Oct 1 2021
熊本・福岡の竹を使ったヤマチクの国産箸
今日は、熊本県玉名郡南関町で竹の箸だけを58年間作り続けているお箸メーカー、株式会社ヤマチクの専務取締役である山﨑彰悟さんにお話を伺います。
株式会社ヤマチクでは、熊本県と福岡県の県境の山から切り出した竹を使って日本で唯一、純国産の天然竹からお箸を作っています。
まずは、どうして竹のお箸を作っているのかをお聞きしました。
ワクワクワークのお料理オンラインレッスン、この時期はどんなものがあるのでしょうか?
「お箸という感じには竹冠が付いていますよね。日本でのお箸の歴史は7世紀頃から始まるのですが、そのルーツはこの漢字に表れているように、竹がルーツになります。しかし現状は、プラスチックのお箸がなくなっていく中でやはり輸入木材ということで、日本の箸の原点である竹の箸は、徐々に日本の食卓から姿を消しつつあるんです。私達はお箸の原点を未来に繋ぐために、竹っていう素材にこだわってお箸作りを続けている会社になります。お箸の材料に使っている竹ですが、竹はとても成長が早く、竹の子が出てわずか3ヶ月で18メートルまで伸びる植物なんです。そこから二、三年経つと、私達が作るお箸の材料に使ようになります。これだけ成長が早いので、世界的にも持続可能な資源として注目されています。一方で、地方でしたり僕らの地元などでは、竹を使ったもの作りが無かったり、あるいは竹を切る人がいなくなり、成長スピードに追いつかずに山が荒れてしまったりといったことも課題になっています。そこで僕たちはその地域資源を有効活用しながらもの作りをし、携わる人たちの仕事も未来につないでいくことが大事な使命になってます。」
竹で作る箸はプラスチックや他の木材で作ったものに比べて、軽さや箸先の細さがあったり、物をつまみやすく、まぜたり、ほぐしたりなど、色々な所作に順応するしなりがあるといった、竹ならではの特徴があります。 そんな竹のお箸について、山﨑さんはこんなこともお話してくれました。
「お箸は100日目のお食い初めから、あまり縁起のいい話ではないですが、亡くなった後にお骨を拾うまで、生涯、生まれてから亡くなるまで、生きていく上で欠かせない道具なんです。1日3食、生きている間は必ずお箸を使うタイミングが私たちにはあると思います。逆に身近だからこそ、なかなかを気を遣わないという方も多いと思います。ですが、お箸は手と口の様な、人間の敏感な部分に触れる道具なんです。竹の箸の特徴のひとつは軽量であるということなんですが、お箸はそもそも小さくて軽いもなんですが、特徴として軽いとはどういうことかと思われる方もいらっしゃると思いますが、実際に持っていただくと明らかに驚かれる方もいらっしゃるぐらいに本当に軽いんです。その軽さがあるからこそ、お箸が動かしやすく、持ち方が綺麗になったり、あるいは先端の箸先が細いために食べ物が扱いやすくなり、つまみやすいほぐしやすいんです。さらにそれを口に入れると、口にあたる表面積が小さいので食べ物の邪魔をせずに、異物感を感じません。またつるつるに磨いてるので、口に入れて引き抜くときの抜け感がとてもいいんです。これは本当に細かい差なんですが、今まで感じてなかった無意識のストレスとお別れできるぐらいに、使い心地が違います。」
ヤマチクさんでは、自社ブランド『okaeri』もラインナップしています。こちらのシリーズは、竹のお箸にもう一度戻ってきて欲しい、また「おかえり」という家族の中で日常飛び交う優しい言葉から、子どもから大人まで家族みんなで使えるサイズバリエーションも豊富な箸を取り揃えています。
その『okaeri』シリーズには、菜箸もあるんです。
「作るためのもの、盛りつけるためのもの、取り分けるためのもの、それぞれの用途に合わせて形を変えた3点セットの菜箸になっています。これさえあれば、お箸を使う料理はこの1セットで賄えてしまうことができます。もともと菜箸という言葉そのものが、お料理に使うお箸の総称なんです。料理と一口に言っても、炒めたり、茹でたり揚げたり、あるいはできたお料理を盛り付けたり、あるいはお弁当を詰めたり、あるいはお皿に盛り付けたお料理をみんなで取り分けたりと様々なシーンがあるんです。様々なシーンがあるからこそ、やはりそれに応じた形があってもいいのではないかと、『okaeriの菜箸』を発売しました。様々なシーンに合わせて使いやすいような形状を模索しいます。例えば、炒めたり茹でたりするときに力が伝わりやすいように箸先太く、あるいは菜箸の先が丸くなっているのは、テフロンのフライパンを使って炒めるときにフライパンを傷つけないとように、盛り付ける際には繊細な作業ができるように箸先を細く四角に仕上げたり、取り分ける菜箸は上下両側を使えるんですが、どちらを使ったかわかるようにラインを1本線、2本線でそれぞれの側に印をつけたり、またボディーが三角になってるので、お皿のふちにおいても転がりづらくなっていたりなど、本当に細かいところでたくさん工夫をこらしています。ご家庭で使われる方もご満足いただけるように、当然プロの料理人の方にもご満足していただけるように考えて作りました。プレゼントとしても、とても喜んで使っていただいています。ご家庭でもプロの料理人にも使っていただける三点セットの菜箸です。」
育ちが早い竹は昔から成長のシンボルとして親しまれてきたので、人生の節目の贈り物としておすすめだそうです。
最後に、山﨑さんからお箸を作る時に込めている思いも教えてくれました。
「元々そのお箸は、こちら側と向こう側を繋ぐということが語源になります。例えばお箸を使うお食事の場面で言うならば、それはやはり命をいただいているということになります。お膳に添える時、お箸が人と食べ物の間にあるのは、それらを頂くことに対する感謝の表れでもあるんです。生きていくうえで命をいただいているという行為に対して、お箸が何かしらその橋渡しの役割をしているということは、僕らとしてももの作りをするときにこれはただのカトラリーとしての役割だけではなく、精神文化にも根付いたものがあるということをとても感じています。」