2010年10月15日
読食の秋とする。其の参。
渡辺祐編集者がまだヒヨッコの中のヒヨッコであった1980年代前半。安西水丸先生にとてもお世話になったのである。
メールで画像を送ることはもちろん、バイク便もFAXもない頃。原稿用紙に手書きされた原稿はもちろん、漫画の原画、イラスト、写真、ぜーんぶ取りにうかがうわけです。ボクは、大友克洋さんに原画をいただいたこともあるんだぜー(自慢)。
その結果、若い編集者は都内の地下鉄路線、バス路線、たまにタクシーでの行き方をどんどん覚える。そのノウハウは、いまだに財産。原稿を取りにうかがって、もう編集部に戻らなくていい、という時には呑みに出かける。たいていは先輩のところにうかがっているわけなので奢ってもらうことも多かった。そして店を教えてもらい、飲み方を教えてもらった。いただいた原稿を無くさないで帰るのに必死(笑)。
こうして陋巷を生きる術を学んだのであります。
安西水丸さんにも、ホント、お世話になりました。とても優しい方なんですが、ちょっと皮肉屋のところもあって、辛口なトークも聞かせていただいた。高校時代から「ガロ」や「宝島」で読んだ漫画や文章のファンだったので、すごく嬉しかった。そうそう、ワタシの男のセンチメンタルの根っこには水丸ワールドありなのです。漫画を読む機会があればわかっていただけるかと。
『大衆食堂へ行こう』
安西水丸
その水丸さんが都内の食堂を歩いて食べた絵日記風の一冊。いまはこういうことをblogでやっている人も多いけれど(あ、オレもか!)、絵柄の雰囲気、食堂と「街」への視線の柔らかさと博識はさすがのひとこと。
淡々と取材した食堂の数が、55軒。読んでいるだけでお腹が空くし、散歩に出たくなる一冊。