今回はスイートな野菜を栽培している、株式会社 増田採種場・専務の増田秀美さんにお話を伺いました。
“増田採種場”は、野菜の種を開発する会社で、特にブロッコリーやキャベツなどアブラナ科の品種改良を専門とし、今年で創業100年を迎えました。開発した品種が市場に出回る一方で、新しい野菜の栽培や販売には課題も多く、生産者やバイヤーが対応に苦慮することもあります。そのため、増田採種場では「生産事業部」を設け、開発した野菜の栽培ノウハウを蓄積し、大量生産にも取り組んでいます。これにより、市場での認知を広げるとともに、生産者が安心して栽培できる環境を整えているそうです。
増田採種場はアブラナ科野菜に特化し、「自然って美味しいね」という理念のもと、自然を大切にした品種開発を行っています。特に活躍するのが蜂たち。遺伝子組み換えをせず、蜂による交配やピンセットを使った手交配で、新しい品種を一つひとつ丁寧に作り上げています。また、生産事業を通じて消費者の声を直接反映できることも強みです。しかし、品種開発には約10年もの歳月がかかるため、日本の未来や食のニーズを想像しながら、長期的な視点で取り組んでおり、自然と向き合いながら、新しい野菜を生み出すことに大きな醍醐味を感じているそうです。
消費者の声により開発された“スイートブロッコリー”。本来の品種名は「えのきブロッコリー」です。その名の通り、えのき茸のように茎をパスッと切るだけで、小さな房が均一にほぐれる特長があります。ブロッコリーを切る手間を減らしたいという消費者の声をもとに開発され、時短調理が可能になりました。さらに、筋っぽさが少なく、甘みが強い軸と小さな花蕾にこだわり、赤ちゃんでも食べやすい工夫をしています。
スイートブロッコリーは、離乳食にも取り入れやすく、素材の味を大切にしたブロッコリーです。離乳食本にも多く登場するブロッコリーですが、この品種は特に食べやすく、小さな子供たちにも喜ばれています。また、サステナブルな取り組みの一環として、「スイートブロッコリーの子どもたち」と名付けた小さな側枝も販売。これは通常のブロッコリーの脇にできる小さな房で、カット不要の10センチほどのサイズ。そのままボイルするだけで食べられ、見た目もかわいらしく、食卓を彩ります。畑で育ったものを無駄なく消費者に届けるため、増田採種場は今後もさまざまな商品開発を進めていくそうです。