今週のテーマは、今年生誕250周年!
偉大なる作曲家にしてピアニストのベートーヴェン!
ゲストには、稲垣吾郎さん、クラシックソムリエ 田中泰さんをお迎えしました。
■ベートーヴェンとの出会い
グローバー:稲垣吾郎さんと言えば、舞台『No.9 -不滅の旋律-』でベートーヴェンを演じていらっしゃいます。来月には再々公演が行われますが、もう昔っからクラシック、ベートーヴェン好きでした?
稲垣:いえ、そんなにわからなかったんですけれども、ベートーヴェンと言うとやっぱり音楽室のあの肖像画の赤いスカーフをしてこちらを睨みつけてる髪の毛がちょっとクセ毛で、そこはちょっと共感があったんですけど(笑)舞台をやるようになってからですね勉強させて頂いてベートーヴェンに触れて。
グローバー:ただ聴くのと自分が“ベートーヴェンになるぞ”というのはまた全然違いますでしょ?
稲垣:そうですね。だいぶ変わってきましたね初演再演とあって。
グローバー:やっていく中で今感じてるベートーヴェンのここが好きだな、魅力、どんな風に感じてます?
稲垣:そうですね、最初はもう本当にベートーヴェンって“孤高の天才”って言ってなんか全くイメージがつかなかったんですけど、やっぱ演じてるととても人間らしくてなんかすごく親近感沸くって言ったら怒られちゃいそうですけれども、なんか意外に普通の人なんだなぁっていう。作り出す音楽とかはもう凄いんですけれども。
グローバー:一般人がワオッ!ってなるようなエピソードもあるイメージですよね?
田中:そうですよね、やっぱり作品と比べて本当に人間臭いですよね。なんか浮浪者と間違えられて捕まってしまったりとか、コーヒーが大好きで毎日60粒数えて飲んでたとかね。こだわりですよね。
グローバー:そこ稲垣さんちょっと自分とも近いかなとか?
稲垣:ベートーヴェンほど人付き合いが下手ではないと思うんですけど(笑)でも意外にちゃんと人付き合いが社交的であったりとか、しっかりパトロンを抱えていたりとか、上手く人とも渡ってたのかな?と思ったり。
田中:その通りですよね。特に女性にはとっても優しかったらしいですからね。
稲垣:そこは僕とそっくりかもしれません(笑)
グローバー:いちばん好きなベートーヴェン・ナンバーなんでしょう?
稲垣:やっぱり「エリーゼのために」ですかね。最初にベートーヴェンを知った曲っていうのもあるんですけども、ただびっくりしたのがあの「運命」とか激しい曲を作った人と同じ作曲家なんだ!と。どの曲も同じ音楽家が作った曲と思えないような曲だったり、あと女性の話もね今出ましたけど恋のエピソードとかを色々と知っていくと…
グローバー:何ですか?何があるんですか?この曲には。
稲垣:色々諸説ありますよね。
田中:そうなんですよ、本当は「テレーゼのために」だったらしいんですけど、ベートヴェンは非常に字が下手くそだったんで、それを誰かが「エリーゼ」って読んでしまっていつのまにか「エリーゼ」なってしまったんですけど(笑)でも女性に捧げたというのは変わりないですからね。
グローバー:田中さんは別所哲也さんナビゲートの番組J-WAVE TOKYO MORNING RADIO内でもモーニングクラシックでいろんなこういう面白い話、魅力的な話されてるんですがベートーヴェンと田中さんが初めて出会った時覚えてますか?
田中:本当に意識して聴いたのは高校の音楽鑑賞の時間でしたね。ピアノソナタの「悲愴」を先生が流してくれたんですよ。このメロディーの第2楽章は本当に耳について美しかったんで“これは絶対に買わなきゃ”ってすぐレコードを買いに行きましたね。
グローバー:“ここにグッときちゃったんだ俺は!”っていうのは?
田中:ベートーヴェンと言うと「運命」に象徴されるような凄く激しい音楽っていうイメージがずっと僕の中にはあったんですよね。特にオーケストラを聴くとそうだったんですけど、そのベートーヴェンがこんなに優しいロマンティックな音楽を書いてくれるっていうこと自体がちょっとショックでしたよね。しかも歌いやすいメロディじゃないですか、ポップスにもなってますしね。あれが本当に耳について“こういう音楽が世の中にはあるんだな”っていう一つの目覚めでしたね。
グローバー:稲垣さんの「エリーゼのために」ともちょっと繋がってくるというか。
稲垣:そう意外なね。やっぱみんな激しいイメージ。
グローバー:肖像画のイメージもそうだし、でもふと優しいメロディ誰でも覚えられる口ずさめるメロディーが出てくるとキューンとベートーヴェンに持っていかれる。
田中:その通りですよ。
稲垣:ベートーヴェンの周りの女性もそれにやられたんでしょう。そこにちょっと重きを置いて演じたいと思います。
グローバー:田中さんはいちばん好きなベートーヴェン、なんですか?
