2022.08.07 ON AIR
日本の本物とその作り手の声ご紹介するTDK VOICES FROM NIHONMONO。
今回は滋賀の旅。
中田英寿さんが、滋賀県の木工芸の職人さんである中川周士さんに取材した模様をお送りしました。
中田さんがたずねたのは、大津市にある中川木工芸の比良工房。中川さんが主宰する工房です。
木の桶を中心に作ってこられた方なんですが代表的なアイテムは、なんと木で作られたシャンパンクーラー。
いわゆる桶というイメージとはかなり違うスタイリッシュな感じになっています。
中川さんの作品はロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館のパーマネントコレクションになるなど、海外でも大きな注目を集めています。
中川さんは京都のご出身で、お父様 中川清司さんは木工芸で人間国宝に認定された方です。そんなお父様の工房から
独立し周士さんは滋賀で工房を開設。今や世界からも注目される存在となっています。
上からみると木の葉のような形になっているシャンパンクーラー。
楕円形の桶の上の部分がきゅっとしまっており、横から見ると桶の底から上へ向けて広がっていく形ですが、
先端が少し外に向かって反り返っていて尖っているように見えます。桶はそもそも短冊形に切った木片を組み合わせて円の形に並べて”タガ”と呼ばれる竹や金属の輪っかで絞めて作るのですが、角があるとタガが抜けてしまったりと難しいそう。
シャンパンクーラーを作るまでは、おひつ、寿司桶など伝統的なものを作っていたそうです。そこでリンクアップという会社の今井さんをプロデューサーに迎え、「これまでにない桶を」という目標で制作がスタートしたということ。
2年かかっても出来なかったので、諦めかけた時もあったと言います。ですが諦めようと思った時に、先端を尖らせるという発想が。タガが入るところを丸くすればというのを閃きました。桶から違うステージに移行したのがその瞬間でした。
シャープさを追求していくことで、「それまでの桶から違うステージにいくことができた」とおっしゃっていた
中川さん。そして出来たシャンパンクーラーは今や大人気になっています。
現在は海外でのお仕事も増えているという中川さんですが、以前は海外のことは全く頭に無かったそうです。
それは木で作った工芸品は、海外に持っていくと木の中にある水分の関係で形が変わってしまうことが多かったから。
ですが技術の進歩で、木の中の水分量を計って調整できるようになり、海外に持っていっても問題なしということで世界でも活動ができるようになったというお話でした。
海外で作品を発表するまで、海外のクラフトの世界はすごくハイレベルだと思っていた。でも海外に出たら海外で評価されている人より日本の職人の方が凄いじゃないかと疑問を感じたそうです。
そういう人たちを世界に連れて行って、マインドセットを変えたいと新たな野望を語っていました。
ものを作るのが好きだから、一生ものを作る環境に身をおけることが1番の望みとのお話でした。
木の桶を作るという仕事は、700年もの歴史があるそうです。ですが中川さんの生まれ育った京都では、
中川さんのおじいさんの代の頃は250軒ほどあった桶屋さんが現在は3軒。縮んでいきつつ、今まであった桶づくりの世界に これまでにないチャレンジによって新しい風を吹き込んだのが中川周士さんです。
実は、隠居するようなつもりで、細々とやっていこうと思っていたけれど、シャンパンクーラーづくりで新しい
チャレンジをして それがきっかけで、可能性が広がった、というお話がありました。
人気のシャンパンクーラーの他、おひつ、コップ、ぐいのみ、お風呂でつかう桶など様々なアイテムを
作られています。インターネットでも販売されていますので、興味をお持ちになった方は中川木工芸のウェブサイトをご覧下さい。
▼中川木工芸 比良工房
https://nakagawa.works