今週は、ボーカルの佐藤伸治がこの世を去って 今年で20年。
今もファンを魅了するバンド、フィッシュマンズ!ゲストは、映像ディレクター 川村ケンスケさん、Polaris オオヤユウスケさんをお迎えしました。
■フィッシュマンズとの出会い
川村:92年、ぼくがまだ音楽ビデオディレクターではなくて、テレビで音楽番組のディレクターやってたんですけれども、まだバブルがギリギリあったかないかの時代なので、テレビでの深夜番組も花盛りで、いろんなアーティストがテーマソングを歌ってた。その中にフィッシュマンズが居たんです。可愛いバンドだなって思ったんですね。今のファンにとってそうは思えないかも知れないけど、キュートでポップなバンドっていう印象なんですよ、その時は。
グローバー:それはヴィジュアル含めて入ってきた印象ですか?音ですか?
川村:音ですね。でも、その時に聴いて、後はポツポツ聴いてるんだけど、本当に出会うのは一緒に仕事をする時なので、実際には95年かな?『ナイトクルージング』までは比較的間が開いてるんです。
グローバー:オオヤさんは、フィッシュマンズのベーシスト柏原譲さんと2000年にPolarisを結成しますが、その時はもうフィッシュマンズのファンでした?
オオヤ:多分、僕ぐらいの年代でミュージシャン目指してたりとか、音楽好きだった人間って、全員フィッシュマンズが好きだったんですよ、特に男子。高校3年生ぐらいの頃に、インディーズバンド・ブームみたいなのが凄かったんですよ。それで代々木のチョコレートシティっていうライヴハウスによく観に行ってたんですね。ちょっと根暗そうな男子が観ている感じだったんですよ。忘れもしないのが、佐藤さんが待ってるお客さんに“帰れ!”みたいなこと言って“シーン”ってするんですよ。出だしでそれ言ったりするんで。
グローバー:何曲かやってノリが悪いから“帰れ!”じゃなくて?
オオヤ:前の方に座って次のバンドを待っちゃってる人たちが居たんですよ。
グローバー:あー、対バンってそういうのありますね。次のバンドの時、一番前で観たいから、ただただ居る人たちに “帰れ!出てけ!”と。
オオヤ:そう、水を打ったように静かになりますよね。でも、俺まだ高校生で結構ひねくれてたんで、それが結構気持ち良くて“おもしろ!”と思って。いろいろライヴ観に行ってたんですけど、ズレてる感じが魅力でしたね。
川村:パンクだったんですよね。
オオヤ:パンクですね。だからライブなんかも結構ギターの激しい間奏があったり、そういう激しい音とか多かったですね。
グローバー:みんなフィッシュマンズが好きだったっていうのは、どういう部分だったんでしょうね?
オオヤ:新しい感じがしたんですよね。パンクロックのサウンドの初期衝動じゃなくて、何らかの初期衝動を凄い感じてたんだと思います。
川村:なんかバランスが悪かったんでしょうね。後に思ったんだけど、今のJ-Popもそうだけど、結構バランスがいいものが多いじゃない。バランスがいいものの中にバランスが悪いものが突然入ってくるような、いわゆる違和感は凄くあったんじゃないかな。
■トランポリンで飛んでるだけのミュージック・ビデオ
川村:僕はビデオ作るとき、そんなに曲を聴かないんです。タイトルを見て、一回聴いて、できるだけ聴かないスタイルなんですけど、「ナイトクルージング」だけは死ぬほど聴いたんですよ。もうビデオを作れないぐらい聴いちゃった。それで映像は浮かんでるんだけど、もう今考えてることじゃ間に合わないなって感じの音だったんですよ。
グローバー:音の映像力みたいなことですかね?
川村:そうですね。まさしく映像力。しかも凄く好きになっちゃってるから、良いビデオ作りたいなっていう思いもあるじゃないですか。だからそうして一回作ったんですよ。ちゃんとフル尺作ったんです。で、佐藤くんが東雲のビデオのスタジオに来てですね、パッと観て“これってさぁ、あのシーンだけでいいんじゃない?”って言ったんですよ。で、“は?”って言って“そうか、あのシーンだけでいいっていう方法論があるんだな”ってその時ふと思って、“わかった、じゃあやり直すからまた明日”みたいな感じで、完パケしたやつをチャラにして。で、出来たのが今みんなが目にできている「ナイトクルージング」のビデオで、基本的にトランポリンで飛んでるだけのビデオなんです。僕にとっても新しかった。それが僕にとって大きな経験で、もしかしたら本当は日本の音楽ビデオ業界が経験したこととしても大きいんだと思うんだよね。映像を当てる上でそこまで振り切れるっていうのは普通ポップソングにはあり得ない。
■「オオヤユウスケが選ぶ、この歌詞、このフレーズが心に響く!フィッシュマンズ・ナンバー」TOP3!!
3位:Walking in the rhythm <1997 年>
オオヤ:これは「Walking in the rhythm」っていうフレーズが好きなんです。歌詞と言うべきなのか、その状態を示してるような言葉だと思うんですけど、まさにそうだなと。自分でカバーしたりもするんですけど、そのフレーズを繰り返していくと、逆にビートが踊ってくる。相互作用がある言葉だと思っています。
2位:Go Go Around This World <1994 年>
オオヤ:大学生ぐらいの自分には刺さる感じがあったんですよね。普通歌ってだいたい肯定してくれることが多くて、身近なシンプルな事を歌ってくれてることが多かったんですけど、自分はこういう流れていく時間の視点のことを言葉にすることって知らなかったんですね。感じてることが自分の中の視点で考えられるって言うのかな。
1位:SEASON <1996 年>
オオヤ:サビが終わった後が凄く好きで、「Get Round In The Season」っていうのがずっと繰り返えされるんですけど、そのフレーズがいちばん好きなんです。そこまで繋いで歌が続いていくんですけど、そこに来たときに初めて解放される感覚なんです。
まだまだ続くレジェンド『フィッシュマンズ』次週もお聴き逃しなく!
※この収録は大手町パークビル内、三菱地所の新オフィスで行なわれました。
PLAYLIST
100 ミリちょっとの / フィッシュマンズ
いなごが飛んでる / フィッシュマンズ
ナイトクルージング / フィッシュマンズ
Running Man / フィッシュマンズ
BABY BLUE / フィッシュマンズ
SEASON / フィッシュマンズ
※放送後1週間は右のタイムフリーボタンでお聴きいただけます。