2019.09.07 ON AIR
【矢沢永吉】作詞家の売野雅勇さん、音楽プロデューサーで作曲家の多保孝一さん登場!

今週のレジェンドは、7年ぶりのNewアルバムをリリース!まもなく70歳となる今も、圧倒的なオーラを放つ日本のロックンロール・レジェンド!矢沢永吉。ゲストにはこれまで名曲の数々を手がけてこられた作詞家の売野雅勇さん、音楽プロデューサーで作曲家の多保孝一さんをお迎えしました。

グローバー:売野さんといえば「SOMEBODY'S NIGHT」や「PURE GOLD」を始め、名曲の数々で作詞を担当されていますが、リスナーとして最初に矢沢永吉さんの楽曲に触れたのはいつでしたか?
売野:1972年にデビューしてるでしょ、その時に先輩がキャロルの1枚目と2枚目のシングル盤を持ってたの。その場で聴いて “なにこれ!”ってびっくりしちゃって。全然音が違うし、ノリが違う。歌も違うし、ミックスも違う、もう全てが違う。 “これが日本なの?”って。日本語で歌ってるじゃない、それで時々英語が入って。“日本語と英語が混じっちゃって良いわけ?”っていうさ、頭がまだ硬かった。とにかく音楽のクオリティが凄く高かったの。日本のロックってさ、悪口言うわけじゃないけどリズムが緩かったんです。だから“これちょっと違うんじゃないの?”って言う感じをずっと思ってた。ロックっていうと昔はちょっとインテリっぽかったんですよ。フラワーチルドレンとかさ、ヒッピーからきてるから、ちょっと頭でっかちって言うかさ、それも良いんですよ、
グローバー:思想みたいなのがあったんですね。
売野:そうそう、深いとこじゃね。それが“いや、肉体だよ”っていう。それがキャロル。その衝撃が強くて“これがロックだろうね”っていう風に思ったんです。それでその年すぐにデビューコンサートが後楽園の側であったんです。そこに観に行ったの。そしたらさ、ひとりだけテンション高い人が居るわけよ。ベース弾いて歌ってんだけど、パフォーマンスが全然違うの。唾すごい飛ばすし、腰の振り方も歌い方も全然違うの。もうほんと度肝抜かれて。
グローバー:バンドの中でも矢沢永吉の存在っていうのは一人だけやたらキテるなっていう存在ではあったんですね。
売野:そうそう。もう全然違った。
グローバー:多保さんは売野さんよりもずっと世代も下ですが、初めて観た時は?
多保:僕はたまたまテレビの音楽番組で過去の映像を流してる番組を観てて、どんどん遡って80年代ぐらいの映像が流れた時に、矢沢さんがテレビに出られた時の映像が流れて、それが「SOMEBODY'S NIGHT」だったんんです。サビのところしか流れなかったんですけど、一発でサビのメロディを覚えちゃって。やっぱ詩とメロディのインパクトが凄かったですね。
グローバー:その時、多保さんは何年生ぐらいですか?
多保:高校3年生ぐらいじゃないですかね。楽曲の素晴らしさもそうですけど、矢沢さんの人の魅力に引き込まれてインパクトが凄かったですね。しかも当時はCMとかにも出られてたじゃないですか。だから僕たちの世代ではロックシンガーというよりも、なんかもう“スター”みたいなイメージでしたね。でもその頃は代表曲みたいなのは耳にするんですけど、そんなに聴いてなかったんです。実は自らCDを買って最初に聴いたのは僕もキャロルなんです。18、19歳の頃にロックンロールを聴き漁ってて、ストーンズもそうだし、チャックベリーもそうだし。その流れで日本のロックバンドを聴いたんですけど、音像が洋楽に引けをとらない、むしろ凌駕してるところもあった。矢沢さんのヴォーカルもめちゃくちゃ上手いし、熱量凄いし、やたらキャッチーだし、ロックっていう範疇を越えてたんです。
グローバー:いまおそらくキャロルを聴いたことがなくて、初めて聴いても同じような気持ちになるんじゃないかなと思いますよね。2019年の今でも。 

