今週のテーマは、ブラジル音楽界の巨匠、セルジオ・メンデス!
ゲストにSOIL & "PIMP" SESSIONS 社長、クラブDJ 大塚広子さんをお迎えしました。
■セルジオ・メンデスとの出会い
グローバー:セルジオ・メンデス、どういうきっかけで好きなったんですか?
社長:ブラジル音楽っていうのは僕が育ったクラブジャズ・シーン、アシッド・ジャズ・シーンにおいては欠かせない要素、リズムのひとつなんですよね。ブラジリアン・グルーヴっていうのが自然とジャズのセットの中にも入ってきているし、その後のサンプリング・ミュージックとかでもブラジルネタみたいなものでヒップホップができていたりとか、やっぱそのいろんな音楽のエッセンス、礎のひとつになってる。それがブラジルなのかなと。僕がこのクラブ・ミュージック、アシッド・ジャズに出会った頃にいらっしゃったアーティストKyoto Jazz Massive、最初の一枚っていうのはコンピレーション的なアルバムだったんですよね。 Kyoto Jazz Massive の界隈のいろんなミュージシャン、DJ が音を作る。その中にBossa Free というプロジェクトがあったんですがそのBossa Freeが「マシュ・ケ・ナダ」を取り上げてたんです。
グローバー:その出会った時のインパクトってどこだったんですか?
社長:そのコンピレーションの中の存在感っていうのも僕にとって大きくて、いわゆるアシッド・ジャズ・ビートとかトリップ・ホップ、ヒップ・ホップと呼ばれるちょっとダウンビートみたいなものが曲の序盤にある中、中盤でこの吉澤はじめさんの爽快なピアノと、いわゆるピアノトリオ編成のこの曲がここに入ってくるという。それは耳を引きますよね。
グローバー:前後の中でも浮き出てきたんですねこの曲が。それで誰の曲なのか掘っていったと。
社長:そうですね。で、そのブラジル・ミュージックというのが当時のまだ浅い知識でいうとボサノヴァなんですよね。そのボサノヴァのリズムが“おしゃれ”って思ってた。で、実は当時渋谷系が全盛でしたけど渋谷系のアーティストがこのビートを取り入れてたりとか、 なんでしょうねおしゃれビートの代表みたいなね。
グローバー:大塚さんも割と同世代だからこの感覚は?
大塚:わかりますねー。なんかおしゃれしてかないと聴けないみたいな(笑)
社長:そうそうそう。そういうところとの親和性だったりとかそういうカルチャーのいちばん濃厚な部分っていうよりもいわゆるちょっと言葉悪いけど上澄みの部分のブラジル感っていうところが入り口だったし、これはすごく良かった事なんだけどその入り口がそのビートでそこからもっと深いところに引っ張っていってくれたのがこの「マシュ・ケ・ナダ」なんです。
グローバー:という曲があってじゃあそこから社長もいろいろ掘って掘って今いちばん好きな曲でスタートしたいんですが。
社長:もう僕のDJバッグの一軍。常に入ってるこの曲、これが入ってると安心するの。セルジオ・メンデス&ブラジル77「ザ・リアル・シング」
グローバー:大塚さんも社長の言ってる“これあると安心するんだよ”“DJバッグの一軍”これよくわかりますか?
大塚:わかります。私もセルメンを知ったきっかけはこの曲だったかなと。私、最初に買ったレコードだったような気がします。しかも日本盤の再発12インチを買いました。高校から大学入るぐらいで渋谷のレコードショップに通い始めた時で、その頃レコード屋さんにいろんなジャンルのいろんな12インチがあって、その中で凄くジャケットもおしゃれだったんですよね。曲の尺も12インチなので長かったんです、ロングバージョンかなにかで。さっきも聴いてわかったと思うんですけどあの感じがずっと続く。そこですね。そこでそのグルーヴ感っていうのをもっともっと聴きたくて、家でそのグルーヴに合うグルーヴ、曲をみつけて繋いで繋いでっていう練習をよくやってたなと(笑)話しながら思い出してきました。
グローバー:そこからセルジオ・メンデスという人にどんな魅力を感じていろいろ聴くようになったんですか?
大塚:次第に60年代のジャズに興味を持ち始めていろんなジャズ・ミュージシャンを調べていく中で“あ、セルメンはジャズの人だったんだ”っていうのがわかってきてもう少し昔の時代のジャズをやってるセルメンを調べたりとかするようになって、今はいちばん最初のデビュー作ぐらいで作られた曲にハマってます。
グローバー:ちょっと教えて欲しいんですけど、社長と大塚さんの話の中で“ブラジリアン・ミュージック”“おしゃれ”“ジャズ”といろんなキーワードが出てきましたけど、長いキャリアの中で変遷してるんですか?
