今週のレジェンド・ミュージシャンは先週に引き続き『aiko』。ゲストには、アカシックのヴォーカル 理姫さん、そして音楽評論家の田中宗一郎さんをお迎えしました。
■aikoのライヴ
田中:たぶん彼女の場合、パフォーマンスを観てもらうんじゃなくて、ダイレクトなコミュニケーションだと思うんですよ。セットの組み方とかも真ん中までずっと花道が出てるんですね。3年前はそこに櫓が立ってたんですよ、凄い高い所なんですけど。2曲に一回ぐらい本当に前まで全力疾走してきて、櫓に全力疾走で上がって、櫓からガーッって脚出して歌うっていう。あれは自分の前のめりな歌だとかパフォーマンスを観て欲しいというよりは、どこまで繋がれるかみたいな。執念に近い一人一人のあなたとコミュニケーションするんだっていうパフォーマンス。それを観たのは彼女とポール・マッカートニーだけですね。
理姫:「Love Like Pop」と「Love Like Rock」と「Love Like Aloha」があるんですけど、PopとRockも全然違うんです。Rockはオール・スタンディングでロックバンドがダイブとかしちゃうような雰囲気でaikoさんがライヴするんです。それを観たとき、本当に狂気の沙汰だなと思って、途中でちょっとaikoっていう存在について恐怖心を抱くぐらい凄くって。。aikoさんてライヴがとにかく大好きなんですよ。ライヴがしたいからリリースをしたい、ライヴがしたいから活動していきたいっていう方で、本当に目の前にお客さんが居て、みんなとコミュニケーションが取りたくって生きているんです。それだけライヴに対する愛情と愛憎劇ですねもう。多分、世間の人がテレビとかから流れてくる曲で連想しているaikoのイメージっていうのはライヴで観ると全然違うんです。
■aikoの楽曲が愛され続ける理由
田中:社会に生きてる人って役割を演じたり、それをやりきったりっていうのが絶対的に重要で、父親は父親らしくとか、娘は良い娘をやらなきゃなんないとか。でもやっぱり人ってそこから外れていく。そこの役割の中にはどうにもならない部分ってたくさんあって、説明できなかったり、世の中にちゃんと言えなかったりみたいな事の気持ちの受け皿に彼女の音楽ってなってくれるんだと思うんです。aikoって何だって?言われるとPublic Enemy No.1。社会のいちばんの敵だと思うんですよ。もし彼女みたいな生活感、価値観の人たちが日本中なり世界中に溢れたら国とか社会とか成り立たないです。ロックとかラップの世界ってそれをひっくり返そうみたいなことがあったじゃないですか。でもそうではなくて“構ってくれなくていいから私はここに居たいし、話しの通じる人、その人たちとの接点を持ってればそれで十分。そんな感覚があるんですよ。社会的な抑圧がある日常からの逃げ場所になるんだと思います。
理姫:私が実際にお聞きした話で、aikoさんがある時ライヴで凄く素敵なワンピースを着てたんです。これを買いに行ったときに店員さんが、これに合わせるヒールがあるので是非ヒールで綺麗に着こなしていただきたいですって言われて、aikoさんは“いやスニーカーを履きます”って言って、店員さんたち全員がズコーッってなったらしいんですよ。ボロボロのスニーカーで着くずしてしまうんですけど、そういう所に出てるじゃないですか、そのPublic Enemy感が。
■音楽シーンのaikoの存在
田中:彼女の音楽における形式をそのまま継承しているアーティストってそんなには多くないと思うんですよ。ただ彼女が描こうとしたポップ・ソングって白黒が凄くハッキリしていて一面的にバシッっと切り取れるからこそ共感されるっていうものではない。解決しないようなものをポップ・ソングの中に落とし込むっていう、それに共感してるフォロワーさんっていうのは居るような気がします。
理姫:aikoさんの影響を落とし込んで、また表現として出すっていうのは凄く難しくって、真似できないっていうか、真似しようと思うとaikoさんになるしかなくなっちゃうんですよ。aikoのような曲になってしまうんです。なので影響を受けたっていうのが言いづらいアーティストだと思うんです。別の言い方をするとaikoちゃんのせいで、ちょっと私たちアカシックにの音楽が窮屈になってるっていうぐらいaikoちゃんがすべてやり尽くしている感じ。気が付いたら恋愛の歌詞を書くようになっていたのも、もしかしたらaikoをずっと聴いてたからかな、と思いますね。
■キャッチコピー
田中宗一郎さんのaikoとは・・・『社会の最大の敵。そして、社会からはみ出してしまう気持ちや感情が帰る場所』大好きな恋人にも、大好きなんだけどそのまま言えないような気持ちとか、そういうものが帰る場所っていうのが彼女の曲のような気がします。
理姫さんのaikoとは…『私のaiko』aikoはみんなのaikoじゃなくて、ファンの方全員が“私のaiko、オレのaikoなんですよ、たぶん。聴いてるとすぐ真横で大丈夫だよって言ってくれてるような気になるんですよ、本当に不思議なぐらい。いつも心の中に私のaikoが居るていう、そういう人。
-最後は最新アルバム「湿った夏の始まり」から『格好いいな』で2週に渡るaikoは締めくくられました。
■この収録は「三菱一号館美術館」で行なわれました。
PLAYLIST
be master of life / aiko
カケラを残す / aiko
恋堕ちる時 / aiko
Aka / aiko
禁煙成功 / アカシック
格好いいな / aiko
※放送後1週間はRadiko タイムフリーでお聴きいただけます。
■アカシックの詳しい情報はオフィシャルサイトへ