Oct 8 2021
八丈島の自然放牧・ジャージー牛のミルク使用のチーズ『エンケルとハレ』
今日は東京都の離島の1つ、八丈島でチーズを作る『エンケルとハレ』のチーズ職人、魚谷孝之さんにお話を伺います。
この『エンケルとハレ』の“エンケル”は、スウェーデン語で“普通でちょうどいい”というような意味があるそうで、また日本語の“特別な日”という意味の“ハレ”を合わせて『エンケルとハレ』という屋号にしたそうです。
まずは、魚谷さんがどうして八丈島でチーズ作りを始めたのかを伺いました。
「八丈島で自然放牧をしているジャージー牛のミルクを使い、イタリア系のチーズを作っています。きっかけは旅行で、その時はじめて八丈島を知りました。当時は何も下調べをせずに行ったのですが、旅行してる最中に島に牛がいることや、乳製品を作っていることを知って、実際に食べてみたところ島の味がしなかったんです。その島の味がしないことを不思議に思いました。八丈島に来る前も千葉でチーズを作っていたんです。そのときに作っていたチーズはその土地の味がしたというか、色々なチーズ工房があると思うんですが、それぞれ違う風味を持っていたという感覚があったので、島独自の味がするのではないかと思ったんです。しかし実際そうではありませんでした。これは何かもっと伸びしろがありそうだと、正直に思いました。」
『エンケルとハレ』のチーズの特徴、教えてもらいました。
「一つはジャージー牛100%のミルクで作っています。そしてそのミルクを生み出す牛は自然放牧されていることが大きな特徴の一つです。そのため味は毎日違います。スタッフが島の中で草を集めてくるんですが、その草も日々変わってくるので、そういった意味で島の味が出てるかなとは思います。乳牛の割合としては、皆さんがよく知ってる白と黒のホルスタイン種は、日本では乳牛の中の99%を占めています。そして1%にいかないぐらいがジャージー種なんです。そう考えるだけでもジャージーが少ないことがわかっていただけると思いますが、自然放牧しているジャージー種はさらに少ないので、そこが特徴的ではあると思います。ジャージーの特徴は脂肪分が高いんです。甘味が強かったり、旨味が強かったりします。」
『エンケルとハレ』にはどんなチーズがあるんでしょうか?
「『めならべ』という名前のモッツァレラ、『ラシカルガイプ』というリコッタ、『マク』というマスカルポーネ、『ルルン』というブッラータチーズがございます。作ってるチーズ全てに言えるのが、フルーツとの相性がとてもいいので、旬のフルーツと合わせるのがオススメです。その中でも、一番のおすすめはリコッタチーズです。八丈島では島で生産されるのフルーツがたくさんあるわけではなく、今はフルーツがあまり無いシーズンですので、家ではフルーツと合わせるよりもそのまま食べてしまっています。より美味しく食べる方法としては、少し常温に戻してからチーズを食べていただけると、香りが開いてくるので、より島の味、島の甘さといった感覚がわかっていただけると思います。どうしても冷たい状態ですと、舌に届く味覚の部分が甘さやミルクの豊かな感じが、鈍く伝わってしまいます。常温に戻すことで、その部分がほぐれてくるというか、開いてくる感じがあるので、よりミルク的な感覚を正確に味わっていただけると思います。2時間前程度常温に戻していただいて、フルーツと一緒に、またはそのまま食べていただくと、美味しくいただけると思います。」
魚谷さん、最後にこんなお話をしてくれました。
「チーズというものは、レシピ化するのが難しいんです。八丈島の場合は、自然放牧をしていて、ポジティブな意味で毎日乳質が変わるので、職人の経験値も必要になってきます。その日のミルクに合わせたアプローチを職人が決めていく作業をしているんですが、それを1人でやっています。もちろん作ることができる数も限られてきますが、1個1個丁寧に手作りしているチーズなんです。牛乳の味をチェックをして、発酵時間の長さや、酵素の量を増やしたり減らしたりと、毎日変わってきます。そういったことも楽しんでいます。トライ&エラーじゃないですが、アプローチが違ったと思ったら、また違うアプローチを組み立てていきます。もちろん基礎があってこそですが、常に最後の1ピースを自分で作ってるって感じですね。経験やその日の感覚で最善のピースを作ります。うまくできるときもあれば、少し違ったなといったこともあったりしますね。」