今週のレジェンドは、R&B ガールズグループの礎を築いた3人組TLC!ゲストには音楽プロデューサー松尾潔さん、SPEED 島袋寛子さんをお迎えしました。
■TLCとの出会い
松尾:正式にデビューしたのって92年とかだと思うんですけど91年の段階で音源とは頂いてまして“この子達は売れますよ”なんて話を普通にしてましたね。彼女たちが出てくる背景として80年代終わりからのボビー・ブラウンとかガイとかのニュージャックスイングブームっていうのとかテディ・ライリーとかジャム&ルイスとかいろんなプロデューサーが出てくる中でLA&ベビーフェイスっていうチームがすごく台頭してきて彼らがアリスタっていう大きなレーベルと組んで満を持して自分たちのレーベル「LaFace」を作ると。そこからこれからどんどんスターを出していくんだっていう時に最初に上がってきた人たちだからTLCは元から期待度高かったんですよ。それまでLA&ベビーフェイスはボビー・ブラウンはじめたくさんヒット曲出してましたけどきっと自分たちのレーベルだからそれはいいの出してくるだろうなと思ってたんですがその上を行っていたんですね。まず最初に聴いたのは『Ain’t 2 Proud 2 Beg』という曲ですよ、言葉自体が非常に特別なもので、これはモータウンレコードを代表するボーカルグループだったテンプテーションズの古いヒット曲と同じタイトルなんです。だから日本に置き換えてみると今、日本で女性の若い子達がデビューする時に『STEADY』とか『BODY&SOUL』っていうタイトルでデビューしたらなんかそこに意味を感じるじゃないですか。だからこれってLaFaceが堂々とモータウンにとってのテンプテーションズと同じように自分たちにとってのファーストガールズってことで世に送り出すんだなっていうマニフェストとしても取れたんですよね。でも曲ももちろんリズムも跳ねてるし、彼ららしいメロディアスな感じもあるし、これはいっちゃうでしょって感じありましたよね。
グローバー:島袋さんはTLCと出会った時のこと覚えてますか?
島袋:いちばん初めに出会ったのは私たちSPEEDが4人じゃなくて7人グループだったん頃です。沖縄のタレント養成所でやんちゃで問題児で。その時メンバーの仁絵ちゃんが“すごいカッコイイいいグループが居る、みんなに見て欲しい。私達はここに向かった方がいいと思う。見て、とにかく!”って言うのでファストフード店にみんなでオシャレして行ったんです。そこにジュークボックス的なものがあってそれで仁絵ちゃんがかけてくれて。
松尾:あー、レーザージュークって当時あったもんね、ビデオが観れるのね。
グローバー:じゃあ映像ごとまず観たんですか
島袋:そうです、それで観たのが「Waterfalls」でその時の事は鮮明に覚えてますね、みんなでテーブル囲んでモニターの前で観たっていう。たぶん7人グループを結成してスタイルとかコンセプトとかどうする?みたいな時だったのかな。
松尾:中学2年生が小学5年生にプレゼンしてるような状況ですよ、もうちょっと前ぐらいかな?
島袋:そうですね、デビュー前なので。
グローバー:島袋さんご自身は観ながらどんなこと思って観てました?
島袋:「Waterfalls」のビデオは英語がわからなくても映像で意味がだいたい伝わる映像だったんですよ。それでダンスとかもガツガツ踊ってないのに…”なんだこの世界は”って。格好とか服装とかも“ハァ〜ここね、コレね”と思ってみんなでもうカッコイイ!コレだ!って。
松尾:このカッコ良さがちゃんと分かる小学生っていうのも当時限られてたかも知れないけどね。
■グループとしての魅力
グローバー:松尾さん、「Waterfalls」は本当に衝撃的だったという事ですが、グループとしての魅力、そしてこのプロデュースワーク、チーム全体の凄み、この曲どこに感じましたか?
松尾:若い女の子=ハイトーンでキャピっとしてるみたいな当時世界中で“若い女の子とはこういうものだ”って言う決め付けを軽やかにすり抜けるようなこの抜け感の高い踊り。けどこれ実際踊ってみるとわかるけど難しいんですよ。
グローバー:ちょっとマイクの前に立ったまま腰をちょっと前傾にしながら腕だけであれだけ大きく見せるっていうのは大変なことなんだ?
