2019.05.04 ON AIR
【ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019】別所哲也さん、クラシックソムリエの田中泰さん登場!

今週は、現在、丸の内で開催中!フランスの港町・ナントで生まれた、クラシックの音楽祭「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019」にフォーカス。ゲストには別所哲也さん、クラシックソムリエの田中泰さんをお迎えしました。

■クラシックとの出会い
別所:実は祖母がピアノの先生だったんですよ。だから家にはアップライトのピアノがあって、それが8歳になるまでずっと鍵が掛かってたんですね。開けられなくて…。いま思えば戦略的に。“開かないなぁ”って思ってたら、小学校2年生になった時、パッと開きまして、思わず遊ぶじゃないですか。で、怒られるかなって思ったら“やってみる?ピアノ”ってお婆ちゃんに言われて。

グローバー:はぁー、そのタイミングを見てたんだ!お婆ちゃん。

別所:だと思います。思えば小学校入った頃にはバイエルがありましたからね。だから習わせるつもりだったんだろうなと。

グローバー:そうするとファーストタッチになる前にお婆ちゃんのピアノ聴きながら“クラシックという音楽は素敵だな、好きだなぁ”って思ってました?

別所:そうですね、でもその頃はショパンとかベートーベンとかわかんないから、音の中から感じるクラシックというものだったと思いますけど。その後、やっぱりベートーベン、ショパンというものが偉大な作曲家なんだなぁってことをつくづく知る事になる訳ですけど。

グローバー:別所さんは世界中のクラシックファンの方を見てきたり、触れてきたりして、世界中の人を惹き付けてるクラシックの魅力は何だと思います?

別所:時間を越えて世代を越えて、同じ楽曲なんだけれども、その楽曲を通じて語り合えるところ。それは3世代でも4世代でも。それから自分のパーソナルヒストリーの中でも、子供のときに運動会で聴いたあの楽曲とか、リコーダーで吹いた音色からその先にあったクラシックとか、それが大人になったときにまた蘇るっていう。これは永遠に普遍。やはりクラシックと言うだけのことはあって、そこにある普遍性じゃないですか。

グローバー:田中さんは、日本クラシックソムリエ協会の代表理事でいらっしゃいますが、クラシック音楽との出会いはいつ頃だったんでしょうか?

田中:僕も別所さんと一緒で幼稚園の頃、ピアノを習っていたのがきっかけだったんですけれども、僕らの頃ってみんなが一斉にピアノを習い始めた世代だったんですよね。で、なぜか僕は小学校に入ってもピアノをやってたんですよ。ただその頃はだれが弾いたらどうなるなんて考えもしませんでした。ところがね、高校生になった頃だったかな、オーディオを買ったら、そのオーディオを聴きに叔父貴がポリーニのLPを持って遊びにきてくれたんですよ。これがショパンのエチュードだったんですね。もうぶっ飛びましたね。“ピアノってこんな凄いんだ!全然違うじゃん!”って思って、誰が弾いたらこうなる、って目覚めた瞬間がその瞬間ですよね。

グローバー:改めて思うクラシック音楽の最大の魅力は何だと思いますか?

田中:やっぱりね、クラシックの歴史って300年から400年あるんですけれども、その中って無数の作曲家がたくさんの曲を生み出してるんですけどね、その時代の流れの中で淘汰されて、本当に残った一握りのものが今、僕らが聴いてる作品なんですよね。ですからやっぱりその完成度の高さって、本当にとんでもないと思うんですよ。素晴らしいメロディがそこに残ってる。それを僕らが今聴いてるっていうのは、もしかしたらシェークスピアの名作を読んだり、ゲーテの名作を読むのと同じだと思うんですよね。

■開催中の「ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2019」今年のテーマは『ボヤージュ 旅から生まれた音楽(ものがたり)』ということで「旅とクラシック音楽の思い出」というと別所さんどんなものがあります?

別所:いまパッと思い出したのは、旅先のニューヨーク、セントラルパークで聴こえてきたバイオリンの曲があって「ツィゴイネルワイゼン」だったんですけど。これがもうたまらなかったですね。セントラルパークの中なんですけど、演奏家であろうかな?とか色んなことを想像するのも楽しかったですし、自分にとっての心の旅も始まったり、色んなものが重なってく世界がありましたね。僕にとっては幼い頃にお婆ちゃんとレコードで聴いた「ツィゴイネルワイゼン」が“わぁ〜”っとニューヨークの空を見ながら、その人を見ながら、その向こう側に思い出してくるっていう不思議な体験をしました。


■ クラシックソムリエ 田中泰が選ぶ旅先で聴いて欲しい楽曲 TOP3
今回、「ラ・フォル・ジュルネ」のプログラムから選んで頂きました!

