2021年08月05日
登山家ならではの視点で考える「災害支援」とは?
アルピニスト・野口健さんをお迎えしています。
ーー2016年の熊本地震の時には
災害支援も行われています。
野口さん:あの活動は
山を登っている人間の活動なんです。
例えば、東日本大震災の時には
薄い毛布だけ配られて被災者の方が
避難所で震えている映像を見ました。
僕もなんどか遭難したことがあるんですが
ビバーク…野営をして、テントに
帰れない夜ってクレバスの底で
眠るんですが、寒すぎちゃって
寝れない夜が長く感じるんです。
もう何時間も経ったかなと思って
時計を見ると15分くらいしか
経ってない。それが何時間も続くと
メンタルがやられていくんです。
やっぱり被災者の方も、疲れ切った
中で避難所にいる…夜くらいは
あったかくなきゃなと思った時に
寝袋を思いついたんです。
トラック一個でたくさん運べるし、
寝るときはジッパーを閉めて
暖かくなる…そこから活動が始まりました。
熊本地震の際に問題になったのは、
車中泊です。避難所があるのに、
車中泊が多かったんです。
余震で避難所の天井が落ちたという
側面もありました。
建物があってもダメだっていう時に、
思いついたのがテントでした。
エベレストのベースキャンプを
イメージして長期滞在するのに
快適な空間を演出するんです。
それで出来たのがテント村なんです。
小黒:今回の新しい本
で野口さんは
『小さなコツを積み重ねれば、
必ず大きなコツになる』
大胆な野口健らしくないなと
思ったんですが、コツコツコツという
のは登山家として覚えた習性なんですか?
野口さん:高校の時に初めて
富士山を登った時に、下から見ると
すごく大きかったんです。
本当に登れるかとも思いました。
一歩なんて、1mもない。
でも、その1mずつを右足、左足と
続けていったら登れてしまった。
それがとても印象的だったんです。
去年の7月に、久しぶりに八ヶ岳に
登った時に、その感覚を思い出して
一歩一歩の積み重ね…
山ってコツコツなんですよ。
地道な積み重ねなんです、
コツコツの中に小さいコツが沢山ある。
特に僕らって小さいコツを
バカにすると山に殺されてしまう。
あとがきに書いたのはふと、
そんなことを思ったからなんです。
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