今週は ビーチ・ボーイズのPart2!
ゲストには引き続き、サニーデイ・サービス曽我部恵一さん、トクマルシューゴさんをお迎えしました。
■ビーチボーイズの「ライブ・セッション」
グローバー:今週はまずライブの魅力を伺いたいんですけども、曽我部さんはどんなところに魅力を感じますか?
曽我部:70年代のライヴ音源を聴くと結構かっこいいんですよ。例えばグレイトフル・デッドと対バンしてたりとかするの。意外だよね。70年代60年代後半とかやっぱサイケデリックな雰囲気にもなっていくし、メンバーの指向もやっぱりそういうスピリチュアルの方に行ったりとかあったんですよ。だからそういう意味で70年代のライブっていうのは結構ロック感が強くて俺は好きです。
グローバー:トクマルさんはどうですかこの時代のライブが好きとかありますか?
トクマル:基本的に全部の時代が好きで、割とビーチ・ボーイズって時代の流れに乗るバンドなんですよね。シンセサイザーが流行った時期にはちゃんとシンセサイザーを取り入れたり、とにかく最先端をいこうとしているバンドなんですよ。ライブも60年代の初頭からすごいカッコイイライブをいっぱいしていて、僕は1964年代の『サーフィン・U.S.A』とかあの辺がすごい好きですね。どんどんテンポが上がってっいちゃうんですよ。80年代とかになると普通のテンポでやり出しちゃうんですけど。この当時はやっぱり若いのでずっとつんのめって(笑)
グローバー:もうロックバンドのライブの醍醐味ですね。
曽我部:もうガレージバンドだよね。
グローバー:お二人とも共通しておすすめというので挙げてくださった作品が『Beach Boys Party』。これは65年なんですよね。これはどんなアルバムなんですか?
曽我部:これはね、多分スタジオに人を集めてなんとなくライブ風に録ってる。
グローバー:スタジオライブセッション。
曽我部:だからガヤとかが入ってんの。これ重要なのはサウンドがちょっとフォークロックなんだよね。アコギが鳴ってたりとかして時代的にはフォークロック。さっきトクマル君が言ったけど、時代の最先端をいきたがるビーチ・ボーイズはちょっとフォークロックに歩み寄っているような気がするんですけどね。
トクマル:ちょうどフィル・スペクターに憧れて録音にすごい魂を注いでた時期があってそれの完成が65年ぐらいにブライアン的には訪れて、その翌年に『ペット・サウンズ』を出すんですけども、その間の作品なんですね。この間の作品ってブライアン・ウィルソンは気を抜きたかった。ちょっと息抜きみたいなリラックス的なレコーディングで、実はガヤだけ録音してるんですよ。
曽我部:後で?
グローバー:あ、そうなんだ!
トクマル:だから若干嘘が入ってるんですね。多分緻密にラフにやろうみたいなアルバムなんですよね。
曽我部:なるほどね、重ねてんのね。
トクマル:このアルバムでビートルズのカバーをしてるっていうのが特徴的で、レコード会社にやれって言われたのかそれともブライアンが研究しててそのついでにやったのかちょっとわかんないですけど珍しいビートルズのカバーが聴けるっていうアルバムです。
■トクマルシューゴ セレクト!このコーラス・ワークは秀逸!
「ビーチボーイズの美ハーモニー・ソング」TOP3!
◆3位:Surfin・U.S.A
トクマル:先週曽我部さんがおっしゃってたように、やっぱりこれ歴史を変えたと思います。ハーモニーをロッケンロールにのせるという。やっぱ兄弟っていうのもあって声のハモり具合もすごいフィットしてるっていうのもありますよね。
◆2位:Heroes And Villains
トクマル:この時代はやっぱり録音にこだわってたというところがすごくて。
グローバー:この時代っていうのはアルバムでいうと?
トクマル:『ペット・サウンズ』の次の『スマイル』を作ろうと思っていた時にスマイル用に録っておいた曲ですね。これがヴァン・ダイク・パークスという人が参加して一緒に作った曲なんですけれども、コーラスをもう何回も何回も重ねて録るっていう録音手法を使って、もう一人が何回も歌うみたいな。当時はそんなにやられてなかったんですね。“みんなで一緒に歌う。以上”みたいな感じだったんですけど、それをもう何回もテープに録音してコーラスをめちゃくちゃ分厚くして誰が歌ってるかもわからないっていう。これはやっぱり歴史的にも凄かったんじゃないかと思います。
◆1位:Our Prayer
トクマル:これは『スマイル』というアルバムの1曲目に入る予定だったと言われている曲です。この有無を言わさぬ美しさですよね、これは本当に凄いと思います。曲の構成も凄いし、ハーモニーも凄いし、バランスも凄いし、もう100点(笑)。これはつくれない。
■ビーチ・ボーイズの影響
グローバー:ビーチ・ボーイズからお二人が受けた影響、自分の音楽活動においていかがですか?
