和歌山県南部、新宮市。
川のほとりで遠くに見える緑の山を望んで、彼女は大きく背伸び。
そして心に決めました。簡単な朝ごはんにしよう。
だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。
熊野川の上流にある、杉や楠が茂る緑の山々は、大昔から自然信仰の対象とされ、神聖な存在でした。それらは、平安時代に、熊野本宮大社・熊野速玉大社・そして熊野那智大社を中心とする「熊野三山」として確立。中世には貴族、地方の武士、さらに一般庶民までが「熊野詣」をするため、全国からこの山にやってきました。
山あいの急な場所に、大きな樹木が生い茂り、その合間を這うように進む山道を抜けると、神々しい風景がひらける、霊験あらたかな「熊野詣」。いにしえの人々の、大自然に対する尊敬の気持ちを、今でも体験することができます。
新宮市あたりの山仕事や農作業、漁村などでお弁当としてはじまったと伝えられる「めはり寿司」。
大きな高菜の葉でおにぎりを包み込んだ食べ物です。
麦飯をソフトボールぐらいの大きさに握り、それが「目を見張るほどの大きさ」、というのが「めはり寿司」の名前の由来ともいわれます。
じゃこ、かつお節などを、具としておにぎりに入れたり、家庭で作られる簡単な料理なので作り方はさまざま。駅弁も出す専門店では、ゴマなどを加えた寿司飯を使いおかずや、つけものと組み合わせたりしています。山道を歩いて、一段落したら、熱いお茶と一緒にどうぞ……
シンプルなレシピながら、飽きのこない味。
特別ではない、まさに日常のごはんです。