今週のレジェンドは、先日、中心メンバーであるエディの訃報が伝えられたヴァン・ヘイレン!ゲストにはギタリストの野村義男さん、雑誌「BURRN!」編集長の広瀬和生さんをお迎えしました。
■ヴァン・ヘイレンとの出会い
野村:衝撃だったもん。いちばん最初はジャニーズ事務所の合宿所ですよ。当時13歳か14歳ですね。まだエレキギターも持ってない頃じゃないかな、1stアルバムが置いてあって。ジャケットを見た時にエレキが見えたんですよ。まだ時代的には白黒フランケン、あの赤が入ってないのを見て“あ、かっけー”とか思って聴いたんだけど、初めて聴く音楽でしたね。
グローバー:エレキギター大好きでもちろんそういう音楽たくさん聴いてたんだけど初めて聴いた感じがしたって何だったんでしょうね?
野村:これね難しいんですけど、ヴァン・ヘイレンが出てきた時のあの1stの作り方とかって感じたことない物があったんですよ。とにかく人数分しか音入ってないし、ライブをそのままを持ってきた感じもあるし、曲の作り方もすごいカッコイイんですよ。練ってるのか練ってないのか分かんないけどストレートみたいな。なんとも言えない“こんなにスカッとしたロックがあるんだ”っていう。“なんだろう?この作り方”って。
グローバー:最初にアルバムの中でいちばんハマった曲ってどれでした?
野村:1曲目ですよ、「Runnin' with the Devil」。1曲目にやられちゃったから何回も聴くようになって。ジャニーズ事務所にそれがなかったら多分僕は人生が全く変わってたかも知れない。
グローバー:広瀬さんはヴァン・ヘイレンのメンバーとお仕事もしてきてますが最初の出会いは?
広瀬:最初の出会いはやっぱりシングルカットされた「You Really Got Me」ですよね。僕も高校から大学っていうのは色んな番組を聴いてたんでどの番組だったか覚えてないんですけどFMだと思うんですよね多分。あの曲に関してはギターが凄いというよりもキンクスのカバーだから古いけど空気感が70年代のロックじゃないんですよ。来るべき80年代のロックを予感させるそういう新しさがあったんですね。だからあの曲も含めて1st アルバム聴くとですねレッド・ツエッペリンだとかディープパープル、レインボー、ジェフ・ベックとかエリック・クラプトンだとかそういう人たち、偉大なバンドが持っていたものとは違う新しさがあったんですよ。でも“何が新しいんだろう?”っていうのはまず高校生ぐらいだとよく分かんないんですけど“とにかく違うぞ!”と。しかもアルバムを買うとギターが凄い。当時はどう凄いのかも自分で分からないけど年上の人に聞くと“どうやって弾いてるか解らない”と。当時はいろんな情報が少なかったこともあって神秘的なんだけど、でもいわゆるブリティッシュ・ロックの偉人たちが持ってる神秘性とは違うんですよね、カラッと明るい中にさらっと凄いことやってる。
野村:そうそうそう、すっごい乾いてる。
広瀬:ラウドなだけじゃなくて太いんですよね。これも70年代ロックとはちょっと違うものがあってエディの使ってる機材とかいろんなものがそれを生み出してるわけですけれども全体に求めている音像そのものが新時代だった気がしますね。
グローバー:エディ・ヴァン・ヘイレンの頭の中に鳴ってた音色っていうのが次の時代を作っていったんだ。
野村:だってエディが登場してからみんながこぞってエディと同じ感じに作ろうっていう風にギタリスト達が動き始めたもん。
広瀬:だからギターの歴史はエディ以前とエディ以降に分かれると僕は思ってる。
グローバー:当時、ロックシーンはすぐにそういうものがパッと広がったんですか?
