2020年05月07日
Stay Home、お家で読むオススメの一冊
有限会社BACH代表で、
ブックディレクターの幅允孝さんをお迎えしています。
小黒「ぜひ、オススメの本を教えていただきたいんですが」
幅「そうですね、何冊かお持ちしたんですけど、
コロナウイルス関連で言うと、
『ウイルスのウイルスの意味論――生命の定義を超えた存在』(みすず書房)
山内一也さんという東大の名誉教授の方が2018年に書かれた本なんです。
山内さん自身は、ウイルスの研究に関しては第一人者で、自身が天然痘とか
牛疫の根絶に参加するなど、50年以上現場でやってた方なので、
その方が第一線を退いてまとめられた一冊ですね。
すごく基本的なこと…例えば、ウイルスや最近の違いとかが
ちゃんとまとめてあります。
ウイルスは中空に浮いていると無生物に近いのが、
体内とか増殖できるところに入るとすーっと増えていく。
しかも増えるスピードが速いので、間違ったコピーが生まれて
変異が生まれやすい。
そういったウイルスの基本的な考え方はなにか、から
21世紀に入って発展したゲノム解析とかの最新の成果、
そういったことまで伝えつつ…しかも、文学作品とかとウイルスの関係とか、
研究書というより、読み物として面白く読んでもらえると思いますね。」
小黒「せっかくこうだらけた時間があるから、もっとだらけることができる様な
本があれば…」
幅「これですね。
大橋裕之さんの『音楽』(太田出版)という漫画を持ってきました。
これ実は2020年の1月にアニメーション映画にもなったんですが、
あるヤンキーの男の子がある日、音楽に目覚めて、やめるっていう…
までを書いたお話なんですが。
大橋裕之さんという作家の方が、僕がすごく好きな作家で。
とにかくダメな人間を書かせたら、日本一と言いますか。
人間の良き所と言うよりは、暗がりとか、やろうと思っても一歩踏み出せないとか、
言おうと思っても言えないとか、そういうものが凝縮している。
それが悪意とかでなく、純粋ゆえに踏み出せない一歩とか言うものを書く作家なんですけど、
ダメな人間を描きながら、人間の深淵にタッチしてくれる感じは常にあって。
今、なるべく努力して無為な時間を過ごそうと多いと思いますので、
そう言う人には、大橋さんの漫画はちょっとカッと晴れるものがあると思います。」
今夜の選曲:STOP THAT TRAIN / SPANISH TOWN SKABEATS