社長:元々はジャズピアニストでキャリアをスタートしてるんだけれども、拠点をブラジルからアメリカに移すタイミングとかでのアメリカのジャズのミュージシャンとの出会いだったり、それこそハーブ・アルパートと出会いだったりとかっていうのがキモになって、逆にアメリカのジャズシーンにブラジルのビートを持っていった人でもあるし、ブラジルにジャズの要素を持って帰った人でもあるしっていう。
グローバー:そういうキーパーソンなんだ。
社長:まさにキーパーソン。
グローバー:ひょっとしたら世界の音楽地図を彼が塗り替えた部分あるかもしれませんね。
グローバー:だいぶあると思います。
グローバー:大塚さんはここで一曲かけてとなると今ハマってる本当初期の曲ですか?
大塚:はい、そうです。これは1961年の“あ、これ最初のアルバムに入ってだんだぁ”っていう曲で時代性とかあんまり感じさせない普遍的なすごく心にあったかく響く曲だなと思ってぜひ紹介したいと思います。「オ・バ・ラ・ラー」
■「ピアニスト」セルジオ・メンデス
グローバー:彼の姿で思い浮かぶのは鍵盤を前にしてニコニコしてる姿っていうのがやっぱり出てくるんですよね。ピアニスト・セルジオ・メンデス。彼のグルーヴ、プレイ、ピアノの特徴っていうのはありますか?
社長:コードの押さえ方がすごく明るいっていうのと、ピアノリフの作り方がとてもポップ。例えば「マシュ・ケ・ナダ」とかも?ダダダダダン〜?から始まる。あれひとつとってもめっちゃポップじゃないですか。リズムもすごくいいからカッティングギターみたいなフィーリングも出せるし、歌メロともうひとつのカウンターメロディーのようなピアノリフっていうのも彼は存在してたりするしね。
グローバー:大塚さんはセルジオ・メンデスのピアノ、堪らないなと感じた曲ありました?
大塚:アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの有名な曲で「モーニン」っていう曲をカバーしてるんですけど、この曲をこんな風にするとは。このセンスはすごいですね。しかも1968年でこんなアレンジをするとは。
社長:「モーニン」をカバーするとなると簡単に聞こえるメロディ実はあれ解析するとすごくリズムが複雑でそれの通りにやるみたいなところがやっぱりちょっと美学としてあったりもする一方で“こんなにポップにしちゃうの?!”って。後半のコーラスワークとかも含めてこれは本当に目から鱗の1曲かもしれませんね。
大塚:このカバーは流石です。
■J-WAVEを代表するジャズの伝道師!
SOIL & "PIMP" SESSIONS社長セレクト!
「これぞジャズ・フレイバー感じるセルジオ・メンデス ナンバー」TOP3!
3位:Nica's Dream(from『Dance Moderno』)
社長:みんな大好き「ニカズ・ドリーム」クラブジャズの界隈ではこの曲のメロディーはすごくポピュラーでして「ニカズ・ドリーム」って掘ってて知らない盤でも「ニカズ・ドリーム」をやってるってなると買いがちな1曲っていうね。これもピアノのリフがとても象徴的な曲。ホレス・シルバーにピアノの志向が影響を受けてるんじゃないかなっていうとことこも含めて彼のバージョンも極上なんで。
2位:Consolacao
社長:「コンソラソン」はブラジルの伝統的なクラシックスなだけにいろんなブラジルの方がカバーしてるんだけれども、セルジオ・メンデスのバージョンはちょっと打って変わってすごく抑制が効いてる。弾きすぎてないんですよ。なだけにこの曲が持つ美しさだったりとかがすごい引き立ってていいバージョンなんですよね。
1位:Primitivo
社長:1位に関しては不動かもね、このピアノすげえ気持ちいい。曲のテンション感、スピード感、なんでしょうね、フロア映えするんですよね、これはね。思い出を元に語ると、「プリミティーヴォ」はけしてクラブのフロアのピークタイムに投下して“うわーっ”ってなるかっていうとちょっと違う。例えばラウンジ・セットの時とかの花になるような感じ。みんなガンガン踊るんじゃなくて心地よく体が揺れてる状態の時にこういうのが入るとすごく“ふわっ”と。
大塚:なりますねー、“お!”って。
まだまだ続く『セルジオ・メンデス』来週もお楽しみに!
PLAYLIST
The Real Thing / Sergio Mendes & Brasil '77
Oba-La-La / Sérgio Mendes
Consolacao / Sérgio Mendes
Your Smile / Sarah Vaughan
Primitivo / Sérgio Mendes & Bossa Rio
◆Spotifyにもプレイリストを掲載しています。ぜひお聴きください。
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■放送後1週間は右下のRadikoタイムフリーボタンでお聴きいただけます。
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