広瀬:当時はね、パンクがあってニュー・ウェーヴが出てくるっていう時でロックの中では“ハードロックは古い”と言われてた時代ですよね。しかもアメリカのメインストリームはディスコですよね。だからそういう時代にあってハードロックで新しいバンドが出てきてヒットさせるってちょっとありえないことだったんですよ。それをやってしまったヴァン・ヘイレンっていうのは偉大なんですよね。当時は僕はまあ“いいバンド出てきたな”ぐらいでしたけど音楽業界的に言うとこれはちょっと掟破りな存在だった気がしますよ。
グローバー:誰も予測してない角度から予測してない音が出てきちゃった。
広瀬:そう、音楽雑誌とかは“ハード・ロックは死んだ”と言ってたんですから。
野村:ロックンロール・イズ・デッドなんだね、ハードロック死んじゃってるんだ。
広瀬:あとそういうのハードロックを守る人たちは“ブリティッシュこそ本道”と言ってるわけだからアメリカからこういうバンドが出てきたっていうこと自体がもう革命的でしたね。
■エディ・ヴァン・ヘイレンの奏法
野村:言葉的にライトハンド奏法って言ってんのは日本だけで世界的にはタッピングですよね。
広瀬:右手を使ったタッピングですよね。
野村:タリラリラリラリラ〜って左だけで弾いてるのに対して右手を足してタリリっていう届かない所で弾くそういう弾き方なんですけど昔からあるんです。クラシックギターの弾き方の中にも“左手届かないから右手でこの音を出してね”とかって。だからあったんだけどそれを“こんな風に音階とかメロディーつけれるんだよ”ってエレキギターでやっちゃったのがエディだったんじゃないかなと。
グローバー:そこが革命的だったんだ。広瀬さん、ロック史の中でもこれは今だに凄いことですか?
広瀬:あった奏法なんだけど使い方ですよ。あの速さでこのフレーズで使うというのはは革命的でしたね。エディがタッピング使ったのも彼の発想としては元々ピアノ弾いてた人なんで両手使うのが当たり前、だから届かない所は右手で叩くというのは当たり前っていう発想だからこそ凄かったんですよね。ギターを自分が改革してやろうと本人は思ってなかった気がするんですよ。ところが周りが見て“おお、すげえな!”ということになったという。“え、なんで?どこが?”みたいな気がするんですよね。
野村:自分で気づいてなかった。
広瀬:そう “お前凄いな!え?なんで?だってコレ届かないから右手でやるしかないじゃん”みたいな。
グローバー:だから無邪気な抜けのいい楽しい音として響いてきて。
広瀬:そうそう、そこですよね。
グローバー:これ見た人は真似すると音出るから、その後出てくるギターヒーローはみんなこれをやるわけですもんね。
広瀬:それも当たり前にやるようになるというところが凄いんですよね。だからこれは専売特許というよりも奏法の新しい歴史を作ったということですから。
野村:本当にそうですね。
■ギタリスト野村義男が選ぶ、
「これぞエディの超絶プレイ炸裂!ギターに唸るヴァン・ヘイレン曲」TOP3!!!
野村:どの曲も本当素晴らしいんで、炸裂っていうよりは曲の良さも含めて選びました。
3位:Dreams
野村:これはやっぱ外せないです。聴きどころはハーモニクス使い方じゃないかな。歌前とかに入る瞬間のポーンっていうフレットの上で弦をちょっと軽く触って。それはまた“ギター?”っていう使い方をしてくれてて、本当にいろんなアイディアがあったんだなーっていうのを思わせてくれて。それはしかもカッコイイとかじゃなくて感動的なタイミングで入ってるアレがすっごい素敵です。
2位:Hot for Teacher
野村:あのMVの映像を観て学校の机の上をギターを持って歩きたいと何回思ったことか。“あれやりてー”って凄い思わせてもらいましたね。
1位:Eruption
野村:初めて聞いた時には全く何も分からなかった。レコードの中では「You Really Got Me」の前にそれがかかってギターソロから次のイントロが始まる直前の素が絶妙なんですよ。息を吸おうかな?と思ったらンガググってきちゃう。“ンガググ”なんですよあれは。
グローバー:あれサザエさんのやつですか?!だから僕らしっくりくるんだ!
野村:そうそうサザエさんの。あれ裏から入ってるから。そういうタイミングとかもそういう気持ちで聴いてみたらそれぐらい「Eruption」を好きになる。
まだまだ続くレジェンド『ヴァン・ヘイレン』来週もお聴き逃しなく!
PLAYLIST
Runnin' with the Devil / Van Halen
Dreams / Van Halen
Somebody Get Me a Doctor / Van Halen
Why Can't This Be Love / Van Halen
Hot For Teacher / Van Halen
Eruption / Van Halen
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