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岩手県陸前高田の復興缶詰『生さば水煮缶』
今回は、岩手県陸前高田市にある、株式会社タイム缶詰の代表である吉田和生さんにお話を伺います。
明日3/11で、東日本大震災から12年。タイム缶詰も震災当時は大きな被害を受けた企業の1社になります。
まずは、タイム缶詰がどんな会社なのかを聞きました。
「元々は2005年に陸前高田海岸線で創業した工場です。震災時に全損で流され、2011年10月に現在の所在地である矢作町という、山手の方の倉庫を改修し、製造を再開した会社です。11人という本当に少ない人数で、手作りの缶詰を無添加で作っている会社です。基本的には、サバやイワシなどを切って、それを手で缶に詰めていきます。特にイワシなどは花が咲いたように詰まっていることで、【菊詰め】とも呼ばれています。ですので従業員にも、うちの缶詰買ってくれた人が開けたときに「綺麗だね」と言われるように作ろと、本当に毎日のように話しています。またやはり地元の三陸の原料や、同じ陸前高田で製造再開した八木沢商店さんという奇跡の醤と言われている醤油や味噌の復活をした有名な会社も悪りますので、その調味料を使用するなどして製造の方をしています。国産原料で添加物を使っていない調味料に、特にこだわって製造しています。」
吉田さんは、震災当時はオイシックス・ラ・大地に勤めていました。水産物や畜産物の仕入れを担当していた吉田さんは、タイム缶詰のツナ缶を委託していたことから震災前から陸前高田によく訪れていたそうです。震災が起きてからは、1カ月のほとんどを三陸でボランティア、炊き出しをしながら過ごし、“震災復興大臣”と呼ばれていたと言います。その中で、2020年の10月にタイム缶詰で働いてほしいという依頼を受け、現在は代表を務めています。
震災当時は、ほとんどを三陸で過ごしてた吉田さん、その時の様子をお話してくれました。
「当時はそれこそ岩手から福島あたりまでずっと車で移動してたりしてましたが、殺伐としていて物が壊れ、自衛隊の車がたくさんいました。タイム缶詰は工場では流された人はいなかったんですが、その後自宅に戻った後に避難中にやはり何人かは犠牲になってしまったと聞いてます。タイム缶詰は震災があった2011年の3月から約半年後、2011年の10月に山側の倉庫で一部生産を再開することができました。ただなかなか売り上げの方は順調には戻らず、震災前の水準に戻るまでには、おおよそ8年程かかってしまいました。手作りで作る商品添加物を使わない商品というものは、原料はごまかしが利かないんです。ですので地元で鮮度の良い美味しい魚を仕入れているなど、そういった事を徐々に知ってもらい、「タイム缶詰丁寧な仕事してるね。」「美味しい缶詰だね。」とわかっていただく。ウルトラCはなく、コツコツとやってきた結果だとは思います。サバ缶ブームと言われた時期もありますが、サバ缶ブームは一時的ではなくずっと定着はしています。何かブームに乗って物を売るというよりも、しっかりしたもの、ちゃんとしたものをやはり製造し続けることが、一番大事だと思っています。」
震災前の水準に戻ったというタイム缶詰で、今イチオシの缶詰を聞きました。
「三陸では今年はサバがあまり取れないために、製造数が非常に少なかったんですが、水揚げされたサバをその日のうちに缶詰まで作ってしまう生サバ缶という製品があります。ピンク色で柔らかみがあり、サバの旨みや甘みが感じる缶詰なので、そのまま食べていただくのが一番いいとは思います。缶詰は汁の中にだしが出てるので、それをそのまま鍋に入れ、サバ缶に豆腐とネギを入れるなど、湯豆腐的な感覚でサバ缶を食べるのが私は大好きです。缶詰屋冥利に尽きる味です。ですので、自分が食べて美味しくないと悲しくなってしまいますし、やはり美味しいなと思って食べることが一番です。周りのスタッフからは、最初から製造している製品であるツナ缶もちゃんと宣伝してほしいとも言われています。タイム缶詰が一番最初に作った缶詰が、気仙沼で水揚げされるメバチマグロという高級マグロを使ったツナ缶をずっと作り続けています。普通はビンチョウマグロやキハダマグロというマグロを使用しますが、それと比べるとメバチマグロはマグロの味がちゃんとするマグロなので、シンプルな味付けで非常に美味しい缶詰ができます。これを食べると今まで食べてたツナ缶は何だったんだろう、マグロの味がすると言っていただいてます。」
春からおススメのこんな缶詰も!
「陸前高田の広田湾は、3年連続豊洲市場で一番いい評価をいただいた牡蠣の産地でして、そこの牡蠣の『番屋風蒸し焼き水煮缶』は、殻付きのカキを自分の工場で蒸し上げてから缶詰にするという独自の製法で作った牡蠣の水煮缶です。漁師と約2年いろいろと話しながら、一般的な冷凍の牡蠣を使う、次に漁師さんが向いた生の牡蠣を使うなど、陸前高田の名物作ろうと試行錯誤してきた中で、ある時やはり漁師が番屋で食べてるような蒸し牡蠣のような缶詰を作りたいという話になりました。その時ふと試しに家で殻付き牡蠣を蒸したところ、これは缶詰なので最後に加熱しますので理屈はわからないんですが、牡蠣の風味がしっかり残るんです。牡蠣の香りを楽しんでいただきたいので、熱々でなくても良いので湯煎で2分程度軽く温めていただき缶を開けていただくと、磯の香りが立ち上ります。牡蠣の方の缶詰は、春秋といって4月5月6月ぐらいが牡蠣の身入りが一番良くなるんです。ですので、4月になって一番美味しい牡蠣が獲れるのを待って、そこから製造再開しようと思ってます。」