FUTURISM

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2019.03.24

ゲストは、エッセイスト、編集者の松浦弥太郎さん。

「松浦式!新生活の基本」をテーマにお話伺いました。


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SONG LIST

  • Tic Tac Toc
    Dallas
  • Telephone And Rubber Band
    Penguin Cafe Orchestra
  • The List
    Moonchild
  • こんにちは またあした
    コトリンゴ
新年度を迎える春は、新生活スタートの季節。
新しい環境に振り回されがちな時期だからこそ、“ていねい”な暮らし方について考えたいところ。

エッセイスト・編集者の松浦弥太郎さんは、『暮らしの手帖』編集長を9年間勤め、
「正直、親切、笑顔、今日もていねいに」を信条とし、
暮らしや仕事における楽しさや豊かさ、学びについての執筆や活動を続けています。

松浦さんの書籍のタイトルやWEBメディアのタイトルには“きほん”という言葉が使われています。

“きほん”は、私たちの新生活をどのように変えるのでしょうか。

今週は、松浦さんをゲストにお迎えし、「松浦式 新生活のきほん」についてお伺いします。

「自分が苦手だなあとか、できていないなあと思うからこそ、
 毎日のように自分で指差し確認をしています。正直でいようよ、親切になろうよ、笑顔でいよう、
 物事を今日も丁寧に考えようよと。うっかりするとなかなか自分でできないことなんですよね」。

松浦さんの信条の背景には、そんな思いがあります。

「ぼんやりとした言い方なんですけど、僕の解釈では感謝なんです。いろんなことが起きますよね。
 嬉しいこと、残念なこと、傷つくこと。できるだけいろんなことに感謝をする。
 感謝をしたら、じゃあどうする?というのが僕にとっての“ていねい”。
 今日も“ていねい”にというのは、今日も感謝をしようという意味なんです」。

松浦さんが考える“ていねい”は、感謝に行き着きます。

「何事にも“きほん”があって、でも仕事や暮らしをしていると、概ねのものがアレンジされ、
 “きほん”がおろそかになり、発展したものに触れちゃっているんですよね。
 “きほん”というものを見つめ直した時に心が安心するというか、
 立ち返ることってなんだろうと考えた時、自分が“きほん”を見つけられた時に、
 なんかほっとするんです。自分にとっての“きほん”、
 社会にとっての“きほん”ってなんなんだろうというのは、一つの答えや言葉では言い表せないので、
 それについての意味をいつも考えています」。

“ていねい”や“きほん”に一つの正解はない。
松浦さんのお話から、それらは「心のありよう」であることが伝わってきます。

「特に4月になるとこれからの1年のことを考えますよね。仕事でも暮らしでも食事でも、
 今日のことが何年後、何十年後、未来につながっているとすごく感じるんです。
 今日食べた料理が1年後の自分の健康状態に現れたり、
 今日のコミュニケーションの仕方が何ヶ月後の自分の環境に現れるとか、絶対今日なんですよ。
 今日くらいいいやとか、まあいいやなんでも…ってやっていると、
 それが何年後かの自分に何らかの形で現れるので、未来を考えるのであれば、
 今日であり、今であり、今の瞬間をどうするかという意思決定、選択は大事ですね」。

未来は今とつながっていて、未来は半ば今である。
それを再確認し、未来へと続く今をていねいに生き始めるタイミングとして、
4月はぴったりかもしれません。

そして、テクノロジーには、生活を便利にして余裕を生み出してくれる面と、
変化を加速して慌ただしくさせる面の両面があります。

「時間ができた時に、少し暇する、何もしないという選択肢が大事だなと。
 テクノロジーにコミットする自分と無視する自分のバランス感覚が必要だなと」。

松浦さんは、スマホにも一定時間付き合いながら
毎日、今日1日のテーマを情報カードに万年筆で書き下ろしています。
朝の20〜30分、書くことの体験が強烈なインプットになる。
言語化することで、「安心につながる」という効用もあると松浦さんは考えています。
不安も多い暮らしの中で、思わず新生活のきほんに取り入れたくなる習慣です。

新生活のきほんの鍵は「まずは自分で考える」ことだと言う松浦さん。

「テクノロジーによって便利になることで、自分で考える行為がだんだん減っている気がするんです。
 情報が多く、選ぶ能力が長けていくんですが、うっかりすると
 自分で考える意識がなくなってしまうのではないかという恐怖がわいてきます。
 自分で考えることはとても価値があるし、残された贅沢なのではないかと。
 自分で考えるとたいていのことは答えが出なくて困るんです。
 困った時にどう工夫するか、どう諦めずに取り組むか。未来を考えた時に、
 それくらいは残していきたいなと」。

まずはいったん自分で考えてみる。
ほんのちょっとでも自分で考えることが、「松浦式 新生活のきほん」のきほん。

小川 和也