今回は、東京の八王子市にある木工房「三澤」の木工作家である三澤正孝さんに、東京の木材を使って作る『東京曲げわっぱ』についてお話を伺いました。
曲げわっぱは、秋田県大館市で江戸時代から続く伝統工芸品で、特に秋田のイメージが強いですが、東京でも独自の曲げわっぱが作られています。東京の曲げわっぱは、多摩産材認証材を使用し、薄く軽量でありながら強度を保つ必要があるため、木工技術の集大成といえる難しい挑戦。東京の杉は曲げるのが難しく、ヒノキを使用して試作した結果、白い肌の美しい曲げわっぱが完成したそうです。東京の山々は第二次世界大戦中に禿山になり、戦後の住宅需要に応えるためにスギやヒノキが植えられましたが、これらの木々はまだ樹齢50年ほどの若い木で、繊細な工芸品にはやや適していない部分もあるそうですが、その若い木を使って新しい技術を試みられているそうです。
三澤さんは曲げわっぱ作りに関して、修行を受けたわけではなく、YouTubeやインスタグラム、インターネットを参考にして形にしたそうです。木を薄く曲げるのは非常に難しく、特に割れないようにするのが苦労されたそうで、板を薄くし、2週間水に浸けてからアイロンとアルミホイルを使って蒸気と熱で曲げ、乾燥させて形を保つ曲げわっぱを作り上げました。
東京曲げわっぱの蓋には、八王子の伝統工芸である型染めのデザインが施されています。インスタグラムを通じて型染め職人の山崎香織さんから提案を受け、八王子の木工と型染めのコラボレーションが実現。デザインには、東京都のシンボルであるイチョウや、八王子の花として知られるヤマユリ、そして桜が用いられています。これらは職人が一点一点手染めするため、すべてが唯一無二のデザインです。
8月18日には、八王子の高校生アーティストとのコラボ商品の販売がスタートしました。自閉症スペクトラムを持ちながらも、学校生活とアーティスト活動を両立している高校生アーティストで、三澤さんがインスタグラムで作品を見たのがきっかけで、東京曲げわっぱの蓋に彼女のボールペン画を施すコラボが実現しました。モチーフには桜や高尾山、シルクで有名な八王子の繭玉が選ばれています。彼女が手書きで描く一発勝負のデザインは、唯一無二の作品として仕上がっています。