2014/9/26 瀬戸内ジャムズ・ガーデンのHidden Story

今週は、瀬戸内海の周防大島を盛り上げるジャム屋さん、「瀬戸内ジャムズ・ガーデン」のHidden Story。
瀬戸内ジャムズ・ガーデン

山口県の周防大島。
少し前までは、高齢者の割合が高い、いわゆる過疎の島となっていました。しかし、そんな島に活気が戻りつつあります。「瀬戸内ジャムズ・ガーデン」も、その流れを作っているお店です。

店主は、松嶋匡史さん。
実は、松嶋さん、以前は電力会社に勤務されていたのですが、そこを辞めて、ジャムのお店を開業されました。まずは、そのきっかけを教えていただきました。

新婚旅行でパリに行きまして、パリでたまたま、ウチの妻が「アクセサリーを買いたいから、どうせアクセサリーに興味の無いアナタは隣りのお店でも入っていて」と言われて入ったのがジャム屋さんだったと。

フランス語で、コンフィチュールというのがジャムだとは知らなかったんですけど、なんか果物を瓶詰めしたものが壁一面に並んでいて、あまりにもその種類の多さに感動して、結局その場で30本ほど選んで帰って、これはお土産に友達にあげよう、と思って買って帰りました。

新婚旅行から帰国。30本買って帰ったジャムは、全部!自分で食べました!

そして、帰国後、3日目。
奥様に「ジャム屋さんをやりたい」と提案したのです。

妻はですね、さすがに、新婚旅行から帰って3日目に会社を辞める話になっては、それはさすがに約束が違うんじゃないかという想いもあったようで、新婚旅行から帰ってきて、実は3カ月くらいは妻に無視をされ続けた時期があります。

ディレクター:でも、そこで言い続けたわけですか?

日本でジャム屋をやるならこんな感じかな?という事業計画書を書いて、妻のパソコンにメールで提出させてもらったんですけど、妻が読むと思っていたら、よくわからないと言って、妻のお父さん、周防大島(いま住んでいるところの)妻のお父さん……お寺の住職なんですけど……にメールを転送してしまったんですね。

妻のお父さんが、結局、新婚3カ月目に会社を辞める事業計画書が手元に届いてしまって。

奥様に、メールで、事業計画書を提出。
でも、奥様はそれを見ずに実家の父親に転送。

その夜、電話が鳴りました。

たぶん、これはすごく怒られるだろうなと思っていたら、妻のお父さんが「これは面白いからやってみようか」と言ってくれたので、ジャム屋ができる方向に進んでいったんですけど。

これも後日談になってしまうんですけど、「そういえば、なんであんなに簡単に脱サラしてジャム屋になるのを賛成してくれたんですか?」って聞いたらですね、妻の家っていうのがお寺さんで、子どもが3人姉妹なんですね。長女が僕と結婚して、次女が広島に働きに行って、三女が福岡に嫁いでいってしまって、お寺を継ぐ人がいないと。

「これ、たぶん、ジャム屋はうまくいかないだろうけど、帰ってこさせたら、ジャム屋がうまくいかなければ、お寺を継がせてくれっていう話になるだろうな」ということで、お父さんは即決で賛成してくれたらしいです。

美味しいジャムを作るには、果物が美味しいタイミングで製造することが必要です。
周防大島は、その条件にぴったりの場所でした。

ただし、島には、大きな問題がありました。

この島に移住してきたときに、過疎高齢化がこんなに進んでいるとは思わずに移住してきて、よくよく聞くと1980年から2000年の統計調査で言うと日本一の高齢化率だったような、そういう島なんですね。

原因を聞いていくと、昔はみかんで利益が出て息子さんを大学にやることができたと。けど、今はもうそれで食べていくのは非常に難しい。

それを聞いたときにですね、なんで、日本の中でもっとこう、世界のフェアトレードというのは言うのに、なんで日本の国内のみかんが、なんでこんなに安いんだろうと。

それも加工用のみかんは1キロ10円にもならないような価格で買い取られていくんですけど。
これでは自分の息子を農家を継がせないと思うだろうなと。

「瀬戸内ジャムズ・ガーデン」の松嶋匡史さんは
加工用の果物を、1キロ100円以上で買い取っています。

また、松嶋さんは、お客さんに、あるリーフレットを渡しています。
タイトルは、「過疎高齢化が進む島で小さなジャム屋が思うこと」。

ジャム作り自体は、単にモノを作るだけの職業なのかな?と。ジャム作りを通して実は地域づくりができるんじゃないかな?と、小さなジャム屋ですけど思っていて。

田舎って何もないという方が多いんですけど、実はとてもすごい地域資源があって魅力にあふれていて、それをきちんとジャム屋なりに解釈して伝えていくことで、もっともっと、この地域は過疎高齢の先進地域ですけど、発展していく可能性は山ほど残っているんじゃないかなと思っていまして。

ちなみに、奥様のお父さんが当初 持っていた「娘夫婦は、ジャム屋がうまくいかなければ、お寺を継がせてくれと言いだすだろう」というもくろみは外れました。

しかし……

妻のお父さんのもくろみは、実は外れたわけではなくて、妻がお寺の副住職として務めていまして、数年後には住職を継承することになると思います。

なので妻のお父さんとしては、地元に娘夫婦を帰すことによって、もともとお寺を継ぐ気がなかった娘だけど、お寺を継ぐという思いもよらぬ形で、面白い方向に転んでるんじゃないかなと思いますね。

思いもよらぬジャムとの出会いから、思いもよらぬ 瀬戸内海でのジャム屋さん開店。
そして、その仕事が過疎の島を思いもよらぬ方向へ導こうとしています。