今週は、今年生誕250周年!ベートーヴェンのPart2!
ゲストには引き続き、稲垣吾郎さん、クラシックソムリエ 田中泰さんをお迎えしました。
■注目している指揮者
グローバー:注目している指揮者をアンケートで伺ったら、お二人とも同じ人物ということなんですね。
稲垣:これは田中さんに教えていただいたんです。
田中:でもちゃんとそれを覚えてらっしゃるのは凄いですね。
稲垣:いやいや、もうその後CDを買い漁りましたからね。
グローバー:なんていう方なんですか?
稲垣:テオドール・クルレンツィスですね。
田中:今年本当はベートーヴェン・イヤーで演奏しに来る予定で、稲垣さんと一緒に行こうなんて話をしてたんです。残念ながら来られなくなったんですけど、ベートーヴェンは得意としてますよね。
グローバー:何が他の指揮者と違うんですか?
田中:彼はムジカエテルナっていう自分の理想のオーケストラをまず作り上げたんですよね、そのオーケストラを使って自分の好きなことができる。今の時代ってベートーヴェンの昔の時代に戻るような演奏っていうのが一つ評価されてるんです。今の楽器とベートーヴェンの時代の楽器ってちょっと違うんですよ、進化と言うか変化してる訳です。それは何かって言うと、大きなホールにちゃんと響くような楽器に対応してきてる訳ですよね。たけど昔は昔の良さがあって、繊細な音を好む。それの良さを残しつつ現代のオーケストラの最高にパワーのある部分をうまく融合させて新しい音楽を作り上げてるのはクルレンツィスだと思うんですよ。
稲垣:へぇー、昔のエッセンスっていうのは僕はわからなかったです。とても現代的と言うか、現代の音楽を聴いてる人の耳に合わせてレコーディングをしたのかなっていうぐらいに凄い迫力ありますよね。
田中:あとスピード感があるんですよね。
稲垣:でもその昔の楽器のエッセンスを取り入れてるっていうのは面白いですね。
田中:面白いですよね。
グローバー:パッと初めて聴いた時、稲垣さんとしては“最新の”って感じでしたか?
稲垣:なんだろなCGのような立体感を感じると言うか。
田中:いい表現ですね、その通りだと思いますよ。メリハリがあるしね。
稲垣:分かりやすいと思います。僕も初めて聴いた時に“これ普通のベートーヴェンとは違うな”と。とっても分かりやすく他の指揮者の方と他の楽団の方とも違うって感じで。
■クラシックソムリエ:田中泰がセレクトする
「これは意外!ベートーヴェン初心者にも聴いて欲しい隠れ名曲TOP3」
田中:隠れてるのか表に出てるのかちょっと僕の判断ではできないんですけれども、これはちょっと面白いから聴いて欲しいなっていうのをセレクトしました
3位:トルコ行進曲
田中:トルコ行進曲というとモーツァルトのトルコ行進曲がとても有名なんですけれども、ベートーヴェンのトルコ行進曲もそれに負けないぐらい素晴らしい曲なんですよね。元々「アテネの廃墟」っていう劇音楽の中でのオーケストラ曲だったんですけど、それをピアノに編曲したものが僕らの子供の頃のピアノ教本の中に入ってるんですよね。ちなみに僕が初めてピアノの発表会で弾いたのがこの曲だったんです。ただしアレンジが全然違うんで今プロが弾くのは本当に難しい演奏なんですけれども、僕らが弾けるようなアレンジも出来てちゃんと曲が成り立つところが素晴らしいなと思ってます。素人が弾いてもちゃんと雄大な曲になってくれるっていう。
2位:歌曲「自然における神の栄光」
田中:これは歌曲ですね。ベートーヴェンの歌曲っていうとそれほど有名な曲っての多くはないんですけど、この曲だけは忘れられなくて「自然における神の栄光」っていう歌があるんですよね。これまた個人的な思い出なんですけども、高校の時の校内合唱コンクールっていうのがあってそこで僕はピアノの伴奏をしてこの曲を合唱で歌ったっていう思い出の曲なんです。これも第九なんかに通じるベートーヴェンの“崇高な思想”みたいなものをそのまま具現化された音楽ですね。聴くと“あぁーベートーヴェンだなぁ”って感じます。
1位: 失われた小銭への怒り
田中:これはもうタイトルからして笑っちゃうんですけれども「失われた小銭への怒り」というピアノ曲ですよね。
グローバー:あれ?ベートーヴェンは女性にも優しいし子供にも弾けるようなピアノを作るっていう人が「失われた小銭への怒り」ですか。
田中:ただこれねベートーヴェン名誉のために付け加えると、ベートーヴェンが付けたタイトルじゃないんですよね。ロンド・ア・カプリッチョっていうのが正式な名称なんですけど、後から聴いた人が“これはこういう内容だろう”って勝手に言ってたのが曲になってしまったという。
グローバー:“ベートーヴェン小銭失くして怒ってたんじゃないの”って?
