今週のレジェンド・ミュージシャンは、先週に引き続き『宇多田ヒカル』Part2。水曜日のカンパネラのケンモチヒデフミさん、そして、昨年発売された本「宇多田ヒカル論」で編集を担当された、ライターの九龍ジョーさんをお迎えしました。
ケンモチさんは、宇多田ヒカルさんのアレンジは自由すぎるぐらい自由だと言います。「本人がアレンジをするようになった『ULTRA BLUE』からの流れももちろん凄いんですけど、海外デビューした『EXODUS』は海外のアレンジャーとも一緒にやってたりして、アメリカっぽい感じの歯切れのいいサウンドが鳴ってるんですけど、中でも「The Workout」はエキセントリックなんです。スネアロールみたいにスネアが連打されてて、リヴァースシンバルが左右に振られてたりしてステレオ感的にも面白い。ほとんどドラムと簡素なシンセだけでAメロBメロが進んでいくんですけど、サビに入った時のオルガンの浮遊感がいい。どこにも着地しないような点だけで歩いていくような曲なんですけど、その上に乗っている宇多田さんのヴォーカルが非常にアグレッシブで歌詞もきわどい感じのエッチな歌詞。ステーキ、ポテトみたいなアメリカ仕様な感じなんです。(笑)」と。
昨年出版された杉田俊介さんの著書『宇多田ヒカル論』の編集を手がけている九龍さん。「昔から杉田さんと宇多田凄いよねってよく話していて、やっぱ歌詞が凄いなぁってのがあった。杉田さんは文芸評論っていう文学の研究者なので、そういう目で見ても宇多田の歌詞って凄いんじゃないかっておっしゃってて、そしたらボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したじゃないですか。だから宇多田ヒカルは日本の新しい文学で良いんじゃないかと。彼女自身もいろんなものを読んだり摂取してきたりして、それを表現するときに今のトレンドとかに目配せもしながらすごく純粋なところで創作にむかって生み出した歌詞っていうのは文学として捉えて良いと思ってたんです。その中でも最近の曲だと『道』。だれもがだれかと別れてきて、永遠の別れなんだけど、道を歩んできたら永遠にあなたが居るっていうちょっと宗教的な凄い次元にまできたかと。」とおっしゃっていました。
なぜ宇多田さんがこれだけヒットしたと思いますか?との問いにケンモチさんは「ファーストのあの当時ってジャパニーズR&Bの歌姫がたくさん出てきた時期で、中でも宇多田さんだけがヒットし続けているのは、R&Bだけに留まらず次々にいろんなチャレンジをしていて、音も変わっていったりしたこと。そしてすべてを統括した自己プロデュース能力がすごく高かったんじゃないかと思う」と。
九龍さんは「やらされてる感じが無い。自分が創りたいものを、創りたいようにやって、常にそれを通せる。それを通すことが自分の才能をいちばん発揮できることだし、それはたぶん宇多田ヒカルひとりじゃできないことで、それを支えるチームの人達が居て宇多田ヒカルにはこうさせた方が良いっていう状況をつくったことが凄いことですよね」とおっしゃっていました。
そんな『宇多田ヒカル』のキャッチ・コピー
ケンモチヒデフミさんの宇多田ヒカルとは…『愛情が深くなりすぎて、一周廻ってまた元のところに戻ってきた、全人類のお母さん』(笑)「宇多田ヒカルさんの中では、普通の人間が発する愛情の深さをもう2〜3周まわっていて、そしていまここに居る。普通の人間の何倍も廻ってるので、またここに戻ってくるんです。それを定点観測しているのがファンの楽しみなんじゃないですかね」
九龍ジョーさんの宇多田ヒカルとは…『新しい文学』である。「過去の曲とかも、いろんな解釈ができて、ぼくたちが味わいきれてないものがまだ眠ってそうなんですよ。たぶん宇多田さん本人すら認識できていない無意識だったりとか、生とか死とかいろんなものがまだまだ埋まってそうな気がして、掘っても掘っても掘り尽くせないある種読み物としての味わい方ができるというのが、これはもう文学だなと」
2週に渡ってお送りした『宇多田ヒカル』最後は『time will tell』で締めくくられました。
■この収録は丸の内にあります「3×3 Lab Future」で行なわれました。
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PLAYLIST
Automatic / 宇多田ヒカル
The Workout / UTADA
道 / 宇多田ヒカル
光 / 宇多田ヒカル
誰かの願いが叶うころ / 宇多田ヒカル
マルコ・ポーロ(Live mix)/ 水曜日のカンパネラ
time will tell / 宇多田ヒカル
※放送後1週間はRadiko タイムフリーでお聴きいただけます。
■水曜日のカンパネラの『マルコ・ポーロ』はApple Music の企画「Up Next」のために制作されたEPに収録!「Up Next」では限定映像も楽しめます! 水曜日のカンパネラの詳しい情報はオフィシャルサイトへ!