2018.02.24 ON AIR
【宇多田ヒカル】水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミさん、ライターの九龍ジョーさん登場

今週のレジェンド・ミュージシャンは『宇多田ヒカル』水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミさん、そして、昨年発売された本「宇多田ヒカル論」で編集を担当された、ライターの九龍ジョーさんをお迎えしました。

「宇多田ヒカルさんのひとつ下の学年なので、リアルタイムでテレビで観ていました」というというケンモチさん。「やたらかっこいいな、とは思ったんですけど、当時LUNA SEAとBUCK-TICKのコピーバンドをやっていたぐらいロックバンドが好きだったので、もうちょっとサビっぽいメロディとかパンチのあるギターとか入ってこないのかなぁって感じで、実はその頃はピンとこなかったんです。それが後々わかってくるんですけど、実は宇多田ヒカルさんはCocteau Twinsが好きで、LUNA SEAもCocteau Twinsが好きで独特な浮遊感のあるリバーヴの使い方とかシンセの感じとかが今思うと少し通じるところがある。その後、徐々にそういうCocteau Twinsっぽさが宇多田ヒカルさんのアレンジの中に入ってくるようになって、そこで開眼していくんです。開眼のきっかけになった楽曲は「Addicted To You」ドラムの音とかすごいソリッドで他に余分な音とか一切入ってなくて、宇多田ヒカルさんの歌唱力でもっていける。ロック好きにとっては「こんなスカスカな音がいいのかと」スネアの音も「パーン」とリリースが伸びる音じゃなくて、「タスッ」って切れるような音。そういうのを多用しているR&Bの音っていうのがぼくにとって新鮮だった」と。

九龍さんが宇多田ヒカルの楽曲と出逢ったのは大学生の頃。「ラジオとかで凄く流れてた印象はあるんですけど、当時、児童相談所の一時保護所でバイトをしてたんですね。0歳から高校生まで子供たちが居るんですけど、その子供たちがお遊戯室みたいなところで歌番組を観てるんですね。そのときに「Automatic」のMVが流れて、女の子たちがみんなでB系のファッションでパンツを腰履きしてモノマネしてゲラゲラ笑ってるのを見て、この伝播力凄いなと思った。このヴィジュアル・イメージもその時なかった。圧倒的に違いましたよね。海外の影響とかよりももっと異物感だった」と。

ケンモチさんがいちばん聴いたアルバムは『ULTRA BLUE』と『HEART STATION』の2枚。「3rdアルバムの『DEEP RIVER』からだんだん重くなっていったりして4枚めの『ULTRA BLUE』でちょっとおかしくなったんですよ。ポップセンスがねじれにねじれて独自の宇多田ヒカルワールドに入っていくのが『ULTRA BLUE』。それを思ったのは「Keep Tryin'」。コード進行もすごい変だし、マイナーコードの上にメジャーなメロディが乗っていたりとか、歌詞も普通のJ-POPには出てこないような歌詞がたくさん出てくるんですよ。陰も陽もよくわからないところにいっちゃってて、そういうものがいっぱい詰まってる。そこから宇多田ヒカルさんすごく好きになって、このクセの強さがパクチーみたいなんです(笑)最初「うっ」って思うんですけど、それに慣れちゃったらその前のアルバムとかはちょっと薄味に感じちゃうっていうか、ボール一杯食いたいみたいな感じ(笑)でも最終的に聴き易いんです。その中でも好きな曲は「Colors」。

「この曲、歌詞も凄いんです」と九龍さん。「MVなんかも観て欲しいんですけど、Colorsって色を歌ってるんですけど“灰色”とか“白”とか、色が禁じられてるみたいな感じで“青い空が見えぬのなら青い傘広げて”って“青い空でいいじゃん”ってやっぱ思うんですよ(笑)なんか青い空には自分はまだ届かないとか、なんか自分を罰してるというか、何かを耐えてるような。宇多田さん本人も“自分は青い空よりも白い空の方が好き。青い空はなにかを隠してるそうな気がする”って言ってて、世界観も凄く重層的で、ただ目に見えるものより奥にあるなにかを見ようとしてるのが曲に反映されている。単純に色を見て、楽しいとか喜びとかっていうことよりも“侘び寂び”とか“幽玄”とか日本的なそういうものじゃないと表現できないような世界をこんなにポップなフィールドでやってるんです」と。「そんな宇多田さんの『DEEP RIVER』から『ULTRA BLUE』『HEART STATION』『Fantôme』と、たどり着いたそれまでのものを引き受けた究極の曲が『桜流し』だと思う」とおっしゃっていました。

まだまだ続く『宇多田ヒカル』来週もお聞き逃しなく!


■この収録は丸の内にあります「3×3 Lab Future」で行なわれました。

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PLAYLIST

Addicted To You / 宇多田ヒカル

Automatic / 宇多田ヒカル 

忘却 featuring KOHH / 宇多田ヒカル 

Flavor Of Life / 宇多田ヒカル 

Colors / 宇多田ヒカル 

桜流し / 宇多田ヒカル 


※放送後1週間はRadiko タイムフリーでお聴きいただけます。

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次回のレジェンド・ミュージシャンは『宇多田ヒカル Part2』。ゲストには水曜日のカンパネラ のケンモチヒデフミさん、「宇多田ヒカル論」編集担当のライター
九龍ジョーさんをお迎えします。お聞き逃しなく!