2022.07.30 ON AIR
【The Beach Boys】サニーデイ・サービス曽我部恵一さん、トクマルシューゴさん登場!

今週のテーマは、今年デビュー60周年!ビーチボーイズ!
ゲストにサニーデイ・サービス曽我部恵一さん、トクマルシューゴさんをお迎えしました。

■ビーチ・ボーイズとの出会い

グローバー:曽我部さんから伺ってまいります。最初にビーチ・ボーイズに出会ったのはいつ頃、どんなきっかけだったか覚えてますか?
曽我部:完全に覚えてるんですけど、僕が小学校の6年とかの時に、俺四国の田舎なんですけど、田舎って夜さラブホテルのCMとかスナックのCM流れるでしょ、わかる?
トクマル:わからないです(笑)
曽我部:田舎ってそうなのよ、特に昭和は。で、ラブホテルのCMがあってそれがちょっとイケてたんだよね。なんかトロピカルなヤシの木とか出てきて。それで「サーフィン・U.S.A.」がかかってたの。
トクマル:すごいですね、そういうのって許可って特に、、(笑)
曽我部:昭和の田舎なんで許可いらない時代ですよね(笑)昔のジャマイカみたいな感じなんで。
グローバー:そうするとそのビジュアル込みでこの音がグッときたんですね。
曽我部:そう、すごいグッときて。瀬戸内海の田舎ですからカリフォルニアの西海岸のあの感じのCMなのね、おばさんがナレーション“なんとかな感じのリゾートホテル”とか言うのよ(笑)で、ギターソロが流れて“カッコイイー”と思って“これは何て音楽なんだろう?”っていうところぐらいまでしかたどり着かなかったけどね。それがビーチ・ボーイズの「サーフィン・U.S.A.」 だって知ったのちょっと後だったと思うけど。やっぱり強烈だったから全部覚えてるもんねコマーシャルの雰囲気とかも色合いとかもね。そんな出会いでした。
トクマル:観たいですね、そのCM(笑)
グローバー:じゃあ自分も音楽がどんどん詳しくなっていったら“オレがハマったのこの部分だ、この音色だ、このフレーズだ”どんなところでしたか?
曽我部:「サーフィン・U.S.A.」は多分ロックンロールなんだよね、3コードのね。そこにハーモニーが入るっていうのが多分自分の心にヒットしたんじゃないかな。ロックンロールとハーモニー。まあビートルズもそうだし。そんな気がします。
グローバー:そこからたくさん掘っていって曽我部さんが今いちばん好きなビーチ・ボーイズナンバーで行きたいんですが。
曽我部:これずっと僕好きな曲なんですけど「サーファー・ガール」という曲を聴いていただきたいと思います。ちょっと孤独感があって、やさしいところと切ないところと、あとまあ恋。女の子を思う気持ち。
グローバー:小6で刺さったロックンロールでっていうところとはまた違うところですね。
曽我部:そうかもね、裏側っていうかね、B面っていうか。

