2012年08月19日
J-WAVE PLUS HOW TO BE A LEADER 〜指揮官の条件〜
今夜のJ-WAVE PLUSは、GAKU-MCのナビゲートで
サッカーの監督、“指揮官”に注目!
『HOW TO BE A LEADER 〜指揮官の条件〜』をお送りしました。
日本代表監督はもちろん、Jリーグのチームで監督として指揮をとるために
必要な資格、通称“S級ライセンス”を取得したばかりの元日本代表、
名波浩さんのライセンス取得までの道のり・・・
番組では時間の関係で割愛した部分も多かったので、ここでもう少しご紹介します。
日本サッカー協会が公認する指導者ライセンスは、D級から始まり、
C級、B級、A級とあって、最高位がS級。多くのサッカー選手は将来を見据え、
現役時代からこのライセンス取得のための講習会に参加しています。
(D級は初心指導者を対象としているため、選手経験者はC級から取得。)
その最高峰であるS級の講習会が目指すところは、
プロ選手の指導ができる人材を養成すると同時に、
日本の指導者のリーダーとなる人材を育成すること。
そのため、受講資格が与えられるのは、A級取得の際に成績優秀であり、
日本サッカー協会がその実績を認めた人物のみ。
書類や面談、実技など、厳しい審査を経て毎年わずか20名ほどに絞られます。
ライセンス取得のためには、3ヶ月間に渡って行われる
「日本サッカー協会公認S級コーチ養成講習会」に参加後、
国内Jクラブで1週間以上、海外プロクラブで2週間以上、
それぞれのプログラムに帯同した研修を行うことが義務付けられており、
試験やレポート提出など、多くの課題をクリアしなければなりません。
昨年度、およそ80名の候補者の中から選ばれ全国から集まった受講生は21名。
かつて一流のプロ選手として活躍した者が半数を占めており、
その顔ぶれは実に豪華なものでした。
昨年8月20日、6日間の国内合宿からスタートし、その後11週間、
毎週月曜日から木曜日まで都内に場所を移して行われていた講習会。
残暑厳しい中、受講生の真っ黒に日焼けした肌がその過酷さを物語っていました。
午前中の講習は主にグランドでの指導実践。
実際にJリーグのチームを任されたという前提で監督役、コーチ役、
ゴールキーパーコーチ役となった3人が残りの受講生を選手役として
指導にあたるというもの。1つのセッションは60分。
「センターフォワードを使った攻撃の改善」や「1人少ない中での守備の改善」など、
様々な指導テーマがあり、3人で事前に入念な打ち合わせをした上で、
テーマに沿った練習メニューを組み、残りの受講生を選手役として指導にあたります。
毎朝9時からおよそ3時間・・・
3ヶ月の講習期間中、この指導実践が、繰り返し繰り返し行われるのです。
プロチームさながらの練習風景の中で、
ひとつ大きく違うのは、4人のインストラクターの目が常に光っていること。
講習中は、すべてがライセンス認定の評価対象になっています。
←この日は名波さんが監督役。
クールなイメージの名波さんですが、
指導中は常に声を張ってコーチング。
時には厳しく檄を飛ばすことも・・・
選手のモチベーションを上げる言葉の
かけかた、伝え方など、指導力とともに
分析力も非常に高く評価されていました。
午前の講習が終わったところで
インタビュー!
「大事なのは指導者として、教え込むのではなく、選手の意見、意思、意図を感じながら、お互いが相互関係をうまく築きながらチームを作り上げていくこと。そういう過程を自分が作らなければいけない。今まで以上にそれを感じている。」と。
同じく受講生として参加していた前園さん、小倉さんとも!
小倉さんは受講生の中でも
ムードメーカー的存在。
講習を盛り上げていました。
昼休みを挟んで、午後は主に室内での座学。毎日およそ4時間、気を抜く間もなく、スポーツ社会学、心理学、メディア論、クラブマネジメント、プロフェッショナルスポーツコーチング論、戦略論、規約・契約論などなど、監督として必要だと思われるあらゆるものがカリキュラムとして組み込まれていました。
特に、コミュニケーションスキルやディベート実習、プレゼンテーション実習など、“伝えるスキル”は重要視されており、課題も多く出されていたよう。一見サッカーとは無縁と思えるものも多数設定されていて、受講生にとっては、慣れない作業に苦戦させられることも多かったようです。例えば、ディベートのテーマはなんと“原子力発電について”。下調べや資料作りなど、時間をかけた事前準備が必要とされる本格的なもので、持ち寄った情報をもとに、白熱した議論が行われ、最終的にインストラクターと残りの受講生から採点を受けるという流れ。いかに説得力を持って相手を納得させられるかがポイントとなっていました。
←写真は講習の後半、ほぼ毎日行われていた「プレゼンテーション実習」。
1人20分という時間の中で、集めたデータや資料、映像を駆使し、テーマに沿ったプレゼンテーションをするというもの。終了後に残りの受講生とインストラクターからの採点で合否が決まり、不合格となると追試。この課題に苦戦していた受講生は多く、名波さんもその1人。21あるテーマの中でもっとも難しいと言われたテーマ、「日本における政治とスポーツのかかわり」をくじ引きで引き当てた時は「地獄だった」、と(笑)このプレゼンのために、他種目のスポーツ選手や政治家の方にも自らインタビューしに行ったとか。
←この日は、ゴールキーパーコーチ役。
早朝から夜中まで、休む間もないハードな日々を過ごしていた名波さんですが、ピッチ上ではとても生き生きして見えました。
数々の試練を乗り越え、3ヶ月におよぶ講習会は昨年11月末で終了。最終的に口答試験、筆記試験、合宿による実技試験で幕を閉じました。ここで一旦合否が告げられたそうで、名波さんは見事一発合格!実はサッカー協会が設けた基準をクリアし一発合格したのは受講生21名中半数。非常に優秀な受講生だったようです。
ですが、S級ライセンス取得への道はこれで終わりではありません。
講習後、名波さんは国内研修の場に川崎フロンターレを、海外研修の場にFCソウルを選びました。(どのチームを選ぶかは自由。交渉も自ら行い、費用も自費。)それぞれのレポート提出した時点ですべての課程が終了。日本サッカー協会技術委員会で審査され、最終的に、7月12日、日本サッカー協会理事会で認定されました、仕事もしながらだったため、およそ1年がかりとなりましたが、見事S級ライセンスを取得!おめでとうございます。
←こちらが、今回インタビューさせて頂いた日本サッカー協会の技術委員、S級のスクールマスターである塚田雄二さん。名波さんがセレッソ大阪に所属していた頃の監督であり、現在は山梨学院大学サッカー部の監督でもあります。
←そしてこちらが、名波さんが尊敬している監督のひとりとして真っ先に名前を挙げた、日本体育大学サッカー部監督の鈴木政一さん。2002年にジュビロ磐田が史上初の1st・ 2nd両ステージ制覇を達成した時の監督で、当時、監督賞も受賞されています。
昨年度の受講生21名のうち、現時点での合格者は10名。それによりS級ライセンス保持者は355名になりました。その中で、実際に監督としてJリーグのピッチに立てるのはほんの一握り。ですが、彼らは間違いなく全員が、指導者のリーダーとして 日本サッカーの未来を支えていきます。
元日本代表、名波浩もまた挑戦者のひとり。
選手から監督へ。日本サッカーの歴史を築いた天才レフティが、
新たな歴史の扉の前に立つのはいつの日か?
楽しみにしています。(GAKU-MC&スタッフ一同)