2018.10.27 ON AIR
【THE EAGLES】音楽評論家の萩原健太さん、音楽プロデューサーの多保孝一さん登場!

今週のレジェンドミュージシャンは、まさにアメリカのロックシーンを代表するレジェンド・バンド!『The Eagles 』ゲストには音楽評論家の萩原健太さん、音楽プロデューサーの多保孝一さんをお迎えしました。

■イーグルスとの出会い

萩原:高校になってからかな?ビーチボーイズが大好きだったんで、アメリカの西海岸のコーラスを主体にしたサウンドっていうのが大好きだったんです。その都度その都度、時代のいちばん新しい音楽にコーラスを乗せていくっていうのが西海岸の在り方じゃないですか。フォークロックが流行ればそこにコーラス乗っけて、アソシエイションとかママス&パパスっていうのが出てきて、常に時代と共にね。ロックンロールにコーラスを乗せたのがビーチボーイズだし。そんな風に70年代に入った頃、カントリーロックっていうのがめちゃくちゃ旬な音楽として世の中に広まった。その時そこにゴキゲンなコーラス乗っけて出てきやがったのがイーグルスだったわけですよ。

コーラスがくると、それだけでもの凄い反応する子供だったんです。ヴォイッシングって何声とか言うじゃないですか。ビーチボーイズなんかがやっってんのは、オープンハーモニーって言ってビッグバンドのサックスセクションのアンサンブルみたいなのを声に置き換えてやるようなものなんで、メロディをトップに置いて下にオクターブ以上に広げるんですよ。そういう風に積むのがめちゃくちゃ高級なやり方なんだけど、イーグルスって割と全体的に高いところで全員がハモっていくんですよ。凄いそれがね、ウエストコーストの青空に突き抜ける爽快な感じのヴォイッシングになってんですよ。あれがたまんなかったんですよねー。日本の曇り空の下でそれ聴きながらね、いいなぁって(笑)

ー多保さんは82年生まれ。イーグルスが最初の解散を発表したとき。

多保:高校生のときに幼なじみの子からベスト盤を借りたんですよ。カントリー風味の曲とかは当時理解できなくて。だけどやっぱりホテルカリフォルニアだけはスッと入ってきて、なんて美しい曲なんだって思いましたね。メロディ、ハーモニーの美しさ、楽曲のクオリティがその当時の同じカントリーロックだったりウエストコースとのロックバンドはたくさん居るんですけど、やっぱり頭ひとつ抜けてる感じはするんですよね。おもにドン・ヘンリーとグレン・フライが作ってたと思うんですけど、詩とメロディ、あとアレンジ。すべてのクオリティが高い。初期には初期の良さがあると思うんですけど、後期になるにつれてどんどん緻密になっていく感じ。そしてサウンドの重心がどんどん下がっていく感じがするんです、サウンドのボトムが。それはジョー・ウォルシュとかが入って、ロックのサウンドがどんどん入ってきて、ドラム、ベースの重心が下がっていくみたいなところがあるんだと思うんですけど。構築美ですね。その時代のウエストコーストのバンドの中でもいちばんアカデミックな感じがするんです。

■ホテル・カリフォルニア

多保:今聴いても斬新なメロディに感じますね。あとはアレンジの素晴らしさですね。ギターは何本重なってるんですかね?多分録音も大変だったと思うんですよ、当時トラック数も限られてる分。その中であれだけのギターを重ねて緻密に練って重ねて。録音技術も凄いですし、語り尽くせないですね、この曲の魅力は。

萩原:あのジャケットの感じも含めて、なんとなくアメリカいいなぁなんて思って聴いてた訳なんだけど、良く歌詞を見てるうちにだんだん内容が実はもの凄く暗いってことが分かってくるじゃないですか。1969年からアメリカのロックシーンはロックのスピリットを失っちゃってると。そんな中でオレたちはやってんだ、というひとつの強力な内部告発だった訳でしょ。そういう風に思って聴くとすごく怖いジャケットになってくるし、中を開けると幽霊が出るみたいなホテルの情景で、凄い暗い感じの写真が載ってたりとか。これは死後の世界なんじゃないか?とか。ある意味すべてが終わったっていうのを告げてるようなね、そういうアルバムだったんですよね。

ー1969年とは?

ウッドストックですね。だからそれまでは音楽でロックで、それを旗印にして世の中を変えることができるんじゃないかって。そこまでは共同幻想の中で若者たちが燃えてたんだけど、70年代に入った途端に、いろんな挫折があって世の中そんな事で変わる訳がないってなって、もっともっとパーソナルな事を歌うシンガーソングライターたちが人気を博す訳ですよ。その変化と共にスピリットを失ったとイーグルスは言ってる訳だけど、デビューしたのはその後な訳ですよ。つまりもう既にスピリットを失ったとこで自分たちはスタートしてるんだっていう告白でもあったんですよ。

■萩原健太が選ぶ!イーグルスを知らない若い世代に聴いて欲しい曲TOP3!

3位「The Best Of My Love」
ドン・ヘンリーの声がもうたまらない。

2位「New Kid In Town」
グレン・フライの良さがね、凄い良く出てるんです。彼はデトロイト出身なんでソウルに凄く影響を受けてるんですね。そのブルーアイドソウル的なセンスをポップなメロディに少しまぶすんですよね。その感じが良く出てるんです。

1位「I Wish You Peace」
イーグルスの場合はまず前提として考えなきゃいけないのは全員仲が悪いんです。そんな仲でもみんな一緒にやってきた訳ですけど再結成も含めてね、その中でもう辞めちゃったメンバーが一人居るんですよ。初期のリードギタリストだったバーニー・レドン。「呪われた夜」っていうアルバムが最後だったんですけど、そのアルバムのいちばん最後に彼の曲が1曲入ってるんですよ。辞めるにあたって、みんなに”この後も頑張ってね”みたいな感じで「I Wish You Peace」っていう曲を歌って終わるんですよ。辞めたのはその後だったんで、まさかこの曲が最後になるとは思わなかったんですけど、彼が脱退してから更にこの曲が沁みてきましたね。イーグルスは人間関係を追っていくだけでも深いグループだという事を象徴する曲として是非聴いて欲しいなと思いますね。


■この収録は大手町にあります次世代オフィス「3×3 Lab Future」で行なわれました。

PLAYLIST

Take It Easy / Eagles

New Kid In Town / Eagles

Ol'55 / Eagles

Hotel California / Eagles

Life In The Fast Lane / Eagles

I Wish You Peace / Eagles


※放送後1週間はRadiko タイムフリーでお聴きいただけます。

次回は『The Eagles』のPart2。ゲストは引き続き音楽評論家の萩原健太さん、音楽プロデューサーの多保孝一さんをお迎えします。