2022.07.23 ON AIR
【The 1975 Part2】SHE’Sのボーカル&キーボード井上竜馬さん、ミュージック・エディターの妹沢奈美さん登場!

今週は、The 1975のPart2!
ゲストには引き続き
SHE’Sのボーカル&キーボード井上竜馬さん、ミュージック・エディターの妹沢奈美さんをお迎えしました。

■アルバムの魅力

グローバー:先週お二人とも共通して“The 1975はアルバムを聴いてハマった”とおっしゃっていました。まずは妹沢さん、どのアルバムどの曲がフェイバリットですか?
妹沢:私がいちばん好きなアルバムは2018年のサードアルバム『ネット上の人間関係についての簡単な調査』という邦題がついているアルバムです(笑)すごいタイトルですよね。
グローバー:おもしろいですねー。このセンスとかニュアンスってあちらではどういう受け取られ方をしてるんですか?
妹沢:長いタイトル自体は実はアークティック・モンキーズのファーストアルバムでガツンと出てきた感じなんですよ、ただそこから先長いタイトルを付けるグループってそんなに無かったなっていう中で彼らが長いタイトルをセカンドから付け始めたので、またこれも個性的なんですよね。
グローバー:アルバムの中身はいかがですか?
妹沢:今ちょうどかかってるのが「Love It If We Made It」っていう曲なんですけど、これがアルバムの先行シングルで出てきて、これを聴いて“あ、ちょっと変わった”と思ってアルバムどうなるんだろう?って思っていたらこれがすっごいアルバムが届いてびっくりしてもう本当にいまだに好きでよく聴きます。
グローバー:このアルバムのここに耳を傾けてってどういうところですか?
妹沢:二つあります。一つが音。UKのロックバンドとかUSのロックバンドみたいなのを超えてすごくエクスペリメンタルな部分とか、ロックとかポップに切り刻まれないタイプの曲が増えてきています。そこの音色の作り方の旨さを是非聴いて欲しい。もう一つが歌詞。歌詞の部分がその時代を描くようになりました。それまでこれほど言葉には政治的なものを歌ってこなかったんですけれども時代が2018年の作品なので世界中いろんなことが起こっている、それを彼は歌詞のところに落とし込んで歌ってるんですね。そこの部分も機会があれば歌詞をチェックして聴いてみて欲しいです。
グローバー:井上さんはアルバムでこれだというのは?
井上:僕もいちばん聴いてるのはサードですね。でも個人的にはアルバムに出会って“次のアルバムいつなんやろう?”っていうワクワクしてた思い出補正で2枚目の『I love it when you sleep,for you are so beautiful yet so unaware of it』長い!(笑)
グローバー:「君が寝てる姿が好きなんだ。どうしてかって?君はとても美しいのにそれに全く気がついていないから。」こちらはロマンチックですね。
井上:すごいロマンチックですよね。なんか外国人の表現の仕方というか。アルバムの歌詞的にもいちばんラブソングが多いかなと。さっき妹沢さんが言ってたような政治的な深みとかそういうものが出る前の割とストレートな表現の曲が多かったので、ポップな音楽が好きな感覚の人にはいちばん聴きやすいアルバムかなっていうのがざっくりとおすすめなポイントではありますね。あと先週いちばんポップなっていうところでかかった「Ugh(アー)!」も入ってたりとか、オープニングのインストの次に入ってる 「Love Me」 って曲もファンクの要素も取り入れたりしながらすごいカッコよくてポップな曲をやったりとか、とにかく聴きやすい1975のポップな良さが詰め込まれたアルバムかなと思いますね。

■ミュージック・エディター妹沢奈美セレクト!
  「メッセージ性を強く感じる」The 1975ナンバーTOP3!


◆3位:I Like America & America Likes Me『A Brief Inquiry into Online Relationships』
 
妹沢:世の中に蔓延する社会の不安だったりとかに、どうしても若い人たちの鋭いアンテナっていうのが引っ張られたり、そこからネガティブなものを受け取り過ぎちゃったりとかそういった事とかあると思うんですけれども、例えば“Kids don’t want rifles,theywant Supreme”みたいな歌詞の部分があったりとか、キッズの生態をすごく誠実に社会不安をそのままに歌おうとしてるんですね。サードアルバムって割とそういったところをありのままに歌おうとしている側面があるんですが、この曲は特にそれを感じさせてくれました。

◆2位:Jesus Christ 2005 God Bless America『Notes on a conditional form』

妹沢:この曲はフィービー・ブリジャーズっていうオルタナ・カントリーとかフォークのシンガーとのデュエット曲なんですね。フィービー・ブリジャーズはバイセクシュアルを公言しているすごく実力と才能ある女性のシンガーソングライターなんですけども、彼女とマットが交互に歌うことで宗教的な抑圧の元にある性差、性の平等ですね、セクシュアリティですとかそういったようなことを自然に落とし込んで尚且つ聴く側に柔らかな音像で感じさせてくれるという様々な技が駆使された曲です。
グローバー:イギリス、アメリカどちらでも大きなバンドですけれども、この二つの国を繋ぐ“クリスチャン”“キリスト教”ここに「Jesus Christ」って言葉が出てきますけれどもこの神の名の元に“こんなことがあっていいのか、これは直していかなきゃいけないよね”という様々な問題がどんどん出てきてますよね。
妹沢:ほんとそれなんですね。そこってこれまではやはりちょっとタブーではないですけれどもなかなか音楽とかに落とし込んだりしにくい部分などもあったと思うんですけれどもやはりそこもインターネットの時代になってきて色々なことを隠すんじゃなくてきちんとオープンにして受け止めて行こうっていう流れになってきてるじゃないですか、そこにきちんとリーチした目線で音楽を紡いでいる気がします。

