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誰もが平等にネットを利用できる社会を目指す 「Webアクセシビリティ」

きょうは、年齢や障がいの特性に関わらず、
誰もが平等にネットを利用できる社会を目指す
「Webアクセシビリティ」について。

お話を伺ったのは、ウェブアクセシビリティ基盤委員会・委員長の
中村精親さんです。

Q. 中村さんが委員長を務める「ウェブアクセシビリティ基盤委員会」はどんな組織なんでしょうか?

ウェブのアクセシビリティにはガイドラインがあるのですが、日本ではこのガイドラインが日本産業規格になっています。
この規格の原案を作成したのが当委員会で、規格の普及啓発の活動をおこなっています。
具体的な活動としては、英語で作成された国際的なガイドラインを日本語に翻訳したり、アクセシビリティを高めるために何をすべきかについての情報を公開したり、セミナーを実施する、といったことをおこなっています。

Q. 改めて、ウェブアクセシビリティとはどういう意味なのでしょうか?

普段私達はパソコンやスマートフォンからウェブにアクセスして情報を得たり、ウェブで様々なサービスを利用しています。
そういう意味で、ウェブをまったく使っていないという人は少ないですよね。
しかし、人によっては、ウェブが使いにくかったり、全く使えない、アクセスができないという場合があるのです。
そのようなことがないように、どんな人でもアクセスできるようにする、ということがアクセシビリティの意義です。
さまざまな属性の方が、さまざまなデバイスから、さまざまな状況でウェブを使うことができるのですが、
ウェブアクセシビリティが確保されていると、どのような状況であっても利用できる、ということになります。

Q. 日本でウェブアクセシビリティという言葉が使われ始めたのは、
いつ頃からでしょうか?

海外では以前からアクセシビリティが注目されていたのですが、
特に日本で認知度が上がったタイミングが2つあります。
ひとつは2004年、今から20年前に日本では国家規格であるJIS規格に「高齢者・障がい者等配慮設計指針」のひとつとして
ウェブのアクセシビリティのガイドラインができました。
このときから官公庁などの公共機関やウェブサイトに力を入れている企業サイトでアクセシビリティの向上が進められ始めています。

もうひとつは最近の話で、今年の4月にいわゆる「障がい者差別解消法」と呼ばれる法律の改正が施行されまして、
これを機に障がい者を含めたさまざまな方が利用できるウェブサイト作りを目指そう、という動きも多くなってきています。

Q. 具体的に、高齢者や障がいをお持ちの方が
WEBサービスを享受しずらいシーンや環境にはどんな場面でしょうか?

視覚障がい者、特にまったく見えないか、ほとんど画面を見ることが出来ない方のウェブサイトの利用というのがよく挙げられる事例かと思います。
普段、私もそうですが、一般的に目で見ることができる場合、ウェブサイトの内容を見ることで認識しているかと思います。
しかし、目が見えない方はウェブサイトの内容を音声で読み上げることができるソフトウェアであるスクリーンリーダーというものを使って、音声で内容を認識しています。

そもそも、この音声でウェブを使うことができる、ということ自体を知らない方の方が多いのですが、
この際に特に大きな問題となるのが、「画像」の存在です。

昨今はどこのウェブサイトにも画像が使われているかと思いますが、通常のテキスト、ただの文字であれば、
ソフトウェアはそのまま読み上げてくれるものの、画像の内容を読み上げるためにはその説明が書かれている必要があります。
この説明がないと、音声で読み上げたときにそこに画像があるけれど、なんの画像かわからないということになってしまう。
ですので、ガイドラインには画像にはその代わりになるテキストが必要です、ということが書いてあります。

みなさんに身近なところだとSNSで画像に「代替」というラベルがついているのを見たことがないでしょうか。
「ALT」と表記されている場合もあるかもしれません。
これを押すと、画像をアップロードした人が記載した画像の説明が出てくるようになっていて、このテキストには音声でもアクセスできるわけですが、あまり知られていないので、この説明が書かれていないと、なんの画像か音声では認識することが難しい、ということになります。

Q. 現状、ウェブアクセシビリティという言葉、
日本でどの程度浸透していると中村さんは思われますか?

私は比較的長くこの言葉を使い続けていますし、既に知っている方と話をする機会の方が多くなってしまっているのですが、
実際にはウェブサイトを作っているお仕事をしている方でも知らない方が多いという話を聞きますし、ウェブを普通に使う側の方は
おそらくほとんど知らない、と思われますので、まだまだ浸透していない、といえるかと思います。

浸透していない理由はいろいろあるとは思うのですが、さきほどお話したようなアクセシビリティが重要な状況があることが知られていなかったり、ガイドラインに強制力がなかったり、ということが挙げられるかもしれません。

Q. 一方、海外のウェブアクセシビリティ事情はいかがでしょうか?

もちろん、国にもよりますが、欧米を中心に日本より進んでいる国が多いという印象を持っています。

Q. この先、企業や店舗などがウェブアクセシビリティを導入する際、どのようなステップを踏めばよいでしょうか?

ウェブサイトの規模にもよると思いますが、
まずはウェブアクセシビリティ自体について認識していただき、
みなさんが運営しているウェブサイトがどのように使いづらい可能性があるのか、ということを知っていただくのが重要だと思います。
ウェブサイトを運営しているからにはおそらくより多くの人に内容を知っていただきたい、ということだと思うのですが、
アクセシビリティを向上させることで、より多くの人が利用できるようになるわけです。

具体的な方法はガイドラインに書いてありますが、
いきなり読むにはあまり読みやすいものではないため、
当委員会のウェブサイトやアクセシビリティの基本を扱っているウェブサイトなど、簡単なことから始められる情報もいろいろありますので、そのような情報に触れていただくとよいと思います。

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