グローバー:ではトクマルシューゴさんはビーチボーイズとの出会い、何でしたか?
トクマル:僕は子供の頃、家に置いてあったベスト盤みたいなやつをよく聴いてました。その時はあんまり突出してそれが好きだって感じではなかったんですけども、まあ普通に売れてる音楽だなという印象ぐらいでちょっと好きぐらいだったんですけども、10代に入ったぐらいの時にプログレとかサイケみたいなものをすごい聴き漁るようになって、その頃にちょうど『ペット・サウンズ』と『スマイル』っていうアルバムのブート盤みたいなやつが出たのでそれを買って聴いて知らないビーチ・ボーイズに出会っって“うわ、なんだこれは!”みたいな感じで衝撃を受けました。
グローバー:ブート盤っていうのは今はあんまり知らない方もいるかもしれませんがブート盤を買いに行くっていうのはどれぐらいハマってどういうアクションですか?
トクマル:当時はそこまで珍しくなくて90年代前半から中盤ぐらいは特に海賊版レコード屋さんみたいなのが東京には普通にいっぱいあって、本当は違法だと思うんですけど勝手に未発表の音源を集めてきてそれを勝手にリリースしちゃうみたいなやつを聴かせていただきました。
曽我部:『スマイル』はブートがいっぱいあったもんね。てかブートしかないからね。『スマイル』はブライアンが途中でわけわかんなくなって放棄されたアルバムだから完成してない。テープ捨てたりとか。それで残されたパーツを組み合わせて『スマイル』ってこんな感じじゃなかったのかっていうのをみんなが作ってみるっていうのが『スマイル』のブートですね。だからたくさんありますよ。
グローバー:それぐらい何があったのかみんなが知りたいぐらいその時のビーチ・ボーイズっていうのはクリエイティビティがすごいものがあったんだ、そういうものだったんですか。
トクマル:そうですね、『ペット・サウンズ』があまりにも凄かったのでその次、もっと凄いのくるぞってみんなワクワクしちゃってたんですよね。
グローバー:トクマルさんはその『ペット・サウンズ』でまずやられた、あまりにも凄かった、それどういったとこなんですか?
トクマル:『ペット・サウンズ』に至るまでにまず初期ビーチ・ボーイズがそもそもサーフ・ロックみたいなサーフィンミュージックみたいな感じでロックンロールとハーモニーを組み合わせた感じでやってたんですけども、その後にフィル・スペクターっていうロネッツのサウンドを作ってた人のサウンド面にブライアン・ウィルソンがすごい憧れてしまって、もう“これを再現したい”と“これが俺はやりたいんだ”みたいな感じで試行錯誤する時期があって、その後に“サーフィンのイメージから脱却したい”みたいな。で、それを自分のバンドにどんどん入れてレコーディングにすごい力を入れて。それともうひとつ当時ビートルズっていう存在があったんですよね。ビートルズとほぼ同世代だったので切磋琢磨してたんですよね。ブライアン・ウィルソンはビートルズにすごい対抗意識というか、まあレコード会社ぐるみでそうですけども。アメリカを背負って立つじゃないですけど、そういう面があって。
曽我部:お互いにキャピトルだしね。
トクマル:ブライアンは作曲面でもすごい気持ちが高まっていたというか。サウンド面のフィルスペクター的なすごいところと作曲面でのブライアンのすごいところが組み合わさった結合というか、サーフィンから脱却した面とすごい作家性の優れたもの。そういう試行錯誤と切磋琢磨の上でできた至高の作品という感じなんですよね。
曽我部:ビートルズの『ラバー・ソウル』をブライアンが聴いたんだよね。それでアルバムっていうのを単体で作ってるってびっくりしたみたいね。当時アメリカのアルバムっていうのはシングルの寄せ集めだから。ビートルズはアルバムを1枚通して物事を表現してると思ってもう驚愕したらしいんだよね。で、オレもアルバム1枚でなにか自分を表現するってことをしてみたいっていうので生まれたみたいよ。
トクマル:そうですねー。
曽我部:で、メンバーに聴かせたら“なにこれ?ペットにでも聴かせるのか?こんな音楽”って言われて『ペット・サウンズ』にしたんだって。
グローバー:へぇー、それをタイトルに付けるのがカッコイイですね。
曽我部:ね、クールだよね。
グローバー:トクマルさん、その『ペット・サウンズ』からどの曲行きましょうか。
トクマル:『ペット・サウンズ』の1曲目「Wouldn't It Be Nice」という曲を聴いていただきたいと思います。