曽我部:僕ねビーチ・ボーイズは本当に好きでもういちばん影響を受けたぐらいの時期もあるんですけど、やっぱね真似してみるとできないんですよ。全然できないし、やっぱり自分の音楽をやるしかないんだなっていうのを本当にねブライアン・ウィルソンっていう人の背中を追うことで逆に学んだとこがあるかもしれない。あとはやっぱりブライアンも自分に自信がない人だったでしょ、これだけの音楽を作りながらも例えばポール・マッカートニーが訪ねてきたら隠れちゃって出てこないとかね、それぐらいなんか自分に自信がない人で、だからみんなそうなんだなーって思って。だから音楽的な影響っていうよりもこの人の音楽家としての生き方をどっかでこう遠く離れて見てるようなとこあるかもしれない。
グローバー:トクマルさんはご自身がもらった影響、どんなものがありますか?
トクマル:僕はやっぱり録音技術的なことと、あとユニークさを忘れないってこともすごく面白いなと思って。「ベジタブル」っていう曲が凄くユニークで野菜を食べる音を入れてしまうみたいなそういうユニークさを忘れないというか。これあのポール・マッカートニーもやりに来たみたいなそういう話もあったりして。
グローバー:ビーチ・ボーイズが登場して音楽シーン全体を見るとどんな存在だと思いますか?
曽我部:やっぱり曲ですよね。この人たちが残した曲っていうのがやっぱ本当に素晴らしくって、今「サーフィン・U.S.A」が流れても心がウキウキするでしょう?こんな60年ぐらい前の音楽なのに。だから音楽ってあんまり時代とか全然関係ないんですね。だからそういう風に本当にビーチ・ボーイズが残した曲っていうのは今も心に流れるんだと思う。
グローバー:トクマルさんはどう思いますか?
トクマル:ビーチ・ボーイズが居なかったらたぶん僕も曽我部さんも居ないと思います(笑)。もしかしたらはっぴーえんどとか山下達郎さんも居なかったかもしれない。ということはJ-POPも無かったんじゃないかと思います。
■キャッチコピー
曽我部:「ビーチ・ボーイズとは…アメリカンロックの権化」である!
やっぱり世界中にロックはありますしポップスはあるんですけど、アメリカンロックって割と高いレベルのとこにあるものだと思うんですよ。で、アメリカのロックバンドってとにかく演奏が上手、歌が上手い、コーラスも本当に上手い。たぶんアメリカってデカイからめちゃくちゃライブやってツアーやって、それで残った人たちが僕ら日本人の目の前にいるんだと思うんですよね。そういうシステムだから本当に上手だしエンターテイナーとして高性能。それの権化がビーチ・ボーイズのような気がします。あとは成功した後にちゃんと落ちていく感じ。それもなんかアメリカンエンターテイメントの醍醐味。まあちょっと悲しいんですけどそれも醍醐味かなと。そして復活という。
グローバー:誰しもがアップダウンはあるけどもそれを全部見せてくれるのがアメリカンロックですよね。
曽我部:もう見せちゃってますよねこのバンドは。本当に。
トクマル:「ビーチ・ボーイズとは…ファンタジー」である!
やっぱり『スマイル』っていうアルバムはやっぱり幻のアルバムだったり、あとはドラッグ苛まされたり、『パーティー』っていうアルバムを作って結局パーティーみたいに見せかけたものであったりとか、そういうレコード会社の思惑とか嘘とかそういうのに塗れたミュージックビジネスの世界でも生まれたバンドなわけですよね。それをみんなでなんとか想像で完成させていくみたいなそういう想像上のバンドみたいな面もあって、そういう意味でやっぱりファンタジーでもあるかなという気持ちですね。
グローバー:それも音楽の大きな魅力ですよね。
2週に渡る『ビーチボーイズ』ラストは「God Only Knows」で締められました。
PLAYLIST
Tell Me Why / The Beach Boys
Meant For You / The Beach Boys
Friends / The Beach Boys
Our Prayer / The Beach Boys
Heroes And Villains / The Beach Boys
冷やし中華 / サニーデイ・サービス
God Only Knows / The Beach Boys
◆Spotifyにもプレイリストを掲載しています。ぜひお聴きください。
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