2020年12月29日
毎年恒例の企画…今年の一冊の選書と、ご自身の新書について伺います。
生物学者の福岡伸一さんをゲストにお迎えしています。
※リモートでのご出演です。
ーー毎年福岡先生には”今読むべき一冊”を
推薦していただいています。
福岡さん「今年はですね
『分解の哲学ーー腐敗と発酵をめぐる思考』を
ご推薦したいと思います。
京大の藤原辰史さんが、売り出し中の准教授が
書いた中々の好著です。
世の中はこれまで、20世紀型のパラダイムで
見ると常に物を作る…アクセル側の話で考えていました。
でも、実は世界は動的平衡で成り立っていて、
ブレーキ側の制御があってこそ、
平衡が成り立っています。
ブレーキ側の制御というのは、物を分解すること
壊すこと、ゴミをどう処理すること、腐敗すること
…そう言ったものに視点を向けて、
アクセルとブレーキのバランスを考えて
いけないということで”分解の哲学”。
コロナ時代の生命論にもなっているし、
私の動的平衡論にも通じている非常に
面白い本だなと読みました。」
小黒「ご自身の本を一冊選ぶとしたら
なんですかね?」
福岡さん「ちょうど先日、新書版として
出しました
『福岡伸一、西田哲学を読むーー生命をめぐる思索の旅』
これは、京都学派の始祖でもある西田幾多郎の
生命哲学を私の動的平衡論から読み解いた
ものです。
西田幾多郎のは絶対矛盾、自己同一みたいな物を
言っていたんですが、それは藤原さんの話にも
出たアクセルとブレーキを同時に踏んでいるのが、
今の世界だと。そのバランスによって、
正反対のことをやっているからこの世界は
保たれている…という西田さんの考えを
私の視点から読み解いたちょっと難しい分厚い
新書です。これもまた、コロナ時代の
生命論として読んでいただけると嬉しいです。」