■「SOMEBODY'S NIGHT」は、売野さん作詞による大ヒット曲!この曲にまつわる特に印象深い思い出は?
売野:これね、矢沢さんに初めて書いた曲なんです。キャロルの頃から好きなんでね、とにかく矢沢さんの歌を書きたかったんですよ。作詞家になって名前が出ると注文が来ると。そう思ってたら、待てど暮らせど10年間来なかったんですよ。こういう作詞家は嫌いなのかなって思って、手紙を書いたんですね。読むのが大変なぐらい凄い長い手紙です。400字詰めにしたら20枚よりも多いぐらい。
グローバー:それ手紙っていうレベル越えてますね。
売野:そう、ラブレター(笑)企画書付きラブレターみたいなのをお出ししたの。そしたら“会いに来てください”って。それで会いに行ったんですね。控え室に行ったら、スウェット上下、普通それで済むんですけど、その上にアルマーニのジャケットを着ててくれたんだよ、僕のために。それに感動しちゃったわけ。それで“優男が来ちゃったね”って言ったのよ。俺さ、シュッとしてる顔だったんですね。“どんな人が来ると思ったんですか?”って聞いたら、“あの字からするとさ、岩みたいな男が来ると思った”って言ったのよ。手書きですからね、もう筆圧高くて右肩上がりの物凄くチカラ入った、見ただけで疲れそうな字だったからね。で “矢沢さんそれ阿久悠さんじゃないでしょうか?”って言ったのよ。“いやぁ(笑)”みたいな感じでかなり和んで。そのコンサートでね、“今日は売野さんのために歌います”って。“えっ”ってなるじゃない?そしたら“そういう人が居た方がいいんです、コンサートが上手くいきます”って。こっちはもう。。。で客席へ降りて行ったっていう。それから一、二ヶ月経って電話があって“曲があるんだけど書いてくれないか”って。それが「SOMEBODY'S NIGHT」

■作詞家 売野雅勇が選ぶ「歌詞を噛み締めて聴きたい矢沢永吉曲」TOP3!

3位 チャイナタウン <1978 年>
売野:やっぱりさ、チャイナタウンってあれしか音が無いみたいな感じがしない?
グローバー:あの言葉と、あのメロディ。
売野:そう、だからチャイナタウン行く時はあの曲になっちゃってますよね(笑)
グローバー:横浜のチャイナタウン行って、そこの空気とこのメロディと歌詞が完璧にマッチしてると。
売野:完璧ですよ。ほんと大傑作ですよ。1位でもいいと思うぐらいです。

2位 時間よ止まれ <1978 年>
売野:出だしがね「罪なやつさ Ah PACIFIC」なわけよ。パシフィックが“やつ”?それが驚いちゃって。これちょっと自由すぎるわって。
グローバー:あの大海原に対してね(笑)
売野:あとね「汗をかいたグラス」この表現ね。みんなパッと解るでしょ、でも誰も書けなかった、誰も汗をかいたグラスを突き詰めたやつが居なかったわけ。これは作詞家がいかに偉大かってことなんですよ。そして「汗をかいたグラスの 冷えたジンより 光る肌の香り」光るっていうのは汗。
グローバー:そこでグラスの汗と
売野:そうそう、ダブらせてね。エロティックな部分も出るし、ほんとパーフェクトですよ。

1位 AZABU <1995 年>
グローバー:これは売野さん作詞の曲です。
売野:ちょっと申し訳ないんですけど、これもね、やっぱり誰もクローズアップして考えなかったんですね「ビルの隙き間 タワーが光る」ビルの隙間に東京タワーが見えるんですよ。
グローバー:そのシーンから始めるんですね。
売野:そうです、歩いてるんシーンなんですね麻布をね。そうすると麻布って割と密集してるんだけれども、ビルに隙間があるんです。歩いてると必ず全部の隙間から東京タワーが見えるの。これを誰も書いたことがない。こういう作業を“異化する”って言うんですよ。ヒュッってやると、もう皆さんの頭の中ではビルの隙間の東京タワーは異化されてる訳です。特別な物として残っちゃう。“イカしてる”って言うのはここから来てるんだよ。
グローバー:あ、本当に。
売野:と、僕の説ですけど。
グローバー:いや、面白い!“イカしてるね”って言うのは“他と違ってるね”っていう。
売野:そうそうそう。イカしてるでしょ?
グローバー:なるほどねー。

まだまだ続くレジェンド『矢沢永吉』次週もお聴き逃しなく!


■この収録は大手町にあります次世代オフィス「3×3 Lab Future」で行なわれました。

PLAYLIST

ルイジアンナ / キャロル

SOMEBODY'S NIGHT / 矢沢永吉

幻夜 / 矢沢永吉

時間よ止まれ / 矢沢永吉

ニューグランドホテル / 矢沢永吉

AZABU / 矢沢永吉


※放送後1週間は右のタイムフリーボタンでお聴きいただけます。

来週は、矢沢永吉のPart2!ゲストには引き続き作詞家の売野 雅勇さん、音楽プロデューサー 多保孝一さんをお迎えします。お聴き逃しなく!