陶芸家・鴨下知美さんが手掛けるモダン金継ぎ。
今日は、陶芸家の鴨下知美さんに“金継ぎ”についてお話を伺います。
“金継ぎ”は、割れてしまったり欠けてしまったり、ヒビなどが入った陶器の破損部分を漆によって接着して、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法のことです。
この時期、ちょっと早めに大掃除したり、年末に食器棚を整理した時に、この器欠けてるなーとか、ヒビ入っているなぁと言う人もいるかもしれません。今回紹介する鴨下さんの技法は、昔からあるものとはちょっと違う“現代風金継ぎ”なんです。
「陶芸をしていて、どうしても釜の中で作品を焼いたり制作中に壊れたり傷がついたものがでてくるんですけど、その傷ついた器を活かしたいと思って。最初の土のところから乾燥させて焼いてせっかくできたものが傷物だからとダメにしてしまうことができなくて、それをためて何かできたらと思ったのがきっかけです。そもそも金継ぎが日本の伝統的な修復の技法で、漆の木からとれる本漆と純金を使って傷を直すという古くからある修復の技法です。金継ぎという事自体は陶芸を始めたことから知っていたんですが、私自身が漆にアレルギーがありまして漆を使ってかぶれてしまったことがあったので、どうしても本漆を使った金継ぎの作業ができなという葛藤がありました。ただ割れた器自体も何らかの方法で直したいと思っていたところに、10年前ぐらいに新しい素材の現代風金継ぎといって、パテと樹脂系の漆の代用の新漆というものと真鍮の粉で直す技法に出会いました。今はその技法で制作をしています。」
【モダン金継ぎ】の技法で制作されている鴨下さんですが、金継ぎの技法の中には、昔から【呼び継ぎ】というのもあります。
「その時から“呼び続ぎ”といって、割れてしまった器を同じような他の方法で補う技法もあったんですが、そのように器をとても大事にするという心が日本では伝えられてきています。日本の金継ぎの特徴が傷をなくしてしまう、見えなくしてしてしまうのではなく、あえて傷の部分に金を入れることによってその器をより愛することができるというのが金継ぎです。その考え方が世界的にも注目をされていると思います。海外ですとアメリカやインドにいったんですが、海外の修復技法が見えなくするということが基本です。しかしそこに金を入れることに興味を持ってくださります。金継ぎにも言えることなんですが、割れてしまっていること、傷ついてしまっていること、完全じゃないことをまた愛おしいと思うというこれは、日本の独自の考え方なんですがそこに私も共感しているんです。やっぱりコンプレックスもそうですが、傷のことはマイナスに捉えちゃいますが、金継ぎのように逆にそこに金をいれてそこを目立たせるということが、本当に唯一無二というかオンリーワンのことなので共感できる点ですね。」
金継ぎは海外でも“KINTSUGI”と言われているそうなんです。ワークショップでは、どんな作品が生まれたんでしょうか?
「去年行ったインドでは、女性がワークショップに沢山参加してくださりました。ガラスの大きな花瓶が割れてしまい、とても大切にされていたそうなんです。それを私が持って行った骨董やガラスの破片をもともとの花瓶につけて、まったく新しい作品として制作していて、それを楽しんでくれていました。それが印象的でした。自分の手を加えてそこで直すという、自分の手を加えることが割れてしまったものに対してより愛着がわきますよね。この間は、サンフランシスコのワークショップで、お母様が大事にしていたピッチャーが割れてしまったということで参加された方がいらっしゃいました。そのピッチャーに自分で新たに選んだ破片をつけて、元通りというか新しい作品にしたんですが、もともと割れてしまったものにさらに自分の思いや作業を足したことで、より思い出も加わって大切なものになったと大事そうに持って帰って下さって、嬉しかったっです。」
鴨下さんは、最後にこんなお話もしてくれました。
「日本では器を扱っている方や使っている方は、“器を育てる”という言い方をすると思うんです。日々使っていて風合いが増したりすることを“器を育てる”と。その育てている器が、大切に使っていてもどうしても口が欠けてしまうということもあります。育てていく過程で傷ついてしまったものを自分の手で直して使い続けていくのが、金継ぎの身近な良い点だと思います。壊れたものを直して、それがまた新たなん作品になるということをしてくなかで、壊れてしまったからこそ次の作品ができるということもあります。陶器だけではなく壊れてしまったこと自体はとても悲しくて辛いことなんですが、それがあったからこそ、次により見えることも作品の制作を通して思いますね。」