島袋:TLCはとにかくダンスも上手いんですよ。元々の持ってるグルーヴがないとあの踊り方はできないです。どんだけ練習しても多分何十年かかるんじゃないですか?できないかもしれないぐらいの。あれは無理です、あのカッコ良さは。
グローバー:歌詞の世界もシリアスで深いからそこに島袋さんおっしゃる踊りの表現と歌声と含めてほんとクラシックな曲になりましたよね。
松尾:ほんとそうですよね。当時アメリカだけの問題じゃなかったけれども、今でこそ日本で格差社会なんて言葉よく使うようになったけどもそこを直視した曲ですよね。生きるやる気もなくなってるような若い人たちがどうやって前向いていけばいいかというすごい啓発するようなとこに向かってるし、曲自体がそういう曲なのにダンスとかは真似したくなるようなポップさがあるっていうのはまたよく出来てると僕は思うんですよね。
島袋:TLCってメッセージを伝えながらも伝え方がものすごく押し付けじゃなく、それがすごいなぁと思って。
松尾:難しいことをしかめっ面で伝えるんじゃなくてやっぱりそれポップカルチャーなんだよね。
グローバー:もう亡くなってしまいましたけどレフト・アイさんがそういう強いメッセージの曲をやるときになるべくフレンドリーにやりたいんだっていうのをプロデュースチームと話す時に大事に言ってたみたいですよね。
松尾:あとやっぱり大切なことほど小さな声で。これモテる男の人ってそうだと思いません?もっと言うともっとモテる人っていうのは自分で喋ることさえせずに周りに語らせるかもしんない。つまりTLCって当時びっくりするような宣伝費で日本で売り出したというよりも知った人がとにかく話したくなるような、そういう形で人気を得たグループなのでそこはやっぱりね人気というものにちゃんと実態があったと思う、シーンがあったと思いますよ。
■ジャパニーズR&B シーンを牽引してきた音楽プロデューサー松尾潔が選ぶ、
「2021 年の今こそ聴いて欲しいTLC の『美メロ・ナンバー』」TOP3!!!
3位:Joy Ride
松尾: 2017年出した『TLC』っていうタイトルのもう二人体制になってからのアルバムなんですけれどもその中に収められていた曲でメロディが大人の味わいで大人TLCの魅力に満ちた曲ですね。TLCっていうのはもうスタートダッシュが凄かったからライバルは他のアーティストじゃなくて過去の自分達っていう。これはねもうすごく贅沢な話なんですよトップの景色を見た人だけが感じることなんだけども、けどずっとそこと戦い続けた歴史だったと思うし、ましてや3人という決して多くもない構成が二人になるというところでどうやってこの存続させるかっていうことも向き合ってその先にたどり着いた一つの美しい形だと思うので決してHappyとは言えないような出来事もこのグループの道のりの中では決して回り道ではなかったんだと。過去は変えられないけれどもその過去の意味を変える歩みを誠実に前に進んできた彼女達だから歌うことができたっていうそんな1曲だと思います。
2位:Diggin’ On You (L.A.’s Live Edit)
松尾: Diggin’ On Youの L.A.’s ライブエディットっていうバージョンがありまして、プロデューサーのL.A.リードがスタジオで作り上げた擬似ライブバージョンなんですけどビデオもちょっと素敵なライブ仕立てになってまして音の方も遊び心全開でよりスタンダード性っていうのかな、そこを高めるような作りになってて、それこそスターになったからこそできた遊びだと思います。
1位:Baby-Baby-Baby
グローバー:これは島袋さんもアンケートで「隠れた名曲教えてください」に書いてありました。
島袋:どれが隠れてるのか分からなかったんですけど(笑)
松尾:そうだよね、これだけアルバム売れちゃうとね。
島袋:そう、だけどこの曲は…最高です。
松尾:ね、もうキュンキュンするよね!
グローバー:いいですね、2人ともこれだけ音楽のキャリア、知識ある人が“ん〜最高”しか言えない(笑)
松尾:あははは(笑)だけどほんとそうです言葉出てこないし、いらないとも言える。
島袋:世界中の人が聴いて良さが分かる。
松尾:そうかも、それいいこと言った、だからもう取説いらないんですよこれ。
まだまだ続く『TLC』来週もお聴き逃しなく!
PLAYLIST
Ain’t 2 Proud 2 Beg / TLC
Waterfalls / TLC
Diggin’ On You / TLC
No Scrubs / TLC
Body & Soul / SPEED
Baby-Baby-Baby / TLC
■放送後1週間は右下のRadikoタイムフリーボタンでお聴きいただけます。
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