぎわう市場で、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。旬の たきこみご飯を食べよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
山形県の西側にあり、南は新潟県に接している鶴岡市。
山岳地帯、平野部、海岸と、さまざまな環境があって、江戸時代は庄内藩14万石の城下町として栄えました。
山々からの水が、庄内平野をうるおし、米どころとして有名。そして1,000年以上の歴史を持つ温泉が人々を癒しつづけてきました。
そのうちのひとつの「あつみ温泉」では、長期間滞在して、自炊する湯治客のための朝市が、250年以上、冬場以外の毎朝行われています。
枝豆の一種の「だだちゃ豆」は、薄茶色の薄皮が特徴。見た目は少し小振りで くすんだ色ですが、食べてみると濃厚な香りとコクがあり、かみしめるほどに甘みがひろがります。
「だだちゃ」は「お父さん」という意味の方言でこの地方の土壌や水でしか栽培できない特産品。同じタネをまいて栽培したとしても、別の土地では薄茶色の同じ品種はできないのだそうです。
そして収穫できるのは、暑い盛りの8月が中心。
希少価値が高いうえに、この時期だけのお楽しみ。
たんぱく質をはじめとした栄養分が豊富です。塩ゆでしたものを「おつまみ」で……というのが一般的ですが、朝は「だだちゃ豆」を入れた炊込みご飯でいただきましょう。もうひとつの地元の名産品、夏に伐採した原野を焼き払い、そこにタネをまいて冬場に収穫する「赤かぶ」の漬物といっしょにどうぞ。
地元の農家では、お味噌汁の具のひとつとして「さや」ごと「だだちゃ豆」を入れることもあるそうです。