FUTURISM

ON AIR DATE
2019.03.10

ゲストは、東京大学 大学院情報学環・学際情報学府の渡邉英徳さん。

先週に引き続き、「地震」にフォーカスしてお届けします。
「デジタルアーカイブは防災の未来をどう変える?」をテーマに、お話伺います。

FUTURISM813 (@futurism813) インスタグラムは こちら

SONG LIST

  • Stay for Real
    Young Galaxy
  • Channel 1 Suite (Tom Tyler Remix)
    The Cinematic Orchestra
  • Heads or Tails
    Winona Forever
  • When I Was A Boy
    Jeff Lynne's ELO
東日本大震災から8年が経とうとしています。
先週に引き続き地震や防災にフォーカスし、
あの悲劇を繰り返さないための鍵を探っていきます。

今回は、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の渡邉英徳先生をお迎えし、
「デジタルアーカイブは防災の未来をどう変える?」というテーマでお届けします。

渡邉先生は、「ナガサキ・アーカイブ」「ヒロシマ・アーカイブ」「東日本大震災アーカイブ」
「沖縄戦デジタルアーカイブ」などの戦争や災害の記録をデジタルアーカイブにし、
多くの方に伝えることをミッションにしています。

デジタルアーカイブは、防災を防ぐためにどのような可能性を持っているのでしょうか?


「忘れない:震災犠牲者の行動記録」というデジタルアーカイブは、
岩手日報社とコラボレーションして2016年に発表。

「岩手県下で津波で亡くなった方が、最後の30分間、地震が起きて津波が到達するまで、
 どのように行動したのかということを岩手日報の記者さんが5年かけて
 コツコツとご遺族に取材をしたんですね。その成果をアニメーションで表現し、
 スマートフォンやPCで見られるようにしました(※「忘れない」「マップ」で検索)」。

津波で亡くなった方の軌跡をデジタルで可視化することにより、
防災や避難のあり方を再考することができます。

「災害が起きた時に、我々はどう行動しなければいけないのかという強いメッセージを、
 亡くなった方々の貴重な足跡から、受け取ることができると思うんです」。

未来への教訓として残しておきたいというミッションが、デジタルアーカイブを通じて形になりました。

「毎年毎年、忘れてはいけないとか忘れるべきではないと言葉で言われてしまうと、
 人はどんどん食傷気味になってしまい、慣れていってしまうんです。それは戦争の記録も同じです」。

視覚的に表現をすることで、見る人が自分で解釈して学びを得て、
防災や戦争に対する意識を持ってもらえる。
それがデジタルアーカイブの力です。

「広島の原爆被害についてのアーカイブは(※「ヒロシマ・アーカイブ」で検索)、
 顔写真が広島の地面の上にたくさん浮かんでいますが、
 広島の原爆の被害を受けた方々が原爆投下当時にどこにいらしたのかを聞いてそこに載せています。
 大きな特徴は、集められているデータのうち40点については、
 広島の地元の広島女学院の生徒たちが被爆者の方々に直にインタビューをして
 集めていったデータなんです。戦争の記憶をどう受け継いでいくのかという点において
 とても重要なことです。デジタル化したコンテンツをただインターネット上で公開するだけではなく、
 それを育てていく過程において若者に参画してもらうことがとても大事です」。

若者たちが戦争体験者に話を聞く中で、戦争についての思いを深め、学んでいくことができる。
その成果が再びデジタルアーカイブの方に反映されて、
アーカイブと地域のコミュニティが両輪になってお互いが育てあっていく。

渡邉先生は、これを防災の未来につながる「記憶のコミュニティ」と称します。

渡邉先生が開発に携わった「記憶の解凍アプリ」は、戦前の白黒写真をAIでカラー化し、
AR(拡張現実)表示するアプリ。
ARビューになっており、その場所とのリンクがされています。

数十年前の写真、出来事が一気に身近になるのがカラー化の不思議な力。
昔の戦争や災害の白黒写真を先端技術も活用してカラー化することにより、
戦争を風化させないための取り組みです。

渡邉先生は、未来の防災の鍵は「自分の地続きと考えること」だとします。

自分の生活圏ではなかったり、過去のことになると、どんなに悲惨な戦争や災害であっても、
ついつい他人事になってしまったり、脳の中で薄れてしまうのが人間というもの。

それをデジタルアーカイブで自分の地続きのことにする。
デジタルアーカイブは、人間が学び、より良い未来をつくるための手段となります。

小川 和也