今週は、今年大ヒットした映画『STAND BY ME ドラえもん』の誕生秘話。八木竜一監督にお話を伺うことができました。
©2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会
3DCGで制作され、この夏、公開。
「ドラ泣き」という言葉も生まれるほど、多くの人の心をふるわせた映画『STAND BY ME ドラえもん』。その映画制作は、こんな一言がきっかけで始まりました。
この話が出てくる前に、ちょうど自分たちがやってた作品が『friends もののけ島のナキ』という作品を作っていたんですね。それをまだ作ってる途中の、終わりかけくらいで、『friends もののけ島のナキ』のプロデューサーが、『トイストーリー3』を見てですね、「これをドラえもんでできないか?」という相談を受けたんですね。忙しくてワーってなってるときで、しかもその名前を聞いたときに、「ドラえもん??」ってなって、でも次の瞬間にまず浮かんだのが、ヒミツ道具ってあるじゃないですか、あのヒミツ道具をリアルに表現したら絶対面白いだろうな、と思ったんですよね。
逆に、ドラえもんがCGでやると2Dのような嘘がつけないということがあって、すごく難しいだろうと思ったんです。ドラえもん自身の動かし方が。
ドラえもん……結構手足が短いので、歩かせる、あぐらかかせる、タケコプターを頭につける、何気ない仕草なんですけど、それは1つ1つ、すごく大変になるだろうなと。それは瞬時に思いましたね。
八木竜一監督が最初にイメージした通り、キャラクターのデザインには1年以上、という長い時間が費やされました。
予想通りドラえもんはすごく大変で、のび太もすごく苦労したキャラクターでした。
のび太っていうキャラクターが、原作とかアニメだと、メガネがそのまま目に貼り付いているんですよねー。メガネと目が貼り付いていると、マンガ的な立体感のあるキャラクターができあがるんですよね、CGで作ったときに。そこはもう、メガネと目は分けて今回は考えよう、ということに、これもね、かなり……キャラクターデザインをやった花房真っていう人間がいるんですけど、彼と話し合って……「どうすんだ」って、色々やった結果「分ける」ってことになったんです。
でも、そうするとね。のび太は「のび太じゃない」というか、見たことがないのび太がやってきた、みたいになって。
目とメガネが分かれてても、ちゃんと「のび太だな」って思える……翻訳の仕方って言ったらいいんですかね?……例えば前髪なんですけど、前髪の高さをあんまり下げすぎると良いとこのお坊ちゃんみたいになっちゃうとかね。
マンガでは、のび太の目とメガネが一体となっていたのを今回は、「分けて」デザインしました。そして、そのことで、目にさまざまな感情を宿らせることができたのです。
それにより、山崎貴さんの脚本がより活きることに なりました。
特に、3.11以降、日常というものを大事にしないといけないんじゃないか?当たり前のように暮らしている日常が、いかにかけがえのないものであるかを、きちっとお伝えできるストーリーになってたほうが良いじゃないか?というのもあって。
冒険ものではなく「ドラえもんがやってきて、いかにのび太と暮らし始めて、何のためにやってきたのか、それがどうなったのか。というのをやっていって、最後に別れがあって」という話を日常の中でやる。ということをやるほうが、正しい方向なんじゃないか?ということで、もとのてんとう虫コミックスのマンガがありますよね。そこで、第一話で語られている「のび太の残念な未来」を修正するために、セワシが連れてきたロボットである、ということなんですよね。
そうすると、おのずと先のストーリーは、のび太の未来が修正されるための仕組みを作っていかないといけなくて、それはやっぱりしずかちゃんと結婚できることだろうと。で、達成されるとドラえもんは任務完了で帰る。
で、そのときには当初それが目的だったけれども、それだけではなくて、友情が芽生えていて、そばにいてほしい存在になったという。
当たり前のように暮らしている日常こそが、かけがえのないものである。
そこには、かけがえのない友情があり、愛がある。
映画『STAND BY ME ドラえもん』は そんな人生の真実を描きました。
ここで、監督の八木竜一さんに教えていただいたHidden Storyをもうひとつ。
制作の過程で問題となったのは、映画の舞台となる 70年代の風景、70年代の子どもをどう描くのか、ということでした。
僕らが小学生だったときって、クラスの半分以上は、のび太と変わらない服装、髪型、靴を履いていたと思うんです。
のび太はその代表である、っていうことなんですよね。僕が64年生まれでアートディレクターが70何年だったかな6年くらいあとなんですよ。で、お互いの小学校4年のときの写真を持ってきて。当時の小学校の写真とかってないんですよ資料で、探せないんですよ。今の小学生見ても分かんないじゃないですか。
しょうがいないんで、アルバムからひっぱがして持ってきて見てみたら、「あ、のび太そのものじゃん、ふたりとも」(笑)。
「髪型、同じ同じ。運動靴、運動靴」、上履きみたいなね。それ見ながら半ズボンの長さだとか、のび太の。すごく短いんですよ、腿がすごく丸出しなんですよ。そういうのを決めていったんですよね。
映画の重要な舞台となるのが、70年代の のび太たちがタイムマシーンで移動する21世紀の世界。
つまり、私たちがいま暮らす時代ですが、そこでは、車が宙に浮き、ビルのあいだにはチューブが走っています。
僕らの世界ではない21世紀なんですよね。これはフルCGで作っているんです。 こっちはリアリティよりも憧れを強く出したいというのがありまして。今、世の中のムードってお先真っ暗というか、かなり濃いグレーなムードが高いと思うんですよね。子どもも、未来に期待していないというところがあると思うんですよ。
だけど、あえて、夢を失わないというか、ああいう未来を作っていきたい、という「未来をビジュアルだけでもそこに到達しておく」ということですよね。
もし、これから見に行く方がいらっしゃったら、子どものときに、ドラえもんを読んでいたりアニメで見たと思うんですけど、そのときのワクワク感を呼び起こして欲しいなというか。
それとね、大人になると、子どものころに気付けなかった、F先生からのメッセージが感じてもらえるんじゃないかなと思うんですよね。親が子どもを思う気持ちだとか、そういうことだと思うんですよね。
友達との出会いと別れ。少年の成長。誰かを愛すること。
そして、親が子どもを思う気持ち。
藤子F不二雄さんがドラえもんに込めた想いが、3DCGとなり、今を生きる私たちの心に届いた 2014年でした。
この作品、8月に公開されたんですが、引き続き、一部の映画館で上映中です。
さらに!2015年2月18日には、ブルーレイ、DVDの発売が決定しています。
「ブルーレイ豪華版」には、本編未公開シーンを含む特典映像もついてきます。
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