今週は、アデルのPart2!ゲストには引き続き、音楽プロデューサー 本間昭光さん、 シンガーソングライター 遥海さんをお迎えしました。
■アデルのライブ・パフォーマンス
グローバー:まだ来日公演は実現してないんですが、ライブのアデル、本間さんはグラミーの現場で生の歌声を聴いている。
本間:3回聴いてるんですよね。1回目がピアノで「All I Ask」歌ってる時ちょっとトラブっちゃって。でも何とも言えないやりきった凄さに感動しちゃったんですよ。“普通止めるよな”みたいな感じ。
グローバー:プロデューサーはまずそこが気になったんですね。
本間:ピアノがビンビンいっちゃって。
グローバー:マイクが落っこっちゃって音拾っちゃって。
本間:“あれ?あれ?”ってみんなで周りで言ってて。だけどもう気にせず歌ってる。でも後のインタビューからするともう悔しくて泣いたと。それがあって、次がオープニングパフォーマンスだったんですよね。“なにもトラブルありませんように。。”みたいな感じで祈りながら観てて、もう全然歌いきって。もう素晴らしかったですよ。グラミーのオープニングですよ、普通ど緊張する。でも全然ありのままの感じで。3回目がジョージ・マイケルのトリビュートライブったんですけどもね。その時もまたトラブっちゃったんですよ。止まって。そしたら放送禁止用語をマイクで言っちゃって(笑)で、終わってから“さっきは失礼しました、ちょっと言っちゃったわ”みたいな感じでさらっと言っちゃってるところが可愛い。
グローバー:あの方のもの凄いチャーミングな仕草とかも魅力ですよね。ふーっとこう年相応の素顔が見える時と、歌ってる時の“菩薩かな?”というね。もう年齢がわからない。この後光は何なんだ?というところも含めて目の前でライブ観たいんですが。遥海さんはまだ観れてないけども動画とかでいろいろご覧になってて、印象に残ってるライブパフォーマンスありますか?
遥海: 「Set Fire To The Rain」のLive at The Royal Albert Hallっていう動画がめっちゃ良かったんですよねー。私はまだデビュー前とかだったんですけど、なんか“歌辞めたい”って思う瞬間ってあるんですよ。頑張ってなんか先が見えないなーみたいな時にこの曲を聴いて“叶うのが難しいのは夢が大きいからだろう”って言ってくれてたような感じがして、なぜかっていうとこの時のバンドセットがビッグバンドっていうかストリングスまで入ってて。“私こういうライブがしたいから、こういう目標があるから歌ってるんだ”っていう初心に戻してくれたのがこの映像なんですよね。だからめちゃくちゃ好きです。
■いきものがかり、浜崎あゆみ、ポルノグラフィティなど…
数多くの大ヒット曲を手がけてきた音楽プロデューサー、本間昭光セレクト!
「このボーカル力に感嘆!感涙!! 歌声が素晴らしいアデル曲」TOP3!!!
3位:Water Under The Bridge <『25』2015年>
本間:こういうちょっとエレクトリカルなオケに対してでも自分のアプローチっていうのが変らずできるんだっていうところがすごい面白かったんですよね。存在感も普通に変わらずできてる。そこはエンジニアとの関係性なのか、人に寄ってはマイクは絶対これ以外使わないっていう人もやっぱ居るじゃないですか。なぜかというとそのマイクに自分の声がいちばん乗るからとかね。どういうプロセスを経てこのサウンドが出来上がってるのかってちょっとそこはさすがに調べきれなかったんですけれども、でもやっぱりこれギターと二人でやってる時とも全然同じ印象で耳に入ってくるんですよね。
グローバー:それはなかなか難しいことですか。
本間:難しいですよ。これだけ最初からシンセパッドのコードがずっと漂ってる中でもうその時点でさっきから話してる倍音は割と食われちゃってるんですよ。取られちゃってるんですけども、そこに自分の声が乗った時にそれに負けない倍音というのが出てる。これ後から足せないんですよ、倍音というのは。だからマイクに乗っけたその瞬間に録られてるものなんですよね。アデル節と言いますかアデルの声質ってものが持ってる。だからこういう一般的に思われてるアデルサウンド、アデルオケのサウンドではないのにアデルになってるところがヴォーカル力の凄さっていうことを感じましたよね。
2位:Send My Love (To Your New Lover) <『25』2015年>
本間:好きなんですよこれ。ヴォーカル力としての開き直り感が凄いし、この曲って2つのコードしか無いんですよね。2つのコードを行ったり来たりでどんどん展開していく。4つぐらいのコードの展開でサウンド作っていくのが今の主流だと思うんですけれど、それより少ない2つだけでこれだけの歌詞の内容を伝えるサウンドを作って、そこに声を自由自在にですからね、本当に何度も言ってるようにね。
グローバー:これ、それこそビデオも本人がバーッと重なりますけども、声がバーッと重なるじゃないですか。アデル本人の声が重なった時の景色っていうのもまたありますね。
本間:あります。それもエディットしてない。オーケストラがなぜ綺麗に響くかっていったらバイオリニストが何十人も居てみんなそれぞれのタイミング、それぞれの強さで大体同じようなもんなんですけど、大体タイミングも合ってる、大体ね。
グローバー:ピッタリのものを全部貼り付ければ最高ではない。
本間:ないんですよ。その揺れとズレがいいんですけど、これもそうですよね。だから何回も歌って多分そこは合わせてズラしてもうちょっと直してとかそういう事あんまり言ってないんじゃないですかね。
1位:Easy On Me <『30』2021年>
本間:やはり全く変わらない声をほぼ5、6年ぶりに出してきた。その間自分はパフォーマンスとか観てましたけども、世の中には録音されたものしか出回ってなかったわけじゃないですか。ライブも録音されたライブしか無かった。なんですが、新たに出してきたこの「Easy On Me」全く変わらない魅力を持ち続けてるっていうところが、これ凄いコントロールされてるのかメンテナンスされてるのかそれとも何にもしてなくてもこれができるのか。わからないけどやっぱりそこが変わらないっていう魅力っていうのが凄いですね。むしろ表現力上がってるんですよ。年齢重ねるごとに歌はやっぱり30代から40代が一番いいと思うんですけれども、女性ってどんどん声がどうしても変わりがちなんですけれどもそれがないっていうところがやはりいちばんの魅力かなと思ってるんですよね。
グローバー:これから曲かけますが特にここ聴いてみてというポイントどこですか?
