今週のレジェンド・ミュージシャンは、今年デビュー20周年のアニバーサリーイヤーを迎えたJ-POPシーンを代表する歌姫『aiko』。ゲストには、アカシックのヴォーカル 理姫さん、そして音楽評論家の田中宗一郎さんをお迎えしました。
■aikoとの出会い
田中:2012 年1 月1 日の夕方頃です。大晦日深夜にAKB48 目当てで録画しておいたカウントダウンジャパンで、たまたまそこに出演されていたaikoさんのライヴパフォーマンスの映像を観たのがきっかけです。それ以前は一度もまともに彼女の音楽を聴いたことがありませんでした。大きく言うとソングライティングと声に惹かれましたね。花火はやっぱり強烈で、イントロとバースのコード進行がロックの歴史で言うと67、8年ぐらいにすごく流行ったコード進行なんですよ。まずそれで、あ!これ自分のいちばん大好きなところだっていうところもあったし、そこの解釈の仕方がそれまでと全然違う。彼女の音楽ってコードの仕組みとか、それ対するメロディの動きとかっていうのが凄く洋楽的なんですよ。ところが曲の構成っていうのが、ガチJ-POPなんです。めちゃくちゃ構成が多い。そんな曲を聴いた事がなかった。
理姫:最初の出会いはヴィジュアル面から入っていて、小学校の5年生の時「ボーイフレンド」のCDジャケットを、初めて見て可愛くって、、、今日持ってきたんですよ!この前髪からちょっと透けて見える薄めの眉毛。上から見た時のちょっと気だるそうな目の下がり具合。色の白さと茶髪とピンクのTシャツっていう。これを見て凄い好きになっちゃったんですよ、刺さりました。もうこんな曲作れたら、明日からバンドやらないだろうなっていうぐらい凄い曲。出だしの“早く会って言いたい”っていう歌詞なんですけど“早く会って言い”までのところまでちょっと詰まるんです。それが“たーい”で凄い解放されるんですよ。それをいろんなところで繰り返してるんです。その一回ギュっと詰まって解放されるところに私は凄く中毒性がある曲だと思います。
■いちばん聴いたアルバムは?
田中:リアルタイムで聴き始めた最初のアルバムは『時のシルエット』。自分が最初に音楽を聴き始めたのはビートルズとかザ・フーとかブリティッシュロックなんです。その辺りのバンドって全部20世紀の初頭に生まれて1930年代ぐらいに完成したブルーズなんです。3コードで7thっていう7つ目の音が凄く重要なんですけど、クラシックから始まる西洋音楽の学理から言うとおかしいんです。その外れてるところがなぜ気持ちが良いのかっていうのを誰も証明できてないんですよ。ブルーノートと言われる1オクターブを7つに区切る音階がブルーズの基本なんですけど、彼女の音楽ってJ-POPの構成でロックだとかソウルだとかの和声を持ってて、ブルーノートの音階みたいなものが所々でズコ!って入ってくるんです。声と和音の動きとリズムの動きが、あまりに凄い!って思ってるもんだから最初3〜4年は歌詞を聴いた事なかったんです。何を歌ってるのか全然入らなかった。でもそれが3〜4年ぐらい経ってくるとようやく余裕が出てきて歌詞が入ってくると、彼女の歌詞って恋愛については書かれてるけど、それによって幸せになりたいのか、なりたくないのかっていうのがハッキリしない。だからゴールが見えないような自分でもわからないような出口が無いような感情の動きみたいなものが歌われていると思うんです。それと和声の動きだったりメロディラインだったりっていうのが呼応してるのかもしれないなぁっていうのを何年か前に思うようになりました。
理姫:リアルタイムで追いかけてお小遣いで一枚づつCDを買っていくタイプでした。一枚選ぶにもなかなか選べないんですけど、選ぶとすると『暁のラブレター』アルバムごとに確固たるテーマやイメージがあって、このアルバムはちょっと全体通してせつないって言うか寂しい感じがするって言うか、季節で言うと秋から冬あたりのような感じがしてるんです。中でも一曲選ぶとしたら今日の気分は「帽子と水着と水平線」
田中:いいですねー。
理姫:いいですよね、素晴らしいんですよ。サビのところで“もう始まっていた”っていくんですけど、その“は”のところが私にはどうしても“か”に聞こえるんですよ。“もうかじまっていた”って聞こえるんです何故か。その“か”って聞こえちゃうところが好きなんです。
全員:(笑)
■この収録は「三菱一号館美術館」で行なわれました。
PLAYLIST
花火 / aiko
ボーイフレンド / aiko
恋をしたのは / aiko
カブトムシ / aiko
Loveletter / aiko
※放送後1週間はRadiko タイムフリーでお聴きいただけます。