WORLD CONNECTION
世界の今と繋がろう。
11月17日の放送では、ノンフィクション作家で探検家
角幡 唯介さんの最新著書「地図なき山―日高山脈49日漂泊行―」に注目。
こちらは、地図なし情報ゼロで北海道にある日高山脈を
旅した記録となっています。
直接、ご本人にお伺いしました。
Q. なぜ地図も持たずに山に向かったのか?詳しく教えて頂けますか?
探検部に入ってこういう活動始めたんですけど、探検家を名乗ってますけど、
地図のほんとにない場所って僕行ったことなかったんですよね。
だから単純に好奇心として地図を持たずに1つの土地に分け入ってっていう経験って
どういうものが見えてくるのかなっていう、まず根底にはそういうのがありましたよね。
Q. 「漂泊登山」と名付けられていますが、ネーミングにかけた思いはありますか?
僕という人間が、そもそも計画的に何かやるっていうことができないんですよ。
2年後、3年後ぐらいの先のことしかせいぜい考える、多分の脳の構造の問題だと思うんだけど。
だから、その行き当たりばったりが、実は僕にとっては1番居心地のいい時間の流れ方で。
で、登山ってなかなかそういうわけにいかないんですよね。
頂上があって、環境も厳しいから、ちゃんと計画立てて、安全を確保して、情報集めてやりましょうっていうのが普通のやり方なんだけど、 そうじゃない、旅みたいな感じで山登ることがしたいなってのは結構若い頃から思ってて。
で、やってくうちに山の実力もついてききて、今の自分ならできるなと思い始めたのが40前後ですかね。
で、それで実践し始めたっていうことですよね。
Q. 旅をしてきた中で、日高山脈っていう土地はどんな土地でしたか。
我々登山者にとって日高って、ある種のすごくビッグネームなんですよ。
特に沢を登ったりとか、冬山やったりとかっていう放浪系の登山が好きな人ってやっぱ結構いて、 そういう人たちにとって、日高って憧れの場所なんですよね。
っていうのは、すごく、山域自体がものすごく広大だし、環境もワイルドで野生的で、
原始の自然に満ち溢れてるっていうようなイメージがあるんですよね。
Q. 結構読んでて面白いなと思ったのが、日高山脈に入っていて、でも地図がない、情報がないわけだから、目に飛び込んでくる景色が全部新鮮じゃないですか。そこに名前をつけていますよね?
新しいものに出会ったり特徴的なものに出会ったら、人ってやっぱ名前つけると思うんですよね。
名前つけるのって、ものすごく重要で。
言葉によって何か命名しないと分節されないわけじゃないですか。
その外の環境そのものが、 基本的にはだらって続いてるものを、
あれはすごく目立つ地表になるんだっていう風に思って、 目の前にそれがあったら人って名前つけると思うんですよね。
で、それを特別視する。
そういうものをいろんなとこに配置していくことによって、
実は無意味だった単なる荒野が、名前を付けることによって意味を持って、
どんどん磁場みたいのが発生して、意味化されて、人にとって特別な場所がいろんなとこに配置されていくことによって、なんか世界っていうものがどんどん立ち上がってくるっていうことだと思うんですよね。
Q. グリーンランドとかカナダの島では、狩りをしながら犬ぞりで旅をされていたという。
犬ぞりで旅をしようと思ったきっかけっていうのは?
元々自分でソリを引いて、犬1頭を連れて2014年の冬からグリーンランドのシオラパルクっていうものをベースにして活動してたんですよね。
その時もずっと長い旅したりとか、極夜っていう冬の真っ暗な時期に探検したりとかしてたんですけど、
1番最後、歩きで旅をした時に、アザラシがたくさん出てくる場所があるんですよ。
その時は自分で鉄砲を持って狩りをしながら旅しよう。
現地で食事を現地調達しながら長い旅しようと思ったんですけど、
アザラシが獲れなくて、 で、色々機動力の問題とかあって、
結局犬ぞりじゃなきゃ無理だなと思って、それがきっかけなんですよね。
犬ぞりってすごいハードルが高くて、お金かかるし技術的にもすごく難しいし、何年もかかる。
5ヶ月間ぐらい現地に滞在して訓練とかもしなきゃいけないんで、家も離れなきゃいけないからハードル高いんですけど、
犬ゾリやらないともっと北にはいけないって思った瞬間に、もうやらないではいられないっていうかね。
将来、もしかしたら俺の人生犬ぞりに持ってかれちゃうかもしれない、
自分の家族が崩壊するかもしれないって、ちょっと思ったけど、でも、もうそう思ったらやらずにいられないみたいな感じ。
Q. 印象的だったエピソードとかってありますか。
イメージとしては、みんなで力合わせて元気はつらつ頑張るみたいなのが犬ぞりのイメージだと思うんですけど、 全然現実はそんなんじゃなくて、序列争いが激しくて。
すごい社会的な犬種なので序列争いが激しくて、だから常にもう走ってる間、威嚇洞喝標準みたいな、常に争いながらやってますよね。
喧嘩されると、まともに犬ぞりチームとしては機能しないから、それをどうやって手なづけるか。
けど、やっぱ3、4年かかったかな、ちゃんとある程度できるなってなってくるまでには。
Q. 1回喧嘩した犬たちを、野に放ってばーっといなくなっちゃったみたいなエピソードもお見かけしました
その時は今年なんですけど、それは、雌犬を連れてってて、2頭。
そのうちの一頭が発情期を迎えてしまって、 そうすると、オスはもう頭の中がおかしくなっちゃいますから、混乱が起きたりとか普段では絶対やんないような動きするんですよ。
それも予測不可能ですから、カオスになっちゃって。
で、1回、綱を綺麗に溶きほぐす時があるんですけど、その時にいきなり喧嘩が始まっちゃって、 いきなりばーってみんな逃げられて。
取り残されちゃったみたいなのありましたね。
Q. 怖くなかったですか。その時は
村の近くでも同じようなこと今年起きてたから。
ついに旅先でこれが起きてしまった。と思ったけど、呼んだら30分ぐらいで全頭帰ってきましたね。
Q.犬ぞりだとか、日高の旅の中でも、釣りをしたり、焚き火をしたりっていうある種、
原始的なところに帰っていくみたいな旅をされてるじゃないですか。
そこで得られる気づきとかってありますか。
やっぱり物に頼って旅をするっていうのは、自分の力で旅することにならないから、
なるべく食べるものにしても、装備にしても、なるべく自分の手で作り上げていくことによって、旅そのものに自分が関わる割合が高くなってくるわけですよ。
そうすると面白いし、旅の完成度も高まるし、手応えがある。
その行為そのものが自分の手で内側から生み出されてくる喜びみたいのがありますよね。
だから、なるべく非効率でもいいから自分の手で作り上げていくっていうことを大切にしてます。
Q.今後こんな冒険をしてみたいとか、意気込みはありますか。
今やってること深めたいですよ。
犬ぞりの旅にしても、自分の手で全部生み出してくっていうところはどんどんどんどん深められるんで、それを深めて、さらに 今グリーンランドベースにしてますけど、海氷の状態が良ければカナダの方行ったりって今まで行ってなかった地域にも行ってみたいなっていう風に今思ってますね。