本間:地声とファルセットの間とかも自由自在なんですよ。これ、できそうでできない。地声なのかファルセットなのかもわからないけども艶やかに歌ってる。だいたい細くなっちゃう。だから太いまま裏声を出すっていうところをね、ぜひ聴いていただきたいなと思います。
■アデルの影響
グローバー:遥海さんは自分はアデルからこんな影響もらってるなーって今思うこと何ですか?
遥海:私たぶん今の声がもしかしたらアデルから50%受けちゃってるんじゃないかな。
グローバー:自分の歌声。小学校の時出会ってから。
遥海:出会ってから。やっぱ言葉では伝えるのが足りない部分を全て声がカバーしてるっていう部分では自分はアーティストとして喜怒哀楽をこれからもいっぱい歌っていきたいっていうテーマがあるので、そう考えた時にいちばん近いのがもしかしたらアデルなんじゃないかな?ってずっと思ってきてますね。だから自分の弱いところを強さに変えるってこの人がすごい教えてくれてたっていうか、辛かった事をひとつのモノにしてそれをアルバムにしてやってきた人なので、私も怖がらずこれからも普通の人としても頑張って試練を避けず向き合っていきたいなってそんな気持ちにもさせてくれるような人で本当に大好きですね。
グローバー:歌声、そして生き方にも影響大きくもらっている。本間さんは今の音楽シーン見た時に、アデルが居たから今こういうのがあるなと感じることありますか?
本間:そうですね、ほとんどがダンスミュージックに移ってる中で“みんな大好きアデルちゃん”みたいな感じでね、変わらないんですよ、いい意味で。そして全く新しくて新鮮なんだけれども懐かしさもあるサウンドっていうのは、今できる人ってそうそう居ないと思うんですよね。やっぱりアデルが居るからもう1回こういうのに戻れるみたいな感じで。で、“まだこれやってんの?”っていう風に絶対思われないんですよね。ずっと変わらない部分あるじゃないですか。十何年ずっとこれ。
グローバー:アーティストとかプロデュースする側もそうだと思いますけど、そう思われたら嫌だなっていうことで色んなことトライするってのありますけど。
本間:そうなんですよ。でもそんな必要がない人になっちゃってる。
遥海:そう、もうジャンルになっってますよね。
本間:そう、ジャンル。だからこれを出してくれることによって世界中のミュージックファンが嬉しくなっちゃう。で、やっぱり歌詞に深みがある。いわゆる洋楽と言われるものの歌詞って割と浅いものが多いじゃないですか。だけど、ともすれば60年代、70年代のフォークソングに近いぐらいのものを未だ受け継いでいて、この歌唱力があることによってそしてこのサウンドをちゃんとアデルっていう事を理解してプロデュースくれるスタッフが居ることによって全く古さを感じさせず、これが多分『30』で新しく出したとしても、それがあと10年経って聴いてもおそらく全然古くならないだろうなっていう風に思うんですよ。こういうサウンドを作り続けるっていうことが僕らプロデューサーとかにしても目標であり憧れであったりするんですよね。やっぱり昔作ったもの聴いてみると“この頃は若かったなぁ”とかねどうしても思っちゃいがちなんですけど、彼女の場合は多分全然それが無いんだろうなって思うんですよ。だからそれだけ吟味されたものを作ることの大切さっていうのを今なお音楽業界全体、全世界の音楽業界に伝え続けているって事が彼女の功績だと思うんですよね。
■キャッチコピー
本間:「アデルとは…ものさし」である!
やっぱり音楽の大事なところというのをみんな忘れがちになる、そんな時にもう1回アデルを聴くと“あ!やっぱここ大事なんだ”とかそういうところで自分の音楽と比べて測ることができる。 そういう存在のような気がしますね。それはサウンド面でも歌詞の世界でも、生き方としても。いろんなことが彼女一つ基準になってるような気がするんですよね。ライブを観るともっと変わると思うんですけどね。
遥海:「アデルとは…気持ちの整理を手伝ってくれるアーティスト」である!
もう単純に自分が言葉にしないで初めて言葉に出す時に泣いてしまうことが多いんですね。ちゃんと気持ちの整理をしないと先に感情が出ちゃう人だから、その時にアデルが居ると気持ちの整理を手伝って寄り添ってくれる声っていうか。あの人に背中押されてるような感じで、どん底に一緒に行ってくれるような人。だから気持ちの整理を手伝ってくれる人である。
2週に渡るアデル。ラストは『Rolling in the Deep』で締められました。
PLAYLIST
Set Fire To The Rain (Live at The Royal Albert Hall) / Adele
When We Were Young / Adele
Easy On Me / Adele
Daydreamer / Adele
声 / 遥海
Rolling in the Deep / Adele
◆Spotifyにもプレイリストを掲載しています。ぜひお聴きください。
■放送後1週間は右下のRadikoタイムフリーボタンでお聴きいただけます。
■本間昭光さんの詳しい情報はオフィシャルサイトへ
■遥海さんの詳しい情報はオフィシャルサイトへ