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4月13日の放送では、グローバルファンドで保健システム・パンデミック対策を行う馬渕俊介さんをお迎えして、世界を襲ったコロナから、学んだこととは?というテーマでお届けしました!
馬渕俊介さんのプロフィール
世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)
保健システム及びパンデミック対策部長
東京大学卒業後、JICA、マッキンゼー、経て、世界銀行に勤務。
2014-16年に西アフリカで大流行したエボラ出血熱の緊急対策を統括し、
流行の収束に大きく貢献。その後ビル・ゲイツ率いるゲイツ財団に勤務。
コロナ禍には、WHOの独立パネルでパンデミックを二度と起こさないための
国際システムの改革を提言。
2022年からグローバルファンドで、途上国の保健システム強化及びパンデミック対策を統括。
ハーバード大学公共政策修士、ジョンズ・ホプキンス大学 公衆衛生博士。
Q. 馬渕さんは現在、グローバルファンドで
「保健システム及びパンデミック対策部長」という
ポジションでお仕事をされていますが、「グローバルファンド」について、
そして馬渕さんが
そこでどんなお仕事をしているのか教えていただけますか?
グローバルファンドは、AIDS、結核、マラリアという、世界的には年間250万人ぐらいの人が亡くなっている、3大感染症と言われている病気を終わらせるための組織として、2002年にスイスで設立されました。
日本政府を含む各国の政府とゲイツ財団などの民間財団、民間企業などから資金を調達して、その資金を100カ国以上の発展途上国の感染症対策に提供しているんですが、2年間で50億ドルぐらいの巨額な資金を提供してます。
その支援で、20年間で3大感染症の死亡率が6割減、合計で6500万人ぐらいの命が救われたという風に言われていて、いい結果は出ているんですね。
私は、その3大感染症の対策、あるいはパンデミックの対策を支える保健システムを強化する仕事をしてるんですが、具体的に言うと、例えば、お医者さんや看護師さんが、あるいはコミュニティヘルスワーカーがちゃんとトレーニングをされて最適な場所に配置されるとか、あるいは治療薬、検査キットが必要なところに届くとかですね。
必要なデータで感染症の状況を把握して、その上で対策を取れるようにするとか、そういうことを国ができるようにならないと、対策っていうのは持続的にできないんですよね。
そのサポートをやっています。
Q. ファンドっていう立ち位置で世界を動かしている人たちがいて、実際に何千万人という人たちが救われてるんだっていうのが、結構衝撃的でした。
医療機関の人たちが、1番いい形で医療サービスを提供できるようにするためのいろんなサポートが必要で。
まず国がサポートしないといけないんですけども、その国をサポートするための組織も必要になるっていう形です。
Q. 「パンデミック」と聞くと私たちが真っ先に思い浮かぶのが、
2020年に始まったコロナのパンデミックですが、
馬渕さんはコロナ禍ではどんな活動をされていたのでしょうか?
その時はですね、ゲイツ財団で働いてたんですが、先ほどご紹介いただいたように、エボラ対策とかやっている中で、1つ確実にあったのは、途上国の緊急オペレーションセンターとか、大統領の直轄のタスクフォースとか、その運営をいかに効果的にするかが1番インパクトがあるとわかってたので。
財団の資金を導入して、アフリカの諸国のそういった司令塔の運営をサポートする仕事をやってました。
Q. それだけ大きなやり取りってなると、色々動きの遅くなってしまう部分もあるんじゃないかなって想像するんですけど。そのスピード感ってどういうふうに工夫していくんですか。
それはほんとに難しいところで。
今実際のコロナ対策でも、分析した時に全てのフェーズで遅れが出てしまってるんですよね。それはやっぱりやったことがあるものに対して、ちゃんと仕組みを事前に作っておくということが必要になるので。今、コロナの教訓を得て、どのぐらいその仕組みを作っていけるかというのが大事かなと思います。