3位「ガーシュウィン:パリのアメリカ人」
今回のテーマっていうのは作曲家たちが旅をして、そこでインスピレーションを受けて生み出された音楽っていうのがひとつの大きなテーマなんですね。そういう意味で言うと、ガーシュウィンは「ラプソディ・イン・ブルー」で大成功を収めたんですけど、正規の音楽教育を受けてなかったんですよ。それで”もっとちゃんと勉強したい、じゃあパリに行ってラヴェルなんかのところに行って学ぼう”って言って、パリに行ったんですよね。ところがラヴェルが言ったのは、ガーシュウィンの収入を聞いて“それは君に僕が習った方がいいよ”って言ったっていう笑い話が残ってるんですよね。それと同時に“一流のガーシュウィンで居るほうが、2流のラヴェルになるよりもずっと良いんだよ”って言って戻したんですよね。で、その時に滞在したパリの思い出を元に作られたのが「パリのアメリカ人」なんですね。

2位:ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲 18演奏
ピアノ好きにはたまらないロシアの作曲家なんですけど、彼がアメリカに亡命して、そのアメリカで演奏も忙しいし、ロシアの大地のイメージが消えてしまって作曲ができなくなってしまった。それがスイスに行ってようやく気持ちが落ちついて作曲したのが「パガニーニの主題による狂詩曲」なんですね。この曲の第18演奏っていうのは映画音楽に使われるとことも多いぐらい、素晴らしく美しいです。

1位:モーツァルト:クラリネット協奏曲
クラシックの歴史全体の中でも最大の天才と言われてるモーツァルトは、なんと人生の三分の一を旅先で過ごしてるんですね。子供の頃からお父さんに連れられてヨーロッパ中を廻ってる訳ですよ。その先々で奇跡のような演奏と素晴らしい音楽を生み出してる訳です。ですからモーツァルトと旅というのは切っても切り離せない。もちろんこのクラリネット協奏曲もそうですし、最晩年のモーツァルトの達観した、もの凄く崇高な音楽がここでは楽しめる。おそらく自分の人生、旅を振り返って集大成的に作ったんじゃないのかなぁって想像しながら聴くと良いと思いますよ。

■キャッチ・コピー「旅におけるクラシック音楽とは?」

田中:「新たな人生の扉を開ける鍵である」

別所:「あなたの心の旅と繋がる魔法である」



■この収録は大手町にあります次世代オフィス「3×3 Lab Future」で行なわれました。

*別所哲也さんは、今日、この後、東京国際フォーラム ホールB7 で18:30 から行われる
『グランド・ツアー:ヨーロッパをめぐる旅』(朗読劇)に登場!田中さんも会場にいらっしゃいますよ。引き続き丸の内で、クラシック音楽の祭典「ラ・フォル・ジュルネ」を楽しんで下さいね!

PLAYLIST

ベートーヴェン 「ピアノ・ソナタ 第8番(悲愴)第1楽章」/ ウラディミール・サモイロヴィチ・ホロヴィッツ

J.S.バッハ 「マタイ受難曲 主よ憐れみたまえ」 / カールリヒター ミュンヘンバッハ管弦楽団

ブリング・ヒム・ホーム / コルム・ウィルキンソン

サラサーテ 「ツィゴイネルワイゼン」 / ヤッシャ・ハイフェッツ

モーツァルト 「クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 第1楽章」 / ザビーネ・マイヤー


※放送後1週間はRadiko タイムフリーでお聴きいただけます。

■別所哲也さんが代表を務める『国際短編映画祭 ショートショートフィルムフェスティバル』の詳しい情報はオフィシャルサイト
■田中泰さんが出演する「街なかトークカフェ」の詳しい情報はこちら

次回のテーマは、先月Newアルバムをリリース!夏にはフジロックフェスティバル'19に登場する
『ザ・ケミカル・ブラザーズ』ゲストにはマルチ・アーティストのSeihoさん、音楽プロデューサーでライターの佐藤譲さんをお迎えします。