STORY
花火プロデューサー/「丸玉屋」代表取締役 小勝敏克さん
++ Introduction ++
花火プロデューサーで「丸玉屋」代表取締役の小勝敏克さんが
企画、制作、演出を手がけた花火は日本の東西にある
誰もがお馴染みの2大テーマパークでほぼ毎日観ることができる他、
「ラグナシア」「ポルトヨーロッパ」
「東武動物公園」「八景島シーパラダイス」など
全国各地のパークの花火演出を担当されています。
また、8月25日は大阪の「りんくう花火2018」と
江戸川河川敷の「流山花火大会」、
9月には大阪の「泉南花火大会」、群馬県の「沼田花火大会」、
そして9月8日には、
横浜で大きな花火を復活させる予定があるそうです。
今年の夏は小勝さんが手がけた花火が
全国約150ヶ所で打ち上げられています。
小勝さんはご自身を
「花火プロデューサー」と名乗っていないようですが、
クライアントと折衝しながら
予算を獲得して新たな花火ショーを演出したり
旧来のスタイルを大胆に変えて来場者に入場料を支払ってでも
満足していただけるような
価値のある花火大会を作り上げていることから
周りの人たちからは
「花火プロデューサー」と言われているそうです。
小勝さんが得意としているのは「花火ファンタジア」と呼ばれる
花火と音楽のシンクロ。
20数年前に日本で初めて本格的に花火と音楽で構成したショーを
開催したことがきっかけとなり、それ以来、現在まで手がけられています。
テーマパークの花火ショーは10分ほどの短い時間なので
コンピューターとシンクロすることができますが、
40分や60分という長い尺になると全てをシンクロさせる必要はなく
一発ずつ鑑賞する伝統的な花火も含めて起承転結のあるストーリーを作り、
その中に花火と音楽のコラボレーションを取り入れて構成しています。
夏が終わると同時に翌年のプロジェクトがスタートしますが、
次の年に同じ日程と予算で進められるか中々決まらないため
ある程度の予測を立てながら11月中旬頃に花火の製造が始まります。
そして、本番の約2ヶ月前に使用する花火の選択、音楽の選曲、
花火の演出プランやデザイン、構成、現場でのレイアウトなどについての
作業がスタートします。
また、茨城の自社工場では資材、機材の調整やスタッフ編成、安全対策、
保安管理、運営スケジュールの作成などを同時進行しているということです。
さらに、本番の約3週間前から花火の選別と仕分け、
花火の演出プランに基づいたコンピューター・プログラミングを経て
本番の2〜3日前から現場で準備するという作業工程になっています。
花火のトレンドや進化について小勝さんは・・・
『演出そのものについて我々も革新的なことをやっていますが、
今の同業者の中で若い人が先鋭的な取り組みをしていることもあって
彼らの新しい取り組みからヒントを得て、新たな演出のトレンドを
追いかけることもあります。
ただ、それとは別に花火の玉そのものについては、
ここ2〜3年、色が何層にも変化していく「イルミネーション」という
緻密な設計が必要な花火を極めようとしている花火屋さんもいますね』。
++ Until now ++
小勝さんの実家は5代続く名門「丸玉屋小勝煙火店」。
花火にはあまり興味が無かったという小勝さんは大学卒業後、
商社に就職されましたが自分の行く末について考えた挙げ句、3年後に渡米。
3ヶ月間のアメリカ生活を経験されています。
その当時、日本国内での花火の仕事は夏の現場だけ。
それ以外の時期は海外に花火を輸出していたことから、英語の能力を活かして
日本の花火の価値を世界に認めてもらう仕事に生き甲斐を感じた小勝さんは
父親の誘いもあって実家の会社に就職されました。
長年にわたりアメリカのディズニーランドとディズニーワールドに
花火を輸出している中で集客力を実感し、その効果を徹底的に学んだこと。
そして、
1985年にカナダのモントリオールで開催された世界最大級のコンペで
フランス・チームが花火と音楽に効果音やナレーションを入れながら
ストーリー仕立てにその情景を花火が表現している様を目の当たりにして
花火の可能性を強く感じたことがきっかけとなり
小勝さんは日本の花火文化にエンターテイメント性を
取り入れたということですが・・・
『やはり最初は中々受け入れられなかったというか、
別に受け入れられる必要もないので。
誰もやらないから自分もやらなかったとしたら、
今の私はいないですから。
それをずっとやってきただけの話ですね』。
++ Right now ++
仕事とプライベート、オンとオフは分けているという小勝さんの愉しみは
居酒屋で独り飲み、ジム、そしてゴルフ。
好奇心が旺盛で面白そうな場所に行くとアイデアが湧いてくるとのこと。
『例えば、ある場所で花火をしてほしいと言われた時にロケハンをします。
そして、どの会場でベストな演出ができるかを関係者と見て回りますが、
その時はアンテナを張っているお蔭で眼の前に花火が浮かびますね。
それを具現化するようにしています』。
2020年の「東京オリンピック・パラリンピック」に向けて
花火会社約50社で構成される
一般社団法人「日本花火推進協力会」を立ち上げ、
世界に誇る日本の芸術花火でレインボーブリッジを彩って祝うという
非常に大きなプロジェクトを提案され、
実現を目指して動いているということです。
++ From now on ++
「東京オリンピック・パラリンピック」での花火打ち上げに関して
内閣や各組織委員会に働きかけをする中、最も難しいのは許可。
周囲の利害関係者の協力を得た上で、
海・陸・空の許可を取ることが必要となる
一大事業です。
『100年に一度と言われるオリンピックですから
日本の力やチームワークを見てもらうという意味において
日本にしかできない、繊細かつダイナミックな世界最大の花火を
打ち上げたいと思っています』。
「尺玉」に象徴される日本の花火は約300メートルの高さに上がって
花の直径が300メートルに広がり、
どこから観ても真ん丸の同心円になるように
作られています。そして、色が同時に精妙に変化して一斉に消え去る潔さが
日本の花火の極みだと語る小勝さん。
その現象に加えて四重にも五重にもシーンを重ねて色を変化させながら
複雑な造形を作り上げることは日本にしかできないそうです。
『レインボーブリッジは花火の舞台として最高かなと思っています。
海外を見るとニューヨークのブルックリンブリッジ、
シドニーのハーバーブリッジ、
フランスのエッフェル塔など、構築物を利用した花火パフォーマンスは
世界各地で行われていますが、日本ではなかなか難しいです。
平面だけで幅日を上げると限度があるからこそ、
東京湾という広い舞台であれば
何も遮るものは無いので、施設所有者の許可と周りのご理解があれば・・・
という前提ですけどね、実現したいと思っています』。
今年、小勝さんが取り組んだのは秋田県大曲で5月に開催された花火大会、
「春の章」で直径14メートルの円形のトラスに約1,000発の小さい花火を仕込み、
それをクレーンで高さ25メートルまで吊って四方八方に打ち出すという
日本初の試みでした。
さらにアイデアが尽きない小勝さんは地上40メートルの高さまでトラスを組んで
立体的な構築物を使い、平面ではなくタワーから打ち出すという
日本ではほとんど無い表現方法を進化させて、
「東京オリンピック・パラリンピック」に備えたいという夢を語ってくださいました。
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SOFTLY AS IN A MORNING SUNRISE / JOHN COLTRANE
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BEAUTIFUL / BAZZI FEAT.CAMILA CABELLO
ナビゲーターのトークコラム的コーナー「イチカワカオスモス」では
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