■『Pet Sounds』以前、以後

グローバー:ひとつ大きな節目が『ペット・サウンズ』にあるとして、その前の時期のビーチボーイズはまずこれがシンボルだよねというのもありますか?
曽我部:僕その話で挙げさせてもらったのは「be true to your school」 っていう曲があって、これは本当に学校応援の曲ですごく保守的な感じのね。
グローバー:面白いですね、ロックバンドが(笑)
曽我部:でもねめちゃくちゃ楽しい曲なんですよ。これがもう僕中学生の時に大好きで。だからやっぱりそういうちょっと保守な白人の社会のロックっていう感じはあるんだと思うんだよね。
グローバー:トクマルさんはいかがですか?
トクマル:やっぱりそのサーフ・ロックとホットロッドと言われてる車がテーマかサーフィンがテーマみたいなそういう歌詞の曲が多い中で、本当に色々曲を出しまくっていた時期でやっぱりサーフィン系の曲は最高ですよね。が僕はやっぱり「サーフィン・U.S.A.」印象的で。歌詞が本当にしょうもない歌詞というかですね(笑)
曽我部:「サーフィン・U.S.A.」っていうこの言葉がキャッチーだよね。パワーワードですよね。
トクマル:こんな言葉思いつかないですよ。
グローバー:そこからひとつ『ペット・サウンズ』というスパークがあってこれ以降のビーチ・ボーイズの歴史もかなり長く今まで続いてきました。この『ペット・サウンズ』以降のビーチ・ボーイズの歴史を見ると象徴的な1曲、曽我部さんは何を選びますか?
曽我部:僕はね「Kokomo」っていう映画「カクテル」の主題歌がヒットしていい曲だなぁと思って聴いてましたけどね。『ペット・サウンズ』っていうのはビーチ・ボーイズっていうよりもブライアン・ウィルソンのソロですから、コーラスはみんなでやってるけど他の誰も演奏はしてない。『ペット・サウンズ』はソロとして、「Kokomo」っていうのは逆にブライアンは入ってないんだよね。だからピュア・ビーチボーイズというか。
トクマル:しかもこれ当時売れると思ってなかったらしいですよね。
曽我部:そうなんだ(笑)
トクマル:“まさか売れるとは”みたいな。レコード会社がびっくりしちゃって急遽アルバムを作ることになるみたいな。
曽我部:なるほどね。
グローバー:今でもこの曲はアメリカでは特にもうエバーグリーンのポップソングのひとつなりましたよね。
曽我部:いいよね、いい曲だよね。すごい好き。

■曽我部恵一が選ぶ「音楽シーンを変えた!! ビーチボーイズ、衝撃の歴史的ナンバー」TOP3!

◆3位:「サーフィン・U.S.A.」 <1963年『Surfin' USA』>


曽我部:これチャックベリーの曲の替え歌なんですよ、勝手にね。後でちゃんとそういう著作権のことは処理されてますけど。だから最初はこれ替え歌として作ってるんですよね。で、こう言うと語弊があるんですけどチャックベリーよりいいんですよね。
グローバー:まあ今日はビーチ・ボーイズの集いですから(笑)
曽我部:ポップスとしてすごい幅を持たせちゃったちゃったという。それでこのタイトルね「サーフィン・U.S.A.」。もう言い訳ができない状態の曲だと思ってます。

◆2位:「サーフィンサファリ」 <1962年『Surfin' Safari』>

曽我部:これはね「サーフィン・U.S.A.」のちょっと前の年なんですけど多分サファリっていうのか何か流行ったのかなアメリカで。サファリルックとかありますよね。サーフィンっていうのも多分若者の文化としてあったのをくっつけちゃった。歌い出しも“レッツ・ゴー・サーフィン”っていう歌で純粋なサーフィンソング。

◆1位:「グッド・ヴァイブレーションズ」 <1966年 / 1967年『Smiley Smile』>

曽我部:これね僕ね、歌い出しを聴いた時に体に電流が走るっていうんですかね、びっくりしたんですよこの曲。この曲って悲しい曲として始まって途中でなんかバカみたいなコミックソングみたいになるんですよ。で、ヒュ〜っていうテルミンみたいな音も入ってたりとかして。
トクマル:実際はオンド・マルトノ って。
曽我部:オンド・マルトノ かこれは。そういうのが入ってたりしてまた悲しいのに戻るでしょ。めくるめくその感情のトリップ世界というか感じ取れるんですよ。それでダンスミュージックである。更にそれがもう3分ぐらいでしょ。
グローバー:これ一所に落ち着かないんですよね。
曽我部:そうなんですよ、変な曲なんですよ。
トクマル:そうですねー。


まだまだ続く『ザ・ビーチ・ボーイズ』来週もお楽しみに!

PLAYLIST

Surfer Girl / The Beach Boys

Wouldn't It Be Nice / The Beach Boys

Kokomo / The Beach Boys

Sakiyo No Furiko / トクマルシューゴ

Good Vibrations / The Beach Boys


◆Spotifyにもプレイリストを掲載しています。ぜひお聴きください。

■『MARUNOUCHI WALK』でご紹介したTOKYO TORCH内『アナザー・ジャパン』の詳しい情報はこちら!



■放送後1週間は右下のRadikoタイムフリーボタンでお聴きいただけます。
■曽我部恵一さんの詳しい情報はオフィシャルサイト
■トクマルシューゴさんの詳しい情報はオフィシャルサイト

来週は『The Beach Boys』Part2!ゲストには引き続き、サニーデイ・サービス曽我部恵一さん、トクマルシューゴさんをお迎えします。お聴き逃しなく!