稲垣:このタイトル、ベートーヴェンは怒りますよね。
田中:でも聴くとまさにこのイメージだなっていう曲なんですよねー。なんかベートーヴェンが転がってる小銭を慌てて坂道を追っかけてるんじゃないかっていう。
稲垣:ベートーヴェンのちょっとチャーミングなとこですね。怒ってる姿も可愛らしい。
■ベートーヴェンの最大の功績
グローバー:ベートーヴェンがプレイした音楽のエッセンスは今多分ジャズのピアニストでも好きで取り入れてる人もたくさん居るし、ロックジャズ以外いろんな音楽作る人が影響を与えていないジャンルが無いんじゃないかというぐらいのものなんだと思います。今クラシック史も含めてですけど音楽界って見た時にベートーヴェンの最大の功績どんな点にあるんでしょうか?
田中:やっぱり人々に勇気を与えてくれるとこだと思いますよね、背中をしてくれると言うかね。ベートーヴェン自身が本当に辛いことがあってもそれを乗り越えて素晴らしいことを成し遂げようじゃないかっていう風な人生を送った人ですからね、ベートーヴェンのその音楽を聴いた時に何かで救われるような気がしたり“頑張ろうかな”って思わせてくれる部分がありますよね。
グローバー:今日これを聴いてベートーヴェンをもっと知りたいなと思った方にどんな風に楽しんでいただきたいと思いますか?
田中:まずはとにかくベートーヴェンのあらゆる面を体験してもらいたいですね。特にピアノに関してはもう吾郎さんもこれだけ浸ってると同じように奥の深さは並大抵じゃないですよね。しかも32曲一個一個全部違うピアノソナタを残していたり、ピアノ協奏曲でも本当に嵐の中からやすらぎの極地みたいなところまでを聴かせてくれる、そういう意味でいうと自分の今の心境に何が合ってるのかって言うことを見つけるような体験ができるんじゃないのかなと思ってます。
■キャッチコピー
稲垣:「ベートーヴェンとは…俳優稲垣吾郎が生涯演じていく役」である!
すいません、なんか自分のキャッチコピーになっちゃいましたね、大丈夫ですか?
グローバー:それがまたベートーヴェンっぽかった。
稲垣:でもね、本当にベートーヴェンが亡くなられたのが56歳じゃないですか、まあ少なくとも56歳までは絶対演じたいですし、56歳とは言わず生涯演じても追い求めても追い求めても掴めない憧れのものだと思うんです。だから生涯かけて追い求めるものなのかなって。
グローバー:グッと来ましたね、田中さんのキャッチコピーはなんでしょうか?
田中:「ベートーヴェンとは… 心のワクチン」である!
今年限定になるかもしれないんですけど、やっぱり先ほども申し上げましたけど、本当に辛いことがあっても頑張ろうって気にさせてくれるし、背中を押してくれるし、癒してくれるし、もう全ての要素を持ってますよね。そして傷ついた心を本当に良い方向に持っていってくれる力が彼の音楽にはあると思います。
2週に渡るレジェンド『ベートーヴェン』最後は年末も近いということで「交響曲第九番 合唱付き」演奏はヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でフィナーレを飾りました。
PLAYLIST
交響曲第5 番「運命」/ テオドール・クルレンツィス指揮、ムジカエテルナ
ヴァイオリン協奏曲 第1楽章 / コパチンスカヤ(ヴァイオリン)、
フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮、シャンゼリゼ管弦楽団
失われた小銭への怒り / アナトール・ウゴルスキ(ピアノ)
ピアノソナタ 第32 番 第2 楽章 / ペーター・レーゼル
交響曲第6番「田園」/ パーヴォ・ヤルヴィ指揮、
ドイツ・カンマー・フィルハーモニー・ブレーメン
交響曲第九番 合唱付き/ ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
■放送後1週間は右のRadikoタイムフリーボタンでお聴きいただけます。
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