Dec. 16 2022
毎週土曜日だけオープン、西荻窪の食堂『ごゆるり』
今日は、東京・西荻窪にある食堂『ごゆるり』をご紹介します。
お話を伺うのは『ごゆるり』のRisaさんです。
このお店は、西荻窪にある『暮らしのいろいろ丁寧に』と言う場所で
土曜日だけにオープンしている完全予約制のお店で、予約をしたお客さんは事前にアンケートに答え、好きな食べ物や好きな色、最近の調子などを回答します。その回答をもとに、Risaさんが、その日にくるお客さんの要素が詰まった“一生に一度のひとさら”を作るというお店です。
Risaさんはどうして、このコンセプトを思いついたのでしょうか?
「1人1人が自分が愛されてると感じて、心に少し余裕ができるような、あの時間を作りたいと思ったことが背景にあります。きっかけとしては、私は元々会社員として、大手の会社で営業職をしていました。当時はかなりバリバリ働いてて、毎日、とても充実していたのですが、プレッシャーなどでどんどん自分の気持ちに余裕がなくなってしまい、周囲の人のことや、例えば環境のことなども何も考えられなくなってしまったり、ニュースを聞く余裕もなくなっていました。その余裕がないときに自分に対してベクトルが向き続けていると、どんどんと気持ちが辛くなっていってしまいました。ですがそんな忙しい中でも、休日の少しゆとりのある日に、友達が家に来てご飯を作る機会があり、その時に友達が好きなものなどを聞いて、何作ったら喜んでくれるのかなどを考えてた時、自分が幸せを感じてるのを気づいたんです。しかし人のことを考えるためには、まず自分の心に余裕がないと難しいですから、忙しい人たちが、まず自分の心に余裕を持てたり、自分に優しくなれる時間を作りたいと思い、この『ごゆるり』っていう食堂を始めました。」
今までどんなひとさらが生まれたのでしょうか?
「ある日、その日来るお客さんの半数ぐらいに柿が好きなお客様がいらっしゃったので、柿を使ったお料理を二つ入れようと思い、そのうちの一つが、≪柿とかぼちゃのポタージュ≫だでした。そこには【柿好きな皆さん】の要素と【かぼちゃが好きなお客さん】、【ポタージュが好きなお客さん】、それと【ほっこり温まるものが食べたいってお客さん】、【家ではなかなか作れないものが食べたいってお客さん】というみなさんの要素を盛りんだ結果、そのポタージュが誕生しました。その日はそのポタージュが一番人気で、みなさんから本当に美味しいと言っていただきました。ごゆるりのお料理一つ一つは、みなさんの共通要素を探しつつ、その日に来る1人1人のお客様がいたからこそ入れられた要素が組み合わさってできるので、その日に来てくれるお客様1人1人がいたからこそのお皿になっています。それぞれにその人がいてくれたからこそ救われたりしてる人が絶対にいますが、助けられたりしてる人といても、忙しすぎたり、毎日追われるように生きていて、ずっとノンストップで動いていないといけないような空気がある中では、何か自分が思うようにいかないこともありますし、自分のいる意味なども疑ってしまうような場面もあると思います。それでもやはり1人1人にその人はかけがえのない存在であって、生きてるだけで意味があると思えるから。そういうことを感じられて、ハッピーな人を増やしたいと思っています。」
Risaさんは、“こんなにご飯を食べて幸せを感じたのは初めてかもしれない”と、たくさんの嬉しい感想を頂くそうです。その中で、忘れられないエピソードがあると言います。
「そのアンケートの中で、最近の調子や悩みを差し支えなければ書いてくださいといった質問があり、そこで知るのは、皆さん日々忙しく疲れていたり、悩んでいることを共有してくださるお客様も結構いらっしゃるんですが、そういう人たちが何かとても安心して笑顔になってくれるような様子を見ていて、何か私自身がそういうお客さんたちからまた元気をもらえる気がします。私は相手を喜ばせることが好きなのですが、本当にごゆるりのお客さんたちに私はとても幸せにしてもらっていて。お客様の皆様に「ありがとうございました」、「すごい美味しかった」、「本当に幸せ」ということ言っていただけるので、その日は私が一番幸せになっていると思います。『ごゆるり』でそうやって皆さん1人1人が愛されてると感じて、その人の心に余裕ができて、その先にその人がさらに誰かに優しくなれたりしたら、優しくなれたその人自身が幸せになれると思っています。ごゆるりでのエピソードで、家族でいらっしゃたお客様がいて、そのご家族が最後にお皿の片付けを手伝ってくれました。その時とても感動して、お客様なのに私のことを思って片付けを手伝ってくれたんです。ごゆるりで片付けを手伝って欲しいとは一切思っていませんが、自分の心に余裕ができた先に、誰かに優しくなれるということをそのお客様が体現してくれた、本当に嬉しかったエピソードです。」
Risaさんは、食堂と並行して『りぶごゆるり』というオンラインで献立メンタープログラムも行っています。1週間分のゴハン、6~10品を1時間半から3時間でまとめて作れるように献立、レシピ、買うものを毎週お届けするパーソナルプログラムです。
食堂で食べる『ごゆるり』とおうちで食べる『りぶごるゆり』。Risaさんにとって食べることってどんなことなのか、最後に聞きました。
「生きる上で必要な栄養を摂取するという側面はもちろんあると思いますが、それ以上の意味と価値があるなと思っています。人との繋がりを感じる機会。この食材を作ってくれた人がいて、届けてくれた人がいて、ご飯を作ってもらう場合であればご飯を自分に作ってくれる人、逆にご飯を食べてくれる人がいてなど、自分で1人で生きているのではないと感じる場なのではないかと思っています。自分で作って自分で食べてたとしても、あなたが何を食べているんだろうと考えている人が離れたところにいるかもしれませんし、逆にあの人は何を食べてるのだろうと想像する機会かもしれません。1人ではないとは、こう感じる瞬間なのではないかなと思います。」