今週のレジェンドは、デビュー50周年!日本を代表するシンガーソングライター、井上陽水!ゲストにはシンガーソングライターの吉澤嘉代子さん、DJでトラックメイカーのやけのはらさんをお迎えしました。
■井上陽水との出会い
やけのはら:母親が好きだったんですよ。なので小学校ぐらいですかね。
グローバー:そのときは“好きだなぁ”っていうふうに思ってました?
やけのはら:思ってないです。ただ大人になっても小さい時に掛かってたなって覚えてたっていうことは、なんかちょっと引っかかりはあったのかなぁと。
グローバー:改めて自分で聴いて好きになっていったっていうのはどんなポイントでした?
やけのはら:70年代のアルバムとかは、音がカッコ良かったですね。その後とかはどんどん歌詞の世界に惹かれたのかなぁ。小学生の頃に「少年時代」がヒットしてて、行ったことのない時代、景色なのに、なにか共通の日本人の郷愁というか、なにかそういう大きいものを描いてる感じがするというか。
グローバー:少年時代から入って遡って聴いたり、リアルタイムで新曲を聴いたりして、井上陽水さんが一貫してる部分ってどういうところだと思います?
やけのはら:曲自体はその時代でどんどん変わっていってると思うんですけど、陽水さんという巨大な存在のトーン自体は、なにをどうやっても陽水さんだなと。飄々としたシニカルな感じであったり、あと僕が凄く思うのは“ちゃんと大人なミュージシャン”っていう。“大人”は僕にとって陽水さんのキーワードで、小さいときに親が聴いてた"大人の世界の音楽"みたいな印象で、自分も音楽をやりだしたり、歳をとっていったりして、パッと見渡すと、陽水さんみたいな大人っぽい大人みたいな人って、別にみんなその歳になったらなるわけじゃなくて陽水さんは特別だったんだって。
吉澤:私の父も陽水さんが大好きで、陽水さんのモノマネをして自己を確立していったという(笑)会社員なんですけど、すごくシャイでモノマネをすることによって会話をしていたんです(笑)今も休みの日とか、朝から練習してるんですけど。
やけのはら:そのモノマネをどこで披露されるんですか?
吉澤:近所ののど自慢とか、飲み屋さんだったりとか、親戚の集まりだったりとか、私の友達が遊びにきたときに部屋に入ってくるとか。
グローバー:友達が遊びにきたとき!?何年生のとき?
吉澤:小学校3年生ぐらいの頃に!“コンコン”って“お元気ですか?”って部屋に入ってきて凄く嫌でした(笑)
3人:爆笑
グローバー:お父さんとはまた別でミュージシャン井上陽水を好きになった時って覚えてます?
吉澤:「東へ西へ」を聴いたときに“なんだこの歌詞は”って。中学校後半から高校生ぐらいで、自分も曲を創り始めたりとか詩を書くようになっていた頃だったから気付いたんだと思います。“床にたおれた老婆が笑う”っていう歌詞を聴いたときに、その情景は見たことないんですけど、まざまざと浮かび上がって凄く怖くなったんです。家族だったり恋人だったり、すごく親密な関係性の上でも、ちょっと突き放したような冷ややかな視点っていうのがいつもあって、そういうのが逆に人間らしいなと思ってグッと惹かれたりします。
グローバー:アルバムでいうとこれハマったっていうのあります?
吉澤:いつも家でかかってたのが「陽水?センチメンタル」なんですけど、いちばん古い音楽体験をした記憶っていうのが「白いカーネーション」を父と一緒に歌ってたっていうのがすごくあって、自分の中の幼少の頃の大切な思い出としてこの歌があります。
グローバー:やけのはらさんはアルバムで言うと?
やけのはら:ここ5年ぐらいで言うと「ハンサム・ボーイ」とかが好きですね。今の気分。音の感じも含め。あと80年代のアルバムで「LION & PELICAN」とか「あやしい夜をまって」とか。「あやしい夜をまって」はEP-4っていう京都のバンドのBaNaNaさんっていう方とかが編曲をやってて、凄く突飛って言いますか、陽水さんのキャリアの中でも変わったアレンジになってて好きですね。陽水さんの曲の世界や、陽水さん自体もちょっと不思議な感じなので、不思議×不思議で、僕は“最高だな”と思います。
グローバー:その不思議なものがお茶の間に入っていったっていうのはどういうことだったんでしょうね?
やけのはら:そこらへんが不思議で面白いですよね。90年代のPUFFYさんとかにも曲提供とかされてましたが、歌詞とかもすごく変だし、一見普通っぽいけど、よくよく考えたら意味わかんない“なんなんだこれは?”みたいなのは陽水さんによくある気がしますね。
グローバー:吉澤さんは歌詞の世界いかがですか?
吉澤:曲によって怪しい大人の世界を感じたり「少年時代」とか「決められたリズム」のような子供の頃の景色、のどかな気持ちになるような曲とかあるんですけど、その中でも“子供の頃に戻りたいな、子供の頃最高だよね”みたいな子供に憧れる大人みたいなものが多いかと思うんですけど、陽水さんの場合はずっと徹底して大人というか、その距離感みたいなのが心地良い。肯定も否定もせずにフラットな視線で描いてるような感じがしてすごく好きです。
■DJやけのはらが選ぶ「井上陽水の秀逸な言葉選びソング」TOP3!!
3位:リバーサイドホテル
僕が思うには“大人の不倫旅行”みたいな感じがするんです。でもそういうのの外堀だけを短編小説のように描写していく。この映像喚起力の高さ、大人の恋、そして行間を読ませる感じ。で、当たり前のことですが、サビが「ホテルはリバーサイド 川沿いリバーサイド 食事もリバーサイド OH!リバーサイド」って、なんだそれって(笑)
2位:傘がない
「都会では自殺する若者が増えている」っていう一行目。掴み方がもう半端ない。ヒリヒリさせるところと文学的というか、ただ変な言葉だけでで脅かすわけではない。そして「君の事以外は考えられなくなる それはいい事だろう?」って「それはいい事だろう?」って人間が思う感情ってふつうあんまり表現化されない。もの凄いなと。
1位:TOKYO
若者が若者の目線で、好きな街を描く曲は沢山あると思うんですけど、大人が大人の目線で大人の街を描く曲って意外とない気がします。東京の煌めきとか躍動、もしかしたらどんどん失われていってるのかもしれない東京が東京っぽかった時代の街の空気みたいなものをビシビシ感じます。
まだまだ続くレジェンド『井上陽水』来週もお聴き逃しなく!
■この収録は大手町にあります次世代オフィス「3×3 Lab Future」で行なわれました。
PLAYLIST
少年時代 / 井上陽水
白いカーネーション / 井上陽水
Yellow Night / 井上陽水
真珠 / 井上陽水
残ってる / 吉澤嘉代子
TOKYO / 井上陽水
※放送後1週間はRadiko タイムフリーでお聴きいただけます。
■吉澤嘉代子さんの情報はオフィシャルサイトへ
■やけのはらさんの情報はこちらへ