May 21 2021
無添加の美人干物をご紹介。
今日お話を伺うのは、島根県出雲市にある有限会社渡邉水産の企画宣伝部長 岩田響子さんです。渡邉水産では、山陰沖のお刺身でも食べられる新鮮な魚を使ったミネラル分たっぷりの一夜干しの干物を手作業で作っています。
まずは岩田さんにその干物のこだわりを聞きました。
「渡邊水産では、“うまいをあなたへ。それが私達の誇りです。”という経営理念があります。おいしいものを作りたいということがまず第一にありまして、それがなくなってしまったら自分たちではなくなるというぐらいに、アイデンティティーとして大切にしています。干物は温度を高くして高温で乾燥しますと、乾燥時間が早く仕上がるので時短になり、コストも下げる事ができますが、その際に魚の独特の臭みが出てきてしまいます。お魚の脂は本当はいい脂なんですが、そのようにすると少し酸化してしまいます。その脂は酸化すると体にあまり良くない脂に変化しまうこともあり、そのため私達はやはり時間がかかっても低温でじっくり冷風で乾燥させるという方法を行いたいと思いました。その点については、やはり機械は温度が設定できるため、高い温度にはならずに冷風のままそのまま乾燥作業を行えます。新鮮なお魚でも、その温度変化を起こさないように乾燥できるので、食べる時に独特の生臭が出てきません。いい香りの干物を提供できる、機械干し用の干物部屋があるということに、こだわりがあると思います。」
一定の温度で調整ができる機械干しで安定した味わいを保てるというのが、“美人干物”と名付けられた渡邉水産の干物です。これは、古い、伝統的、色でいえば黒や茶色っぽいといった、今までの干物のイメージを華やかなものにしたいということで、考案されたネーミングだそうです。
「外側を真っ黒になるまで焼かなくても、中まで火が通りやすい干し加減や水分量なので、食感がフワッとジューシーなんです。煮崩れもせず、美人な状態で焼きあがるんですよね。焼く前も姿が綺麗で、干物特有の生臭さは無く香も良いんです。人間も美人もいい香りがしたりしますよね。そもそも渡邉水産の干物が美人だと気づき始めたことと、今の2代目である父が社内の掃除が趣味なんで。もともと新鮮な魚を使っていましたが、社内清掃を徹底することで、作ってる加工場が魚を加工しているのにもかかわらず、磯の香り程度しかしてこないぐらいに、いい香りなんです。日本全国の産地を巡るバイヤーさんがいらっしゃった時も「あれ?ここって干物を扱っている加工場ですよね?」と驚くぐらいに、全く生臭さがありません。衛生管理や掃除を更に徹底するようになったことで、商品、切り口もやはりさらに綺麗になったという感じです。」
ここからはおすすめの美人干物について伺いました。一つめは、まあなごです。
「通常、あなごと聞くとウナギの代わりとというか、二番手で、煮アナゴでタレをつけてあるイメージがあるかと思います。島根県はあなごのの産地で近くで獲れるということもあり移動距離も短いので、鮮度が良いままで加工場まで持ってこれるんです。独特な臭みが出る前に処理ができてしまうので、渡邉水産のアナゴの一夜干しをを食べた方から、「結構苦手だったのよねアナゴって。でも食べて驚いたのが、今まで食べたものと全然印象が違って身がすごくふっくらでブリンブリンの食感で、生臭さの独特の臭いがないっていうのに驚いた!」と言われます。本当臭みがなくふんわりしていて、タレのように濃い味付けでなく、塩だけでもあなごの美味しさを引き出せるんです。アナゴが自体の食感がいいこともありますが、山陰沖にはそもそもカラヌスという全身脂でできてるようなプランクトンがいまして、それを食べている山陰沖の魚は脂質が上がるんです。ですから身はとてもジューシーでふっくらしていて、ブリンブリンの食感で臭みがありません。こちら、おすすめです。」
さらに、アクアパッツァにおすすめの美人干物もあります。
「れんこ鯛という桜色の鯛が獲れるんですが、この鯛の丸干しを作っています。身がとてもふんわりしてて、優しい白身の味わいのなんですが、これがアクアパッツァにとても合います。もちろんそのまま食べてもおいしいくいただけますが、このれんこ鯛をアクアパッツァは、フライパンでとても簡単に調理できます。味付け無しでも美味しくいただきます。アサリから出た旨味と、このれんこ鯛から出てきた塩気と旨味、そして季節の野菜を入れることで野菜から出た旨味。この3種類の旨味が混ざり合うことで、感動するほど美味しいお出汁だとれます。干物は内臓や鱗は取り除いてありますし、乾燥することで旨味も増しているので、しっかりとした味付けが引き出されます。色々な調味料で味付けすることなく、塩と醤油など基本的な家にどこにでもあるような調味料で薄く軽く味付をすることだけで美味しいアクアパッツアが出来上がります。味に手間があまりかからず、干物ということで水分が抜いてある分早く火が通りますし、とにかく手間がかかりません。ですので魚料理をする時にはもってこいで、意外とパーティ料理など見栄えがいい料理に変身してしまうことも出来るんです。」