田中:そうですね一般の人にも理解してもらいたい僕の好きな曲っていう意味でいうと「交響曲第7番」の「第2楽章」をぜひ聴いていただきたいなと思うんですよね。ベートーヴェンは9つの交響曲を残してるんですけどその7番目ですよね、この第2楽章というのは本当に“優雅の極み”みたいな曲で、 ワーグナーが“舞踏の聖化”という言葉を当てたぐらいだんだんだんだん高揚していって天にも登っていくようなイメージがあるって言われてるんですよ。でも逆にシューマンの義理のお父さんクララ・シューマンのお父さんに当たる人は“ベートーヴェンってもしかして酔っ払った時に書いたんじゃないの?”って言ってるような曲でもあるんですよね、賛否両論。その時代の本当に尖った革新的な音楽でもあったんですよね。 しかも現代に照らし合わせてみると例えば「英国王のスピーチ」っていう映画とか「ノウイング」っていう映画で使われてるんです。
■史上初のフリーランス・ミュージシャン
グローバー:稲垣さんはいろんな楽曲を身体に入れてベートーヴェン役を演じてきてますが、演じてる時いちばんこだわってるところどこですか?
稲垣:もう素っ裸になることですかね。僕はベートーヴェンと思い込んで素っ裸になった時に僕はベートーヴェンであるって言う必要があると言うか、なんか裸の自分を見せる。僕は長い芸能生活の中でどっちかって言うと作ってしまったりカッコつけてしまったりっていうことが多いんですけどもベートーヴェン演じる時っていうのは剥き出しですね、剥き出し五郎な感じで。
グローバー:田中さんいま吾郎さんの話聞いてたら思いましたけど、ベートーヴェンの音楽ってなんかものすごい着飾って華美な格好良さもあるし、でも丸裸もあるしっていうまさにそういう音楽かも知れないですね。
田中:そうですよね、モーツァルトやハイドンっていうその前の時代の人たちは宮廷から頼まれた曲を作ったりしてたんですけど、そうじゃない本当に自分の感情をその中に押し込めてその時々に応じて新しい音楽を作っていったっていうのが多分ベートーヴェンなんですよね。
グローバー:時代が変わって王様、貴族のオーダーを聞いて食べていける時代じゃなくなったっていう。
田中:そうですね史上初のフリーランスなんて言われ方をしたんですけどね。自分の為の音楽を作ったっていうことですよね。
グローバー:そこで丸裸の自分を音楽に込めたというのはたくさんあったんでしょうね。
■舞台『No.9 -不滅の旋律-』」ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン役
稲垣吾郎が選ぶ「ワインを飲みながら聴きたいベートーヴェン曲」TOP3!!!
3位:「ヴァイオリンソナタ第8 番第1楽章」/ ローラ・ボベスコ
稲垣:これピアノとバイオリンじゃないですか、なんかちょっと男と女みたいな感じですよね。なんか男と女の駆け引きとか近づいたり離れたりとか、なんかちょっと女性とワイン飲む時とかいいなと思ったり(笑)可愛らしい曲なので一緒に飲む方もあんまり敷居の高い人とって感じもしないんでリラックスもできるかなと。
2位:「ピアノ協奏曲 第5 番『皇帝』第2 楽章」
稲垣:これはやっぱりオーケストラで生で見てみたいですね、優雅で壮大な曲。
グローバー:ワイン飲んでると気持ちとしてはどうなっていくやつですか?
稲垣:どうなっていくんでしょうね?もうなんか空に飛んでいくような感じですよね。
田中:この第2楽章って多分ベートーヴェンが残した数多のメロディー中で1、2を争うほど美しく優しいメロディだと僕は思ってるんですよね、本当に美しい。切ないです。
稲垣:そうですよね。僕切ないの好きなんです(笑)
1位:「ピアノソナタ 第30 番 第3 楽章」
稲垣:ワインというかピアノの中でもいちばん好きですね。最近好きになった曲です。舞台の名シーンで使われてて、この曲が舞台中に流れる時だけ実は僕は少し休んで居られるんです。ベートーヴェンが居眠りと言うか机に突っ伏して目をつぶってるシーンで他のキャストたちが後ろでセリフを交わす時に流れてる曲なので結構僕は普通に聴いてるんです。
グローバー:もうベートーヴェンの感情はこの楽曲に任せて自分が聴いていられる。
稲垣:そうです、一緒に共演してる方もベートーヴェンなんです僕にとってみると。
グローバー:舞台観に行く方はこのシーンそんな風にも五郎さんのベートーヴェンご覧になってもいいかも知れないですね。
まだまだ続くレジェンド「ベートーヴェン」来週もお聴き逃しなく!
PLAYLIST
エリーゼのために / ラン・ラン
交響曲第7 番?第2 楽章 / カルロス・クライバー指揮、
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ピアノソナタ 第12 番 1 楽章 / アンドラーシュ・シフ
ディアベリのワルツによる33 の変奏曲 / フリードリヒ・グルダ
弦楽四重奏曲第13 番 第5 楽章「カヴァティーナ」/ ブダペスト弦楽四重奏団
ピアノソナタ 第30 番 第3 楽章 / グレン・グールド
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