Oct. 7 2022
『veggy』編集長・吉良さおりさんの最新トピック!
今回お話を伺うのは、日本初のベジタリアンライフスタイル雑誌 『veggy』の編集長吉良さおりさんです。
現在、発売中の『veggy』最新号のテーマは【精進料理】。今回の特集がなぜ【精進料理】だったのかをお聞きしました。
「精進料理の特集は、実は創刊当時に3号目とか5号目あたりに特集を組んだことがあったんですけれど、創刊して今年で15年目になりますがかなり前の特集なので、改めて精進料理って特集してみようかなと思いました。年末年始も近くなる時期なので、精進料理の良さであったり、伝統的な精進料理から漠然と割と離れてるいて、日本古来の伝統的な文化であったと思いますが、そこから再確認する意味でも特集してみようと思いました。精進料理には色々と規定があるんですが、そもそもは精進料理はお坊さんがお寺で修行するときに精進のために毎日食べていた食事です。ちろん今もお坊さんは毎日精進料理を食べているはずです。特に禅宗では、精進料理を修行の時に食べることが多いと思います。宗派にもよるようですが、今はお寺の中に精進料理の専門の方がいて、今回の特集の巻頭でレシピをお願いした藤井まりさんは、旦那様が元々お寺で精進料理を作る役割をされてた方なんです。その流れで旦那さんが亡くなった後にその役割を受け継いだかたちで、精進料理をずっと教えるようになった方なんです。」
その季節にあるものを使うのも【精進料理】のポイントです。
「季節の食材は、3、4ヶ月に渡って同じ野菜がとれたりしますよね。昔の人はそれを毎日食べなきゃいけませんでした。例えば茄子がとれる時期でしたら、毎日3ヶ月ぐらい茄子があるわけです。それをいかに毎日違う形で美味しく食べるかということを昔の人たちは多分すごく上手にできていったんです。精進料理の基本にはそれが残っていて、自然界であるシーズンしか採れないものを毎日違う形でいろいろ工夫して、上手に飽きないよういただくという思いが精進料理にはあり、それがとても面白いんです。しかも結構シンプルな食材で、調味料とてもシンプルで、基本的にはその五味っていうものをワンプレート、1食に取り入れなさいというのが基本にあり、それは酸味であったり塩味、苦味や甘みや辛味、この五味を取り入れることで適度に味のハーモニーが生まれるので飽きません。食材はシンプルですが、質素にならずに毎日楽しめる食事が五味。そして五色で色も楽しみましょうという基本姿勢も持っているんです。」
吉良さんが大切にしているのは、お盆の時期に行う送り火です。
「お盆は早盆と言って、東京では7月になります。私は九州出身ですが、九州では8月に行われていました。先祖を迎える目印としてお盆の最初の夕方に玄関で、「帰ってきてね」という合図として火を焚きます。お盆が終わる日の夕方に「また来年ね」と言った意味を込め再度火を焚くのですが、麻殻で焚くんです。東京でも私の住んでる近所の高齢者の方はやっぱりされています。お盆の時期になると焙烙という迎え火・送り火用の陶器の素焼きの丸い器があるんですけど、それを買い、お盆の飾りなども買ってお盆をされています。自然崇拝がベースになって、古い風習として伝わってるような習わしですね。」
新しい文化も入ってくる世の中で、昔ながらの風習を大切にすることについて、吉良さんに聞きました。
「若いときに海外で暮らした経験があり、海外にいると自分のアイデンティティって何だろうと考える機会が多く、例えば自己紹介するときもそうですし、何か日本文化について外国の人たちから聞かれたときもそうですが、本当にそのときに自分自身にあまり知識がなくうまく答えられなかった経験がありました。若かったということもありますが、語学のレッスンするときにやはり母国のことについてディスカッションの時に話すことが多かったんです。そういうときにうまく表現できなかったこともあり、子供たちにはそういった日本文化を幼い時から身につけ知ってほしいと思っています。現代は、いつも身の回りに日本の伝統風習の行事があるわけではないので、多分親が伝えていかないと子供も知らないまま大人になってしまうんです。日本の伝統文化はこういうものなんだよと親が教えていけば、伝統文化についてやその時季など、肌感覚で身に付いてくれれば外に行ったときにもきっと日本のこともちゃんと伝えられるんだろうなと思いました。やはり伝統的な文化の中に自分のアイデンティティも絶対あると思いますす、そういったものを後世にも繋げていきたいなとは思います。」