2010年10月19日
読食の秋とする。其の四。
いろいろなパーツで時代遅れな男ではありますが、短篇集が好き、というのもかなり時代遅れ的(我が国では)であります。ブンガク方面でも短篇好きですが、特にそれがミステリーともなれば、もう涎がだーらだら。表現が汚い。
どうも延々と続く物語の醍醐味よりも、人間の営みの断片をザクっと切り取る短篇のダイナミズムに興趣がわくご様子。ダン・ペンとは関係ありませんよ。そちらはR&Bの名曲をいっぱい書いたシンガー・ソングライター。
ダン・ペン、いや、短篇の名手と言えば、ロアルド・ダールさん。「チョコレート工場の秘密」といった子供向けの作品も有名ですが、なんたってワタシには短篇小説。
『あなたに似た人』
ロアルド・ダール 田村隆一訳
このあまりにも有名な極上短篇集に「味(原題:Taste)」という、これまた大変に有名な一篇がございます。美食を誇るオーナーとゲストが「絶対に当てられない」というワインをテイスティング勝負するお話。ワインを偏愛する人々の、もう滑稽なまでの意地と知識と経験のバトルであります。何度読んでも面白い。1953年発表らしいのでワタシですら生まれる前に、もうこんなのあったんだ。やんなっちゃうねー(笑)。
短篇として最高にスリリング。そこにたった一室しか出てこなくても。そして、偏愛を寸止めしないと人間どんだけ我が儘になるかという反面教師的教科書としても最高。それがワインであろうがなんであろうが。
これ読むと、次はスタンリイ・エリンを読み返したくなるだす。詳しくは後日。
あ、また装丁が和田誠さんだ!