◆1位:Love It If We Made It『A Brief Inquiry into Online Relationships』

妹沢:私が“このバンドほんと凄いわ”って思ったきっかけになった曲なんですけれども、これもそれこそ2018年の曲なのかな。それこそシリア難民の物語、皆さん覚えてらっしゃるかもしれないんですけどもシリア難民の方が国から出ていった時に浜辺で亡くなっている2歳の男の子の画像が全世界に行き渡ったりですとか、アメリカの政治の不安ですとか、もしくは黒人問題とか、そういったような物事をギュッと入れ込んでいて。にも関わらず同時に曲としてすごく美しく綺麗なエレクトロ・ロックなんですね。もうちょっとこれは感動しました。

■The 1975の影響

グローバー:改めてなんですけれども、井上さん、自分がThe 1975からもらってる影響、どんなものですか?
井上:勿論曲の勿論でも影響を受けてるところもありますけど、1975のおかげで自分もあんまり聴いてこなかった80’sのカルチャーとか音楽とかに触れるようになりましたね。“この人たちはどういう音楽に影響受けてんやろ?”って所から、僕らのバンドのギターの服部がすごく80’sのハードロックで育った人やから服部におすすめ聞いたりとか“これっぽいの何なん?”とか聞いたりとかもしたし、自分で掘ったりもしたし。そこから自分たちもピアノだけじゃなくてエレピを使ったとか曲を作るようになったりとかっていう影響も実際にありましたね。
グローバー:妹沢さん、音楽シーン沢山見るとThe 1975が居たからこんなことになった、与えた影響どう見てますか?
妹沢:いちばん大きいところが音楽シーンを支えるファンの皆さんの世代交代を自然に促したと思います。先週ちょっとお話ししたある種の踏み絵的なところもあったのかもしれないんですよね。“これが分かるか分からないか”みたいなところでそれこそ昔オアシスが出てきた時に“あ、これ60年代で聞いたことあったよね”とかストロークスが出てきた時には“こんな音聞いたことあったよね”っていうところとは違うところで心から指示して応援する世代がきちんと生まれる。で、それと全く同じことをThe 1975はごく自然にやり遂げてなおかつ作品を重ねるにつれてそれが広がっていくっていう凄い事をやったと思います。

■キャッチコピー

井上:「The 1975とは…追いかけたくなるカリスマ」である!
とにかくカリスマ性は誰が見てもあるなっていうのは4人に感じてて、マッティの言動やったりとか、スカート履いてライブするとか、男性のお客さんにキスをしたのかな?ハグなのかな?したりとかなんかそういうメッセージ、アクションもそうですけども、バンドマンからしても曲の作り方とか完成度を追いかけたくなる。カリスマ性もあるしファンとしても次の作品でどんなこと歌うんやろ、どんな音楽を作り出すんやろって追いかけたくなる存在でもあるっていうところで“追いかけたくなるカリスマ”って付けました。

妹沢:「The 1975とは…新・時代のカナリア」である!
“炭鉱のカナリア”ってよく言うじゃないですか。炭鉱で有害なガスとかが出ていない時にカナリアを連れて入って、カナリアが大きな声で鳴いたらそこはちょっと危ないところだ、みたいな。音楽シーンでそういった時代の空気とかそういったものをいち早く読み取って、それを音楽に落とし込む。そしてメッセージとして伝える。っていうミュージシャンってこれまで時代時代に存在しまして例えばレディオ・ヘッドもそうだったでしょうし、ある時期のベックとかもそうだったでしょうし、もっと古く言うとブルース・スプリングスティーンとかボブ・ディランとかビートルズみたいなのもそうだったと思うんですけども、それと同じように“今何が起こっているか”を誰よりも先にきちんとキャッチして伝えてくれるそういった新時代のカナリアの空気を感じます。

2週に渡る『The 1978』ラストは「Nothing Revealed / Everything Denied」で締められました。

PLAYLIST

She's American / The 1975

Love It If We Made It / The 1975

Sex / The 1975

Grow Old With Me / SHE’S

Nothing Revealed / Everything Denied / The 1975


◆Spotifyにもプレイリストを掲載しています。ぜひお聴きください。

■『MARUNOUCHI WALK』でご紹介したCOTTON CLUBの詳しい情報はこちら!



■放送後1週間は右下のRadikoタイムフリーボタンでお聴きいただけます。
■SHE’Sの詳しい情報はオフィシャルサイト
■妹沢奈美さんの詳しい情報はオフィシャルTwitter

来週のテーマは、今年デビュー60周年!ビーチボーイズ!お聴き逃しなく!