Q. 著書を読んでいても、パンデミックだけじゃなくて、エボラ出血熱だとか、色々な途上国支援で大きなプロジェクトに関わっていると思うんですけど、馬淵さんは、高い壁が目の前に立ちはだかった時にどうして立ち向かおうって思えるんですか?
多分、積み重ねなんだと思いますね。
いきなり立ち向かおうと思っても厳しいですけども、以前そういうことをやったことがある積み重ねが自信につながっていて、だいたい何でもやればなんとかなるんじゃないかという話になるというか。
やっぱりいろんな失敗をしてきて、それを乗り越えてきているので、こういう難しい問題解決も前もったことがあるし、こういう風に立ち向かえばいいんじゃないかっていう感じがあるんだと思いますね。
Q. 今コロナって、どうなってるんですか。
今感染の状況はだいぶ落ち着いてきていて、パンデミックというよりは、特にアフリカ各所でちょっと起きているのを対策をとるという形です。
ただ、そのやり方がわかっているので、今はコントロールはできてきているという感じですね。
ただ、それに変わる感染症は本当にいろんな形で出てきていて、例えばエムポックスという感染症がアフリカで今猛威を振るってるんですけども、私の住んでいるスイスにもこの間移ってきたりとかして、必ずそういうパンデミックの脅威は常にありという感じです。
Q. つい最近も、パンデミックに向けて動きがあったんですよね。
実は、昨日独立パネルで提案したパンデミック条約という国際的な条約が原則合意に至ったんです。
3年間の交渉を経て、もう合意されないんじゃないかと言われていたのが、大逆転で昨日合意に至ったということです。
Q. 具体的にどういうことがその条約で定められてるんですか。
いくつか例をご紹介すると、例えば新しい病気が出た時に、その病原体の情報って国は自分の中に抑えてしまいがちなんですよね。
それを、すぐに世界中に共有して世界中の業者が分析をして、それに対応できるワクチンを作るっていうのをものすごいスピードで進めないといけないので、その共有に達する国際的な合意事項とか、あるいはワクチンを作る、治療薬を作るときの技術移転をアフリカとかほかの国にちゃんとして、いろんなところでそれが作れるようにするとかですね。
それも全部コロナの反省から来ていて、実際ワクチンとかを作れる業者が限られている中で、アフリカにワクチンが行き渡らないという状況があったんですね。
それを打開するための国際的な取り組みができたという感じです。
Q. 2019年、馬渕さんはビル&メリンダゲイツ財団に所属されていましたが、
なぜ財団を離れ、グローバルファンドに参加されたのでしょうか?
今のいただいた仕事なんですが、それで出せるインパクトの大きさに心が震えたっていうのが1番の動機なんですけども。
グローバルファンドは、先ほどお話したように、AIDS、結核、マラリアの対策で1番大きな結果を出している国際機関の1つなんですけども。
その途上国の保健システムとパンデミックの対応をサポートするという面では苦戦してたんですね。
年間、10億とか20億ドルの規模の事業を立て直すと、それでかえられる途上国の人々へのインパクトの大きさ、それを考えて選んだというのが1番大きなところですね。
Q. 途上国支援に踏み込もうと思った原点はどこでしたか?
大学の時にバックパッカーとしていろんなとこ旅行しまくったんですけども、その時の経験ですね。
その時に、当時は文化人類学者になろうと思ってたんですが、実際にそこに行って、その人と同じような生活をしようとしてみると、いろんな不便とか不平等とか、そういったものを目の当たりにして。
かたや私はそのまま安全なところに戻っていくので、そういったものにもどかしさを感じるようになって。
この人たちが、自分たちの手で生活を改善していくサポートをしたいと思うようになったというのが、1番の原点です。
Q. 東大卒でJICA、ハーバード大学、マッキンゼー、世界銀行、
ゲイツ財団と物凄い経歴をお持ちですが、
これまでのキャリアの中で直面した、難題や大きな失敗などはありますか?
失敗はほんとにいっぱいあって、私はほんとに凡人なので、挑戦して苦労して失敗して、その積み重ねでだんだんできることが増えてったっていう感じなんですね。
なので、色々あるんですけども1つあげるとすると、英語と欧米カルチャーの中でリーダーシップを取れるようになるっていうことだったと思います。
最初、留学中、会話が全く分からないところから始まって。
マッキンゼーでも南アフリカに行った時は、英語でチームをリードするスピード感が間に合わないとか。
あるいは、クライアントの経営陣と話をするときに、ちゃんとシャープに話ができないとか、そういう壁にぶち当たったり。
あるいは、ゲイツ財団で自分を主張してチームをリードすることが難しかったり、ビルゲイツにプレゼンテーションとかもしないといけないので、シャープなコミュニケーションを身につけるっていう意味では、もうほんとにずっと続けて、20年近くかかって、ようやくできるようになったと言えるような状況まで来たのかなと思います。
Q. この春、多くの方々が新たな職場や組織で仕事を始めたと思いますが、
様々な職場で色んな役割を担ってきた馬渕さんが仕事をしていく中で、一番大切にしている事はなんでしょうか?
1番大事なのは、それぞれの仕事をやりきって結果を出す。それに尽きると思うんです。
2年前に東大で入学式の祝辞をさせていただいた時にちょっと話したんですが、環境が人を作るっていうところはあるので、その成長できる環境をつかむっていうことは、本当に大事なんですね。
ただ、必ずしも満足する仕事でなくても腐ってる時間はないと思うんですね。
自分がやった仕事、これが正解だったと言えるようにするのは自分なので、仕事をやりきって、結果を出して、その経験を自分の血肉にして成長のストーリーにしていくという、それが1番大事なことかなと思います。
馬渕俊介さんの著書、『道をつくる レールなき時代に自分の人生をどう切り拓くか』は5月29日に実業之日本社から出版されます。
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