2010年10月22日
読食の秋とする。其の五。
ホテルが好きなのです。
40代前半ぐらいの頃に「やっぱり旅館いいなあ」と思った時期もありましたが、また半回転してホテル好きに。過不足無く「生活」ができる。働いている人の段取りがいい。放っておいてくれる。清潔である。シーツが乾いている。バーがある。なんだかミニチュアの街みたいなのがいい。
なので映画でもホテル物に弱い。そんなジャンルないか(笑)。でも、群像劇の有名作『グランド・ホテル』なんぞは、まさに「ジャンルがホテル」ですな。『インセプション』もあそこのほらアレがホテルなのがたまらないし、007シリーズも「ホテル多め」なのが好き(笑)。いわんやロードムーヴィーをや。シーンにホテルやモーテルが多いというだけで嬉しいんだから、ちょっとした病であります。
『ザ・ホテル』
ジェフリー・ロビンソン 春日倫子訳
サブタイトルは「扉の向こうに隠された世界」。こちらはロンドンの最高級ホテル・クラリッジの、まさしく「関係者以外立ち入り禁止」の扉の向こうで起きている上品にしてドタバタなエピソードを綴ったノン・フィクション。総支配人から保安係、エグゼクティブ・ハウスキーパー、総料理長に会計主任まで、ホテルマンの皆さんの粉骨砕身がユーモアも交えた視点で描かれております。 最高級のホテルだけに全員がプロでプライドが高いところもスパイスが効いてる。
もちろん厨房&レストランの「最高級のドタバタ」も活写。注文した魚と違う魚が届いちゃって大騒ぎ。メニューの表記をフランス語から英語に変えるという提案でひと騒動。
優雅なるホテルのレストランの、その裏側に思いを馳せて、ああ、客でよかったーと思いつつも、働くことの悦びと矜持を読む。